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魔法少女ごっこをしてるだけなのに、勝手に周りの人が曇っていくのはなぜ?  作者: さたけやま


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第10話 『お姉ちゃん』

私は顔を洗いつつ、考える。


 バシャバシャ


 昨日は2人して泣いてしまって、ご飯もあまりお腹に入らなかったし、楽しい思い出かと言われたら悩ましくなってしまったが、

 

 でも大丈夫。


 だって、今日日曜日も、美桜と遊ぶ予定があったからだ。


「お姉ちゃん、あとどれくらいかかりそうですか?」

「あと1時間ぐらいかなぁー」


なんて冗談を言ってみる。

 

「1時間!?一体何にそんなに時間をかけるんですか!?」


 チラッと玄関を見ると、

 玄関には待ちきれないとばかりにもう靴を履いている美桜が私を見ていた。


 今日も7時には起きようという話になっていた。


 私が起きた時が6時半で、起きたら美桜が居なくて少し驚いた。そしてリビングに降りてみたら、「あ、おはようございますお姉ちゃん。じゃあ、行きましょう」なんて準備万端で言うからさらにびっくりした。


 今が7時だが、

 流石に待ってもらっているということで、急いで準備している。


 普通の女子大生なら朝の30分程度で用意を済ませるというのは、まぁまぁ……人によるができなくは無いだろう。ツバメのようにガッツリメイクするなら無理だろうが、私には余裕だ。


というか、朝ごはんを美桜に口に突っ込まれて、「噛んでください!ほら、ごくんってしてください!」「ふぁ、ふぁらふりらよ〜(まだ無理だよ〜)」なんて言いながら押し込まれたその時に、私の朝の用意の半分は終わった。


 朝食が半分を占めているからね。


 ジャーと出ている水を止めて、鏡を見てみる。


 寝癖の類は見当たらないが、くせ毛なので髪がところどころはねていた。普段なら直すが……


 チラッと玄関を見ると、まだ美桜が私をじっと見ていた。


 ……癖毛ぐらい、まぁいいか


 リビングに戻って、荷物を持つと、玄関に向かう。


「お姉ちゃん、今日も可愛いですよ」

「えっ?」


 勝手に顔が赤くなる。


 今日も?


 ……初めて言われたけど?


 なら思った時毎回言ってよ


「美桜も可愛いよ」

「ふふっそうですね」


 美桜は嬉しそうに笑う。


 なるほど、美桜ぐらい可愛くなると、そうですね、なのか……

 勉強になる。


「じゃあ、行こうか」

「はい!」


 ———————————————————————————

 場所が決まっていなかった。

 いや、遊園地の予定だったが、「私がチケットを取っておきますね。」と美桜が言っていたから任せていた。しかし、玄関を出てすぐ美桜が、「じゃあ、どこに行きますか?」なんて言い出したから、どうやら忘れているようだ。


 まぁそういうこともあるだろう。


 時間は7時ちょい。本当は7時起床、8時半出発、9時半遊園地到着の予定だったが……この時間だと、今から行って空いてるアミューズメント施設というのもないだろう。


 ……どうしようかな……


 あぁ、そういえば、ちょっと離れたところに8時頃に空く水族館があったな。ネットでチケット取れるとこ。

 電車でちょうど40、50分かかるところなのでちょうど良いだろう。


「美桜、水族館はどう?」

「いいですね!私、魚大好きです!」

「じゃ、行こうか」

「はい!」


 美桜は満面の笑みで私の隣を歩く。


 ……まぁ美桜が笑ってるなら、なんでもいいか。


 私は微かな違和感を胸に押しとどめ、最寄りの駅に向かう。

 ———————————————————————————

「おぉ……すごいなぁ……」

「本当ですね……」

 

 私たちの目の前には大きな水槽があって、その中に人よりも大きいクジラが入っていた。

 クジラは私たちのことなど一切気にしていないみたいに、ゆらゆら、ゆらゆら、水槽内をゆっくり泳ぐ。

 クジラは口を大きく開けると、水槽内にいた小さい魚の大群を丸呑みする。

 クジラはすぐにまたユラユラ動き出したが、それは餌を探しているようではなかった。まるで、もう人生にやることが無いゆえの暇つぶしみたいに見えた。


 ……餌を食べて、限られた水槽内をゆらゆら泳ぐだけの生か……


 なんだか悲しくなってしまい、くじらに目を輝かせている美桜を後ろから抱きしめてしまう。


「お姉ちゃん?」

「ううん。なんでもない。」


 美桜はじっと私に抱きしめられて、「きっと、大丈夫です。きっと、私たちが生き残る未来だって、きっと……」

 そう言った。


 私にはよく分からなくて、美桜が遠くにいるような気がした。だから、強く抱き締めた。


 そうすれば美桜がどこにも行かない気がした。


 手になにか暖かい液体が当たった。

 

「っ!お姉ちゃんはっ!ひぐっお姉ちゃんは、私が守るから!私が守るから大丈夫ですっ!」

「そっか……なら私も美桜を守るよ。」

「ありがとうございます……ですが、無理はしないでください!お姉ちゃんが死んじゃったら——


 え?」

 

美桜が急に驚いた声をあげる。


「美桜?」


「や、やだ!もう、もうやだ!なんで今なの!?なんで……!なんで!!」

 美桜が叫ぶ。

「美桜!?どうしたの!?具合でも——」

 美桜はスマホを見た。

「っ!?お姉ちゃん!今すぐ変身してください!!し、死んじゃいます!!」


 そういうと、美桜が「っ変身!」と唱えて、姿を変えていく。

 美桜は巫女服を身にまとっていた。


 何が起きてるの!?ど、どうして、美桜が変身して……

 まさか……

 ……今からなのか!?


 分からない……分からない……


「お姉ちゃん!早く!」

「っ変身!」


 手を見ると、半袖から長袖になっていたので、

 私の見た目も変わったのを理解した。


 ……どうして美桜はこんなに焦っているの?

 どうして、ここで、配信ができるの?

 だって、ここは私が決めた場所。美桜が元々言っていた遊園地じゃない。それなのに……


 私たちの目の前の水槽、その中で空間にヒビが入っていく。

 ビキビキビキ


ホォォォォォォォォォ!!


 甲高い声とともに頭が出てくる。


 ……あ……大きい。


 それは、クジラだった。


 クジラは勢いよく、そのまま水槽に出てくる。


 ……大きすぎて水槽に収まっていない。


 水槽にヒビが入る。


「お姉ちゃん!下がって!」

「う、うん」


 美桜が私の手を引っ張って、水槽から離れる。


 すると、パリーーン!!という音ともに水槽が割れる。


 バシャーン!!


 水槽の水が一気に水族館の通路へと、流れ出す。


 ……水に足を取られそうになる。


 ……え?


 一緒に元々水槽にいたクジラが、私たち目がけて流れてくる。

 そのクジラの後ろから……怪獣のクジラが大きく口を開けて迫ってくる。


「っ!」

 美桜が紙を指に挟んでなにかをしようとする。

 ……でも、間に合わなそうだった。


 私は咄嗟に美桜を突き飛ばす。


「お、お姉ちゃーーん!!!」

 美桜の声が聞こえる。


 多分配信だ。多分大丈夫だ。多分私は死なない。多分……多分……


「大丈——」


 ガシャ!!バシャ!!ガツン!!

 

 ……私は流されていく。

 ただただ流されていく。


 私の足元には元々水槽にいたクジラがいて、私はそのクジラを足場にして、一緒にどこかに運ばれていく。


 ……暗い

 ……どこまで行くんだ?


ジュー……


 ……え?


 これが……


 ……これが本当に、演出なのか?


 だって、だって、


 私の足場にしていたクジラが溶け始めた。


 ジュー……


 クジラの体は、なにかの液体に当たった瞬間、溶けていく。


 これって消化されてるの?


 でも、

 私は、溶かされないよね?


 あれ?足が……


 力入んない


 ガクン


 あ、体が崩れ……


 あぁ、あぁぁぁぁぁぁぁぁ


 私の頭は偶然、クジラの骨の上に乗っていた。


 でも、私には頭以外が見当たらなかった。


 見下ろせない。

 顔が動かない。


 ……首が無かった。


 ……怖い。

 これはなんだ?本当に配信に映っているのか?

 水族館で泳ぐクラゲを実際に溶かすことなんて出来るのか?


 ……あぁ嫌だ。そんな訳ないのに、私はこのまま死んでしまうような気がする。

 そんな訳ないのに美桜にはもう会えないような気がする……


 ……あれ?

 頭が動く……


 あぁ……やっぱり体が治った……


 私はどっぷり浸かってる足以外がすべて再生していた。


 今のうちにクジラの骨によじ登る。


 ……痛みもなかったし、治ったし、分かってるんだ。


 これがただの演出だって。

 

 でも、美桜は、美桜は本当に怖がってたんじゃないの?

 美桜は確かに怯えていた。美桜は私が突き飛ばした時、私に手を伸ばしていた。その時の表情は……


 あれらが演技だったなんて思えない。

 美桜にも、何も知らせてないの?

 私だけじゃなく?


 ……あぁ、ムカつく。


 ……私はクジラの骨の上に登ると、壁らしきものまで這って進む。片手で骨を持って、もう片手で、


 その壁に向かって……


 バシューーン!!


 バチャ!


 あぁ、飛ばされないように骨を掴んでたのに、やっぱり飛ばされた。私の右腕は案の定、肩から無くなっていた。


 溶けつつある体を引きずり、クジラの骨に登り直し、出来た光に向かって、這っていく。


 ……あぁ、やっと、出れた。


 美桜は?

 美桜はどこに?


 視界に映るのは道路と、住宅。


 というか、あれ?ここどこ?


 私の視界には住宅街が映っていた。


 ホォォォォォォォォォ!!

 怪獣のクジラがまた大きな声を上げて、動き出す。


 クジラが向かう方を見ると、

そこには……


 見覚えがある水族館の看板があって……


 ……原型を留めないほどぐちゃぐちゃになった水族館があった……


 ……え?

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