ロイヤルな茶会
読んでくださってありがとうございます(*´ω`*)
「ようこそ、ランヴァルト」
「ええ。ご招待感謝します、兄上」
笑顔のレアナン殿下に対し、殿下はいつも通りの仏頂面だ。
レアナン殿下は気を悪くしたような素振りも見せず、私の方へ向く。
「ようこそフィリア。はじめましてだな」
「はじめまして、レアナン殿下。お招きいただきありがとうございます」
「どうぞ今日は楽しんでいってくれ」
「はい」
一瞬笑顔を浮かべるべきか迷ったが止めた。
なんとなく見透かされそうな気がする。
すっと視線を横に向けると、どうやらこちらを見ていたらしいジュリア殿下と目が合った。
殿下とはまた違った愛想の無さを感じさせる表情だ。
「ジュリアだ。よろしく、ランヴァルト、フィリア」
「よろしく」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
ジュリア殿下は全く変わらない無表情ではあるが、不思議と皇族の威厳のようなものを感じさせた。
軽く自己紹介が終わり、勧められた席は殿下の左隣。
大きめな丸いテーブルを囲むように、椅子が配置されていた。
全員が席についたのを見て、私も腰を下ろす。
「それじゃあ、俺の護衛から紹介しよう。ジェイド」
「ハッ。ジェイド・フォン・ジェスター、レアナン殿下の皇族騎士です。歳は22。ジェスター伯爵家の次男です。第二騎士団の騎士団長を務めております。以後お見知り置きを」
鋭い目つきに、ガッシリとした体躯。錆色の前髪から覗く瞳は黒に近い茶。
なんとも硬質な雰囲気を感じさせる武人だ。
(カルダンとは全く逆だな)
「それじゃあ、次は僕だね」
ジュリア殿下の無言の視線を受け取ったその人は、にこりと爽やかな笑みを浮かべ、そう言った。
「僕はレオンハルト・フォン・ヴァナス。ジュリア殿下の皇族騎士です。歳は18でヴァナス公爵家の三男。第三騎士団の副騎士団長です。以後お見知り置きを」
スラリとした、それでもかなり鍛えていることが分かる体躯と、貴公子然とした柔和な表情は乙女受けが良さそうだ。
黒の猫毛に、鋭く光る銀の瞳は全体として猫を彷彿とさせる。
「……」
じっと二人を観察していたら間が空いてしまった。
そうだ。次は私の紹介か。
「フィリア・ジェンベルです。主に学園内での殿下の護衛を任されています。出身はガレディアス領です。歳は17。よろしくお願いします」
無難であろう挨拶とともに礼をする。
上機嫌そうに頷いたレアナン殿下が紅茶を飲む。
それに倣って私も、紅茶を口に運んだ。
品の良い香りが鼻孔を通り抜ける。
味わい深く、後味のスッキリとしたお茶だ。
どことなく飲んだことがある気がする。母が仕入れているお茶の一つかもしれない。
(ミルクを足しても美味しいかも)
そう思った時、殿下が甘党であったことを思い出した。
一口目は香りやお茶本来の味を味わうとして、二口目以降であれば砂糖やミルクを入れても問題ないはず。
「殿下、ミルクや砂糖はいりますか?」
「ああ」
殿下が頷く。
どれくらい注ぐべきだろうかと迷いつつ、かなり多めに加えた。
「ありがとう」
満足そうであるから大丈夫だったみたいだ。
「……」
「どうかされました?」
じっと目線を向けられていたため、レオンハルトに尋ねた。
レオンハルトは一瞬目を見張ってから、笑みを深くした。
「ここには殿下が三人もいるのだから、名前も呼んだらいいんじゃないかと思って」
それはたしかにそうだと思い頷く。
「そう、ですね。えと、ランヴァルト殿下?」
呼んでみたはいいがしっくりこない。呼び慣れていないからだろうか。
「どうして疑問形なんだ。まあ、名前を呼ぶ案には賛成だ」
呼ばれた本人は違和感は感じなかったらしい。
…よく考えてみると、周りはたいていランヴァルト殿下と呼んでいるのだ。
呼ばれ慣れているのは必然。
「ランヴァルト殿下って固くない?ジュリア殿下とかより」
「それは…名前の違いじゃないでしょうか」
名前に呼称を付けているという点では私も変わらない。
ジェイドさんの固さとトントンだと思う。正直言ってレオンハルトが軽いだけだ。
「ランヴィーはどうだ!ずっとそう呼びたかったんだ!」
「それは構いませんが、ランヴィー殿下はちょっと…」
瞳をキラキラとさせたレアナン殿下の提案に、殿下…ランヴァルト殿下はタジタジだ。
私もランヴィー殿下はご遠慮したい。
「ヴァル、はどうだ?」
静かに落とされた提案は天啓のように思われた。提案した本人であるジュリア殿下は涼しげな顔で紅茶を飲んでいる。
「「ヴァル・・・」」
ぽそりと呟いたらランヴァルト殿下とかぶった。
思わず揃って見つめ合う。
照れた様子のランヴァルト殿下、いやヴァル殿下が視線をそらした。
「ではヴァル殿下と呼ばさせていただきますね」
可愛らしいなと思いつつ、そう言う。
「「「……」」」
「?」
何故か驚いたような視線を向けられた。
そうでないのはジュリア殿下のみ。ジェイドさんも目を丸くしてこちらを見ている。
「フィリアも笑うんだな。…あ、いや。悪い意味じゃなくて、ジュリアみたいなタイプだと思っていたから」
弁解するようなレアナン殿下の言葉に、私自身驚く。
(笑って…?)
…確かに、笑っていたかも。
偶然ではあったが、照れた殿下にいたずらが成功したような気分になったのだ。
「誰でも笑うことぐらいあるだろう」
「いや、俺はジュリアが笑ったとこ見たことないぞ」
ジュリア殿下のフォロー?にレアナン殿下が即座にそう返す。
(…なんか平和だな)
ヴァル殿下と兄弟の仲は良くないというのが世間一般の認識。
けれど、実際、複雑な関係ではあるのだろうけど、お互いを嫌っているわけではなさそうだ。
むしろ気にかけてくれているようにも思える。
ヴァル殿下の纏う空気も柔らかなものだ。
…安堵といった気持ちが正しいのだろう。
ふと自分の口許が緩んだのが分かった。
小話
「なあ、ジュリアも略称で呼んでいいか?」
「いいけど」
レアナン殿下のキラキラ光線を浴びてもなお、無表情のジュリア殿下。
だが興味はあるようでじっとレアナン殿下を見ている。
「ジュリアンヌはどうだ?」
「は?」
え…?
私の聞き間違いでなければ、明らかに女性名だった。
ジュリア殿下は無表情を崩してぽかんとしている。
「レアナン兄上、どうしてジュリアンヌなのですか?」
困惑気味のヴァル殿下がみなを代表して訊く。
「ああ、実は妹が欲しかったんだよな」
直接的な答えになっていないような気もするが…なんとなく理解はした。
「却下」
情報処理が終わったらしいジュリア殿下が、冷たく斬り捨てる。
「え〜」
「え〜、じゃない!そもそも略称なのになんで長くなっているんだ!」
本気で残念がっている様子のレアナン殿下に対し、眉間にシワを寄せたジュリア殿下。
その表情がヴァル殿下に似ていて、やはり兄弟なのだと感じた。
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今回、ジェイドの存在感が皆無で申し訳ない(ジェイドに)。ギャグノリはきっと良くないし、ツッコミよりはボケの苦労人といった感じだから組めなかったんです。
きっとみんなの会話を聞きながら微笑ましげにしているんだろうと思います。
たまにレオンハルトの言動にイラッとはしてる。次話では護衛同士の力量比べになると思うのでそこで活躍させてあげたいですね(´・ω・`)




