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魔法少女ごっこをしてるだけなのに、勝手に周りの人が曇っていくのはなぜ?  作者: さたけやま


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第2章 幕間1 「ツバメ」

「君には才能があるよ」

「何回言われても無理なもんは無理ですって。うち、美香みたいに可愛くないし」


……うちは大学の教室で、『なぜか、子供と見間違えていたモヤがかかった長身男性』に不審な勧誘をされていた。

 

「君には年齢に左右されない才能がある。だから、ならないか?」

「……うち、確かにまだ19歳だけどさ、でも今年には成人するんですよ?無理無理キツイって」

「……では、趣向を変えてみよう。きみの友だちの、美香を助けたくないか?」

「……美香の名前出すのは反則ですって……うちだって、力になれるなら、なりたいけどさ。美香を助けるのと魔法少女になんのに、なんの関係があるんですか?」


「……それを聞けば、もう戻れないぞ?」

 

「え、じゃあ聞きませんって。ずっと下手ですよ?勧誘。うちそんなんじゃ靡きませんから。まさか、美香こんなんで魔法少女になったんすか?信じられな。美香ちょろ過ぎっしょ」


「美香は……私の勧誘じゃなく、もっとまともな理由で魔法少女になった。」

「へぇ……どんな理由なんですか?」

 

「……それを聞けばもう戻れないぞ?」


「多いって!重要な会話、だいたい戻れないじゃないですか!なら聞きませんって!」


 モヤの男は困ったように頰らしき場所をかく。


 ……この男が勧誘して来るのは、これで10回目。

 最初はこの大学だった。

 でも、段々とパーソナルスペースに踏み込んできていて、

 この間は寝ようとしたら枕元にいて悲鳴を上げた。


 ……マジ美香の知り合いじゃなかったらとっくに務所行きだけどね……

 

「というか、美香がどうしてあんな事になったか教えてくれないなら、うちはなることが出来ませんよ。なんか怖いし。」

「まぁそういうな。君の家、今経済的に苦しいんだろう?」

「……そういう情報を握られてるからなりたくないんだとは思わないんですか?」


 男は「やれやれ」と肩をすくめる。

 続けて「……なんだか懐かしいな」と、少し寂しそうに言った。


 美香の様子がおかしかった日から、今日で1ヶ月。

 美香は大学には来るようになったが、様子がずっとおかしい。

 

「……美香は学校の外だと、どうしてるんですか?」

「それは分からないんだ……私が美香の家に行こうとすると、弾かれる。多分脳愛が何かしたんだろうな……」

「いや、女の子の家に何当たり前みたいに行ってんすか。犯罪ですよ。」

「?私と美香の仲だ。問題は無いだろう」

「えっ……彼氏とかそういう感じっすか?」

「強いていえば美香は娘だ」


 ……家に行く関係で、娘?


 ……パパ活?


 ……美香の家が苦しいのは何となく知ってたけど、美香そこまでなん?

 うち、美香になにがしてあげられるかな……


「……いや、てか、パパ活ならパパ活で、そんな大きい声で言わないでくださいよ。美香が可哀想です」

「パパ活?どういう意味だ?」

「……こんな子供に説明させるんすか?そういう癖っすか?気色悪いっすね……」

「待て待て!何か誤解している!美香は私の娘なのだ!」


「うわぁ……」


 パパ活で買ってるから、娘。

 すごく気持ち悪いなこの人。


 はー

 美香がおかしくなったの、この人のせいじゃないよね?


 ……ありえそー


「む。美香がこちらに近づいてきてるようだ。ここで失礼する。」

「……いいですけど、なんで分かるんすか?」


 グニャリ


「説明しろよ……」


 私はぽつりと呟く。


「おはよう!ツバメ!」

「美香……と、能愛ちゃん。」

「………………おはよう……」


 美香はおかしくなったその次の日から、このお人形みたいな女の子、能愛ちゃんを連れてくるようになった。

 能愛ちゃんはずっと無表情で、何を考えているか基本的に分からないが……


 ……時折美香からグチャグチャという音がすると、酷く怯えている。

 あれはなんの音なのだろう。


「ほら、能愛、座って?」

「……うん」

「…………」


 美香が言うことに、能愛ちゃんは従うだけ。美香が話しかけたタイミング以外で喋ってるところを見た事がない。


「能愛ちゃんはなんでこの大学にいんの?まだ小学生ぐらいだよね?」

「……………………」

「能愛ー?ツバメが聞いてるよー?」

「っ!うっ……美香と、一緒に……居たいから……」


 どー見てもそう見えないんよね……

 美香に怯えてる。

 それは間違いない。

 うちも今の美香は怖いしなー


「美香、この授業抜き打ちテストあるってさ」

「嘘でしょ!?」

「うち先輩からテストの過去問貰ったから、これ使って勉強しとき」


 私は美香に、『やけに難解に書かれた問題集』を渡す。

 ……抜き打ちテストがあるなんて嘘だ。


「その間能愛ちゃん借りてていい?」

「うん!いいよ!……能愛、分かってるよな?ツバメに何かしたらさ……っふふ!」

「……………………」


 借りるなんて、言い方、本当は嫌。

 人を物みたいに……

 でも、美香はこう言わないと納得してくれない。


「ほら、能愛ちゃん、ちょっとこっち来て」

「……あ……」


 能愛ちゃんの腕を引っ張って、教室を後にする。

 ———————————————————————————

 教室からだいぶ離れたところにあるトイレに入った。

 そのトイレがある校舎はあまり使われてなくて、校舎自体も、トイレも汚い。

 だからあまり人が来ない。


 私はトイレの個室の一番奥に能愛ちゃんを招く。

 能愛ちゃんが入ってきたのを見て、鍵を閉める。


 ガチャリ


「……なんで美香に怯えてんの?」

「………………」

「ねぇ……うちは美香に言ったりしないから」

「………………」


 あーもう

 うちこういうの得意じゃないのにさー……


「ね、正直に答えてよ。美香に、なんかされた?」

「っ!!」


 ……あー、その反応で全部分かっちゃうな……

 美香ぁ……

 こんな子供に手出したの?

 流石にそれは……


「……えっちなこと?」

「…………………………」

「暴力?」

「ひっ…………うぐっ……うぅ……」

「あー泣かないで泣かないで……あーもうどうしよ……」


 うちあやすのも得意じゃないんだって……


 取り敢えず抱きしめて頭をポンポンしておく。

 うちのお母さんがよくやってくれたんよな。

 これ。


 …………美香、暴力振るってんの?

 はぁ〜…………


 うちがとめてやらないとダメなの?

 …………さすがに見過ごせんよね。

 こんな女の子をそんな目に合わせるなんて……


「……で、でも……」


 ?能愛ちゃんが珍しく口を開く


「……先にやったのは……っ!私の……方……っ!」

「……えぇ?」


 能愛ちゃんはまた泣き出す。

 でも今回は怯えてではないみたいだった。

 

 ……やったって、なにを?

 もう具体的に聞いていいかなぁ……

 まぁ……駄目よね

 めんどくさぁ……


「……能愛ちゃんはこのままでいいん?」

「私がっ……私が先に……っ!あんなことをしてしまったから……!!」

「……あ、そう……」


 ……なんかのプレイじゃないんよね?

 能愛ちゃんのせいで美香のスイッチが入って……

 みたいな……


「はぁ〜まぁ、ならいい……か?」

「……………………」

「……戻ろっか」

「……………………」


 私は能愛ちゃんの手を引いて、また教室まで戻る。


 その後は授業中に、

 美香が能愛ちゃんの頭を撫でていたり、

 たまに何かを囁いて能愛ちゃんが怯えたり。


 一つだけ聞こえたのは「クジラ」

 という単語だった。


 クジラ、まぁひとつ思いつくのは、配信に写ってたバカ大きいクジラの怪獣。

 水族館1つまるまる潰した配信は、ある意味話題だった。

 許可が取られてなかったんじゃないかーみたいな騒ぎもあったけど、不思議なぐらい何も無く鎮火した。


 ……結局能愛ちゃんは美香に連れられて帰って行った。


 ……大丈夫なんかなぁ……

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