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魔法少女ごっこをしてるだけなのに、勝手に周りの人が曇っていくのはなぜ?  作者: さたけやま


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第18話 「後退、または進展」

……理子ちゃんの事は、私にはどうすることも出来なかった。

 今目の前で笑っているこの子を、この子だけを幸せにできたら、それで十分じゃないか。

 それで……


 ……私は美桜に学校に行くことを勧めた。


 今の美桜なら、大丈夫だと思った。

 そして、理子ちゃんの様子を見てくれないかなという打算もあった。


 ……でも、結果としては、


 理子ちゃんは学校に来ていないらしい。

 それどころか、理子ちゃんの席が教室から無くなっていて、出席を取る際も理子ちゃんの名前は出てこなかったらしい。


 ……少し、いや、かなり不気味だった。

 私に思い当たるのは、管理局に情報を操作する魔法があると美桜から聞いていたのでそれかなと思った。

 美桜は少し悩ましそうにしていたが、そうかもしれませんね。とだけ言った。


 美桜は理子ちゃんのことを記録に書いて、気にしてくれている。

 美桜との日常は、毎日ツギハギではあるかもしれないが、成立するようになってきた。


 ……それどころか、「二人で買い物に行った時の話、お姉ちゃんの口から聞きたいです」なんて言ってくれて、私は少し泣いてしまった。


 私は日常を取り戻すために、大学に向かった。


 それもまた美桜のため。

 美桜を養いたいと思ったから。


 ……だめだな。

 最近は美桜の事ばかり考えている。


 少し気持ちを切り替えよう。


 私はそんなことを考えていたら大学に着いていて、教室のドアを開ける。


 実は、美桜の腕が無かった期間は、大学に行っていなかった。

 約4回分の授業。

 端的に言うと、出席回数がまずいのだ。


 教室の後ろから見渡すと、少し懐かしいピンクのツインテールがみえた。


 肩を叩く。


「ツバメ。久しぶり」

「美香?生きてたんだ。久しぶり。」


 ツバメはクールを装っているが、隠しきれない笑みが見える。

 それは安心のようで、私がいることを喜んでいるようで、私も少し嬉しくなる。


 ……そう。そうなんだよね。これが日常で、私はこの自分の周りにさえ手が伸ばせたら、それで……


「その顔やめ」

 ツバメがチョップする。

「いたっ」


「こんなに休むんなら連絡してよ。」

「ツバメの連絡先は知らないし、携帯は持ってないよ?」

「……マジ?」


 ツバメはスマホを取り出すとスクロールして、「あ、ほんとだ。美香いないわ」と言った。


「ま、いいや。座んなよ」

 ツバメが隣の席から荷物をどかす。


 ……私がいない間も、こうやって私の分の席を取っててくれたのかな。

 ごめんね。ありがとう。

 絶対口では言わないが。


「ノート貸したるから、写しな。」

「あーそれは大丈夫かも。」

 私は黒光りする金属のような材質の表紙の、独特なノートを取り出した。

「なんそれ!?」


 私はkからこのノートを持たされていた。

 kが私を勧誘するためにこの授業の場まで来たことがあった。その時に1回出てしまってから興味が出たらしく、毎回ひっそりと出席し、ノートを取っていたらしい。


 今日も後ろの方の席に姿が見えた。


 ほんと変わってるなぁ……

 ありがたいけどさ。


 歴史の授業に興味があったらしい。


 まぁそんなことはいいか。


 ノートを開いてみる。


 信じられないぐらい汚いなぐり書きのような字が見えた。そして、その字とともにとても分かりやすい図と表があった。


 ……性格出るなぁ


 いや、字によく見たらふりがなが降ってある。

 あ、ふりがな凄い綺麗。

 これは望ちゃんだな。


 可愛いふたりだなぁ……


 そのノートを、自分のノートに写していく。


 ツバメは不思議そうにノートを見ていた。

「それって、誰のノート?」

「前、ツバメが子供って言ってた子のやつだよ」

「あ〜あの子……今日もいるね。うーん……なんか、最近あの子のこと見ると、やけに顔だけぼやけて見えるんよね……」

「えっ?」


 ツバメにkの姿が見え始めてるの?

 どういうこと?

 kに何か問題があったのかな?

 いや、騒ぎになってるのは見たことない。


 ということは……ツバメ側になにかあったのかな?


 違和感、それは不安には繋がらない程度ではあったが、私の頭には強く残った。


「ま、いいか。」

 ツバメはあまり気にしていないようで、そう流した。


 キーンコーンカーンコーン


 教室に中年のメガネの教員が入ってくる。


 そこから授業が始まった。


 私はノートを写しつつ授業を受けていたので、正直あまり頭に入らなかった。


 ……テスト大丈夫かなぁ……


 ———————————————————————————

 ツバメと別れを告げて教室から出ようとした時に、急に腕を引かれて驚いた。


 ……kね。

 人前で話しかけてくるのも、随分久々な気がする。


 ……少し懐かしい気持ちと、あの頃が帰ってきたようで全く違うものになっていることに、悲しい気持ちを抱く。


「どうしたの?」

「美香、今すぐ決断してくれ。」


 kの顔は真剣そのものだった。


 私も気持ちを一気に引き締める。


 パカッ


 kは携帯を開いた。


  ……ガラケー


「こんなことはあまりないぞ!」

 kは興奮した様子で言う。


「なに?」


「能愛から返信が返ってきた!!」

 

「あ、そう。女性から返信して貰えてよかったね。私もう家に帰りたいから、もういい?」


 ……しょうもない内容だった


 ……美桜の顔が見たくなってきたなぁ


「何を勘違いしているんだ!君に会ってもいいと言ってるんだぞ!」

「えっ!?」

 kはそのまま「……返信まで1ヶ月もかかったのは、本当に社交性が無いな……我々のメンバー」とゴチた。


 会う。

 ……大丈夫なのかな。

 kがいい人だったから、その仲間もいい人、とは思えない。

 それに能愛とは戦闘になる可能性があるのに、まだ戦力も揃っていない。


 ……まだ厳しそう


「研究がちょうど終わったところらしい。だから、今来ないならもう会わない、とも書いてある。だから決断してくれ。行くか行かないか。」


  ……急すぎない?


「……何日までに来てって言ってるの?」

「今日の日が暮れるまで」


 ……空はもうオレンジ色になってますよ……


 ……でも、行くしかないよね。美桜のためだもん。

 今を逃すといつになるか分からない。

 もしかしたら、もう無いかもしれない。

 うん。


「行く!案内して!」

「わかった。だが、私が案内できるのは、手前までだ。その先は自分で行くんだ。」

「分かったよ!」


 ……ん?連絡できたなら、それで美桜の頭を治す方法を聞けばよかったんじゃないの?

 ……あれ?


 k?これ、

 またポンコツした?

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