第十四話 「『 』という少女」
私は中学校で出待ちしていた。
……少し前にも同じことしたな。
ほんと、私がここの卒業生で、門番と知り合いじゃなかったらとっくに通報されている。
時間はまだ15時50分。
前は16時ぐらいから生徒が下校し始めたのを考えるに、まだ時間はある。
私は昨日kが言っていた言葉を思い返していた。
「凪という少女を当たれ」
「その少女は妖精の目を擁する私が見るに、少なくとも配信に映る時はいつも手を抜いている。あの少女から感じる素質は、私が初めて望を見た時以上だ。もっとも、望は怪獣の力も使えるので、簡単には比べられないが」
もしかしたら、望ちゃん以上か……
本当にそうなら、強い味方になるだろう。
ただ、少し引っかかる。
手を抜く理由は?
管理局からの印象が良くない私に味方する理由は?
まぁなんによ、会ってからだよね。
私はそのまま16時10分まで待った。
16時に一気に学生が下校するラッシュのようなものが来た。16時10分になった時には、ラッシュ時の人の数とは比べ物にならないくらい少なくなっていた。
……そういえば前回は凪ちゃんを見つけるよりも早く、理子ちゃんを見つけられたから、結局凪ちゃんを見つけれてないんだよね。
そういえばその時理子ちゃんがナギナギは部活、なんて言ってた気がするな。
あれ?ここで出待ちってもしかして、無理?
私は、私を見る、1つの鋭い視線に気づくことはなかった。
……だって、見るからに様子がおかしい理子ちゃんが校門から出てきたからだ。
「あ、お姉さーん!」
理子ちゃんは近づいてくる。
「この間はありがとー!理子……私?理子……えっと、ありがとう。」
……理子ちゃんは引きつった笑みを浮かべて、そしてその笑みを打ち消すような無表情を浮かべて。そしてまたその無表情を打ち消すような引きつった笑みを浮かべます。交互に繰り返すその変化は、見てわかる通り、異常だった。
「理子ちゃん……大丈夫なの?」
「理子は大丈夫……私は……?私は……私は大丈夫?あれ、私なんでお姉さんに話しかけて……違う……もう近づかないって決めた。はず。はず……だったっけ?……」
理子ちゃんは俯いて顔を覆う。
理子ちゃんどうしたの……?
私はよく分からないが、とにかく理子ちゃんの背中をさする。
「理子ちゃん、落ち着いて。よく分からないけど、私は理子ちゃんに話しかけられても近づかれても、避けたりしない。むしろ嬉しいから。」
本心だ。
本心を伝えることが理子ちゃんには必要だと思った。
……理子ちゃんはしゃがみこんでしまった。
「いや……でも……私は汚れてて……理子は綺麗なんだよね?あ、いや、理子も汚い……あなたは私、私はあなた……だから、だから、あなただけ幸せになろうとしないで……私を置いていかないで見捨てないで」
理子ちゃんはぶつぶつと言う。
「と、とにかく、ここを離れよう!」
私はしゃがんだ理子ちゃんを引きずるようにして、またあの公園に向かった。
……本当は私の家が良かったんだけど、美桜と会わせて、何かあったら嫌だった。
……そんな扱い、良くないんだろうけど……
……私は、気づかなかった。
鋭いその視線が、校門を出たあともまだ追ってきていることに。
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公園に来て、とりあえずベンチに座らせた。
その間もずっと理子ちゃんはブツブツと呟いていて、時折頭を強くかいていた
……理子ちゃんの右手の爪には血がびっしり着いていたことには驚いた。よく見ると爪もガタガタでボロボロだった。右手で強くかくから、右手にずっと血が集まっていて、理子ちゃんの右手はずっと赤かった。
「理子ちゃん、どうしたの?落ち着いて」
私は理子ちゃんに呼びかけてみる。
「あ、ぁああ?あぁぁぁ……ああああぁぁぁぁ!!」
……理子ちゃんは頭を抑えながら暴れて、ベンチから落ちる。
……何が起きてるの?
底知れない不安感、そして違和感、2つは私に大きな行動を起こさせなかった。
だから、肩を揺さぶって、声をかけることしか出来なかった。
「理子ちゃん!理子ちゃん!聞こえる!?」
……大きな声を出すも、理子ちゃんには聞こえていないみたいだった。
「理子ちゃん!?理子ちゃん!?」
……いつ、こんなことになったんだろう
魔法少女を取り巻く環境は最悪だ。
いつ誰がこうなってもおかしくないだろう、
ただ、急すぎて驚きが止まらないが……
理子ちゃんが暴れながら、涙を流しながら、呻くように、意味のある言葉を発する。
「お姉さん……お姉さん……お姉さん……」
私……
……いや、呼ばれたなら答えてあげないと。
「理子ちゃん!私、美香!目の前にいるよ!」
「お姉さん……?お姉さん…………あれ?なんでお姉さんの前にっ!?……私、何して!!いや、理子は悪くないの……私が悪いの…あぁ私の弱さが招いたんだ…私はどうしようもないゴミなんだ……この程度のことすら守れない……いつになったら楽になれるの……?私が楽になる方法……」
「っ!!だめっ!!」
理子ちゃんの腕を掴んで、力を込めて引き剥がそうとする。
……理子ちゃんは自分の首を絞めていた。
なんでこんなに力が強いの!?
だめ……!
私じゃ止められない!!
……私が、私が
魔法少女になれば止められる……
でも……でも……その時は理子ちゃんを無事には止められない。
私は動転していて、kのことは忘れていた。kを呼べばすぐに解決だったかもしれないのに……
……私が最終的に取った手段は、理子ちゃんを気絶させることだった……
死なせるよりずっといい。
そのはずだ。
私が変身して、コントロールできない力でとめようとするより、ずっといいはずだ。
そのはずなんだ……
……私の手には中学生の女の子のお腹を、数発殴った重みがずっしりと乗っていた。
一発で済んで欲しかった……
五発。
5回も殴ってしまった……
でも、私じゃ止められなかったんだ……
仕方ない……
仕方ないんだ……
私は理子ちゃんを連れて、私の家に帰った。
私一人ではどうにもできないなら、誰かと一緒に理子ちゃんを見たかった。
……そして、最初に浮かんだのが、美桜だったからだ。
……ごめん。美桜。巻き込んで……




