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第50章  『死』(3)

優一の視点


残っていた煙草を半分吸い終えるまで、俺はその場を動かなかった。


どうせ勘でわかっている。


これから先の数日は忙しくなる。


次にいつ煙草を吸えるかなんてわからない。


まったく、俺にとっては悪夢みたいな話だ。


目の前に見えているのは、増え続ける仕事だけだった。


だが今は、別の疑問が浮かんでいた。


知る必要があるわけではない。


ただの好奇心だ。


麗華への問い。


そして――もしかしたら俺が弟を救うと信じていたかもしれない、あの妙な人間への問いでもある。


俺が改心すると。


俺が償うと。


俺が善人になると。


そんなことを期待していた連中に、一つだけ聞いてみたいことがある。


麗華にも同じだ。


全部終わった今、裏切られる気分はどうだ?


   ◇


大輝の視点


俺ははっと目を覚ました。


居眠りしながら二度も頭が落ちかけていたらしい。もう少しで椅子から転げ落ちるところだった。


ひどい一日だ。


まあ、きっと誰にとってもそうだったのだろう。


「優一さん、まだ来ないのか……」


小さく呟く。


「いったい何をしてるんだ?」


普通、患者が亡くなった場合、その場にいる家族には最後の別れの時間が与えられる。


規則として決まっているわけではない。


だが、多くの病院ではそうするのが慣例だった。


俺は顔をこすった。


眠気を追い払おうとしたが、視界がまともに焦点を結ぶまで何度か瞬きを繰り返さなければならなかった。


少年は変わらずベッドの上に横たわっている。


死んだまま。


「この後は解剖だな」


まただ。


患者に話しかける悪い癖が出ていた。


返事など返ってこないとわかっていても、つい口にしてしまう。


「でも安心しろ。担当する人間は信用できる。腕も一流だ」


俺は指を一本立てた。


蘇生処置の際にめくれたままになっている腹部へ、その指先を置く。


「切るのはこれくらいだ」


指先で腹を縦にゆっくりなぞる。


「わかるか?」


そう言って彼の顔を見る。


そして――


……


……


そこにいた。


海斗が。


薄く開いた瞳で、まっすぐこちらを見つめていた。


生きている。


目を覚ましている。


言葉が消えた。


頭の中が真っ白になる。


世界が止まったようだった。


俺は何一つ理解できず、


ただその目を見返すことしかできなかった。

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― 新着の感想 ―
por fin despierta kaito, ahora se viene la tormenta para el desgraciado de su hermano y padre
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