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魔法少女ごっこをしてるだけなのに、勝手に周りの人が曇っていくのはなぜ?  作者: さたけやま


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第12話 「造られ、仕え」


「お姉……様?」

 私には、『それ』に見覚えがなかった。

 でも、『それ』は私を見ていた。


 見た目には疑問が尽きないが、取り敢えず、


「助けてくれてありがとう……」

 心からの感謝を述べる。


「は?助け?……何言ってるんですかお姉ちゃん……そいつは、そいつは、私たちを引き剥がそうとしてるんですよ……?」

「美桜……?」


 美桜は私をそっと地面に置くと、立ち上がる。


「美桜?多分なにか誤解があるんじゃないかな?」

 何か、何とは分からないが、なにかが怖くて美桜に訴えかける。

「……お姉ちゃんの貴重な時間を……もうどれだけ持つか分からないのに……早く……早く……殺して」


 ……美桜は私の言葉が聞こえていないのか、何かをぶつぶつと呟いている。

 

 ダッ


 美桜が『それ』に向かって、駆け出す。

『それ』は驚いた顔をして、そして、


 ……美桜が札から出した炎に燃やされる。


「美桜!?何してるの!?その人は私達のことを助けてくれたんだよ!?美桜!やめて!」


「ど、……どうして?……理解できません……」

『それ』は困惑したようにつぶやく。


 ……今の美桜はなにかおかしい。

「逃げて!じゃないと殺されちゃう!」

『それ』に呼びかける。


 しかし、『それ』は逃げてくれない……!


「大人しくしてください。ずっと。ずっと。私たちの邪魔ができないよう。ずっと。ずっと。」

 美桜は炎に手を突っ込み、『それ』の首を絞めあげる。


「ぐっ!がぐぐぅ!あが!」


『それ』はひたすらにもがく。


 どうして!?

 どうして美桜はこんなことをしているの!?

 どうして私の足は治らないの!?

 ……助けられない

 死んでしまう……

 ……美桜に殺させてしまう

 なんで私の足は動かないの!

 お姉ちゃんなのに止められない……


「あぐっ……ふ……あ………………」

『それ』から声が抜けていく。

『それ』から力が抜けていく。

『それ』は動かなくなっていく。


 ……『それ』は完全に動かなくなった。


「アハハ!」

 ……美桜は笑った。


 何をしてるの?美桜は。

 命を奪ったんだよ?

 私とクジラの生に悲しくなっちゃったのは忘れたの?

 私と漫画で命が無くなる過程を見て、泣いたのを忘れたの?

 私と二人で支え合って生きていくって決めたの、忘れたの?

 ……どうして笑っていられるの?


「美桜ぉぉぉぉぉ!!」


 あぁ初めてだ。

 初めて、美桜に、怒りを抱いている。


 私に足があれば

 

 ……美桜を殺してでも止めてやるのに


 ……私がそう思った瞬間だった。

 急だった。急に炎が消えていく。


 いや、吸い込まれていく。

 炎がグルグルと、一点に吸い込まれていく。

 炎の渦が完全に無くなった時、そこにはモヤが出てきて……


 私が不審者と呼ぶ、kの姿がそこにはあった……


 遅いよ……

 遅い。

 もう無理だよ。

 見てたんだ。なら、早く来て欲しかった。

 ううん。私が悪い。私の足が動けば……

 kのせいじゃない。せいじゃないんだ……


 ぐしゃ


 ……え?

 ……kが手に持った剣で、美桜の右手を、切り落とした?


「あがぁぁぁぁぁ!!」

 美桜が悲鳴をあげている。


 美桜が『それ』を離す。

 kが地面に落ちるまえに、『それ』を抱えた。


 これは、これは、脚本じゃないのか?

 じゃないなら、じゃないなら……


……美桜の手は、本当に、切られたのか?


 kの顔のモヤから、水が落ちていく。

「すまない。助けるのが遅れて……すまない……」

 kは『それ』を優しく子供をだくように、抱きしめる。


『それ』は、少しだけ身じろぎをする。


「も、問題、ありません…………助けていただけると……信じて……いましたから……」

『それ』は少し苦しそうに、ゆっくりと話す。


 良かった……生きてたんだ……!

 死んでなかった。

 美桜は誰も殺してなかった。

 良かった……!

 良かった!


 良かった……?

 いや、でも、美桜の右手は?

 治るんだよね?

 だって、そうでしょ?

 治らないなら……治らないなら……


 美桜は右手を無くした事になってしまうじゃないか。


 ……いやいや。

 ありえない。

 そんなわけない。

 ……これも配信のネタなんだろう?

 美桜には知らされてないだけで、これも脚本のうちなんだろう?

 ねぇ?そうって言ってよ。

 そうなんだよね?

 ね?


 右手の喪失部を左手で抑えた美桜が口を開いた。


 ……まだなにかを……


「私を邪魔するなんて!……いや、いいんです。私の体がどうなろうと……別に……でも!でも、お姉ちゃんは!?お姉ちゃんの体は、もう……お願いです……お姉ちゃんと死なせてください……もうお姉ちゃんは長くないんです……私も……もう……もう何も覚えていられないんです!怪獣に頭を壊された日から!!もう、何も……だから……だからもう、死なせてください……」


 美桜は泣きながら頭を下げた。


 美桜はずっと何を言ってるの?

 何も覚えていられない?

 怪獣に頭を壊された?


……あぁそういえば、美桜が病院に入院してたことがあったっけ。

 あれが確か、中学校に上がってすぐだったはず。

 何故か見舞いに行くことを許されなかった。

 受付で門前払いされて。

 1週間で美桜は帰ってきた。

 だから、安心した。


 でも……


 美桜はちょうどそれぐらいから、物忘れが激しくなった。

 今日だって、遊園地のチケットを取ると言っていたのに、忘れていた。


 あぁ、そうか。いや、分からない。

 分からないが……


 ……そうだったんだね。美桜……


でも、でも、一つ気になることはある。

 

 ……私が長くない?

 でも、だって、治るだろう?


 ……治る?


 いや、

 でも、


 ……治ってない?

 ……あれ?そういえばいつも治ってたのに、治ってない?


 あれ?


 私、死ぬの?


 ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン


 ザワザワザワザワ


 ……美桜の言葉を受けてkが口を開いた。


「……死にたいなら勝手にすればいい。ただし、私の……私の娘を傷つけた代償は支払ってもらう。」

 k?止めてよ。

 私が死んでも、美桜は死んじゃだめ。

 だって、そうでしょ?

 美桜は人のことを考えられる子で、優しくて、いつも笑顔で。

 そんな子が死んじゃダメに決まってる。


「k!やめて!美桜も、死にたいなんて言わないで!わた、私がいなくても……生きてよ!!」


 ……kは、私の言葉なんて、聞いていないのか、手に持った剣を上に掲げた。

 美桜は動かない。

 動こうとしない。

 

 ……すると、『それ』のミミズのようなしっぽが、優しくkの腕に巻きついた。


「いけません……ご主人様……私なんかのために……そのような事をしては……」

「……!止めてくれるな。私は初めて人に怒りを感じている。これを振り下ろして、その女に報いを受けさせなければ気が済まないのだ」


「美桜逃げて!!」

 

「やるなら早くしてください。」


 美桜は目をつぶって、立ったまま受け入れようとする。


 ……kがその剣を振り下ろして……

「あぁっ!!」

 私が悲鳴を上げた時、


 ヒューーーーーン!!


 風切り音がしたと思ったら、


 ……kの体に槍が刺さっていた。


「ご主人様っ!!」

「ごふっ!!」


 ……kはそのまま倒れる


「誰がこんなことを!!」


『それ』は猫の目をギロリと周囲に向けた。


「そこです!!」

『それ』はしっぽで地面を叩くと、どんどん遠くに飛んでいく。そして、ライオンのような手を思いっきり振りかぶったところまでは見えた。


 でも……『それ』が何を狙ったのか、そして、なにがあってそうなったのか、私には何も分からないまま、


『それ』は丸焦げになって倒れた。


「は?」

 ……今のは美桜の声か?私の声か?


「……危なそうだったから、助けに来たよー」

 声がする。


 ガーン!!


 大きな音を立てて、目の前に人が現れる。


 背が高い緑色の髪の無表情な女の人だった。


 助け……助け……


 でもkとあの子は?

 悪いのは私たちじゃないの?

 この女の人は私たちを助けてくれたけど……

 罰されるべきは私たちじゃないの……?


「初めて見るタイプの怪獣だねー」

 間延びした声を鳴らしながら、kと『あの子』を見つめる。


「……序列七位、翠……」

 美桜はポツっと呟く。


 ……序列?

 それって、あの、ツバメが話してたやつ?


 強さの順か……


 上から数えて7番目……


 そういう設定……


 では、ないだろうな……彼女の動きはほとんど見えなかった。それに美桜の炎に焼かれても死んでいなかった『あの子』が、一瞬で黒焦げなんて……


「翠さんは……翠さんは、私の邪魔をしませんか……?」

 美桜は恐る恐る聞く。


「邪魔?するよー?」

 ゆっくりと、しかし、はっきりと、翠は宣言する。


「分かってるんですか……?私は、お姉ちゃんと、死にたいだけなんです……」

「でもーお姉さんは、あなたと死にたくないみたいー?」

「わ、分かってます!分かってました……でも……お姉ちゃんはもう死んじゃうし……私ももうきっと、長くないんです!だから……ここで死にたいんです……」

「だからーそれはあなたのがんぼーお姉さんはそう思ってないーだから私はそれを見過ごすことはできないー」

「なんで!なんで邪魔するやつばっか!!私……私……」


 ……美桜は左で札を持って、炎を出す。

「やめておいた方がいいー私には勝てないー」

「知りませんよそんなこと。あなたが邪魔するなら、殺さないと終わらないじゃないですか。」

「殺せると思われてることに少し悲しくなるー私はそんなに弱くないー」

「やってみないと!わからな——「それにー」」


「多分お姉さんはまだ死なないんじゃないかなー」


「えっ?」


 美桜が私を見る。


「ふ、ふざけないでください!あれで生きられるわけないじゃないですか!!あんなに血を出して……腕も無くなって、足も無くなって……」

「でもーそれから時間が経ちすぎているーそれなのにお姉さんの意識ははっきりしているし、死ぬ気配は無いー」

「あれ?……そう、……ですね……」

「配信にはお姉さんの状態なんて、映ってないけどーそれでも、序列1桁台は、みんな気づいてるーとっくに重症なはずなのに生きてるのはおかしいってー前の配信も同じような状態になったはずー」


 そうだよねー?と翠がこちらを見ていた。

 私は「はい」とだけ返事した。


「ほらやっぱりー」

「じゃあ、じゃあ!お姉ちゃんは死なないんですか!?」

「少なくとも今は死なないー死ぬ条件に、いくつか予想は着くけどーそのお姉さんが味方かは分からないから、言うことはできないー」

「味方かは?……あぁ……契約相手……」


 美桜は納得と不安を同時に顔に見せる。


「お姉さんはーどうやってー魔法少女になったのー?」


 ……正直に答えていいのだろうか?

 実はkが倒れたその時から違和感があった。


 kが本当に監督で、そして、みんなを魔法少女にさせているのがkなら、あんな風に槍で刺されなんてしないだろう。


 つまり私を魔法少女にしたのがkだとバレると、私まで狙われる可能性があった。


 私は今回の一連の戦いを通して、ある確信があった。


 ……魔法少女は魔法を使える。


 何を言っている?と思うかもしれないが、違う。


 エフェクトやcgではなく、魔法そのものを使うことができるのだ。

 そして、私以外のみんなは、痛みを負うし、怪我だって治らない。


 魔法少女としての力が絡んだからここまで大きな話になったわけだ。

 魔法少女というのが、本当になにかに力を貰って存在しているのもわかった。

 なら、その力の源がkだとバレるのは不味そうに感じたというわけだ。


「………………」


 私は沈黙を選んだ。

 だって、普通を知らない。

 誤魔化すための言葉が出てこないのだ。


 翠はふーんと言うと口を開いた。


「答えなくても別にいいけどー私は管理局側の人間じゃないしーただ、序列一桁代にも管理局側の人間はいるー気をつけた方がいいー」

「……忠告、ありがとう、ございます」

 なぜか美桜が感謝を伝える。


「いいー。この間に逃げれたみたいだしー。」


 え?


 あっ、kと『あの子』がいない。


 美桜は驚いた表情を見せるが、何も言わない。

「私はそろそろ行くーせいぜい気つけるべしー」


 ……去っていく


 このあと、近寄ってくる美桜が何かを言おうとしたが、私が遮って、「家に帰ってからにしよう」と言って、一先ずこの場から逃げた。


 美桜は残った左手で私を大事なものを持つように胸に抱えると、家にまで連れて帰ってくれた。


 

 ……この場に居座らなかった理由は、管理局の人間と鉢合わせるのが、怖かったからだ。

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