若気の至りってこと
「ここは霊峰があってね、かなり険しいんだ。だからーなんだよ」
「なるほど。そこで―」
学園に入学してはや一週間。
今日から放課後は王室に通う。しかも皇帝陛下の執務室直行…。
もちろんただの話し相手、というわけではなかった。
陛下はこの国を含めた近隣諸国や貴族間の情勢を私に教えてくれている。
情報は武器だ。知っているかそうでないかで雲泥の差である。
「フィリアは物わかりがいいね。流石エリヴェシルの子だな」
陛下が感心したように、笑みを含んだ声をこぼした。
一応言っておくと父だってかなりの切れ者のはず…。
すると私の心を読んだように陛下が言った。
「ユヴェリアスは物わかりが良すぎる。ああも切れると素直に褒めたくないな」
「はは…」
確かに。
面と向かって言うのはなんか悔しい。
「学園にはもう慣れたかい?」
「はい。親切な人が多いですね。学園の地図は頭に叩き込んでいるんですが、実際行ってみないとわからない所が結構多くて…」
「時代も古いからね。増設を繰り返しているし…私の時には秘密の部屋があると噂になってな。ユヴェリアスと夜の学園に忍び込んだこともあった」
仮にも一国の皇族がそんなので大丈夫なのかと正直思う。
しかも片棒を担いでいるのが自分の父親。
きっとその年代の人たちは苦労と迷惑をこれでもかとかけられたのだろう。
「秘密の部屋はあったんですか?」
「ああ。一応ね。と言ってもガラクタ箱のようなものだったよ」
「ガラクタ箱、ですか…」
「歴代の先輩方、ぶっちゃけてしまうと歴代の王族たちの私物の隠し場所さ」
…ぶっちゃけていただかなくて大丈夫だったのに。
それにガラクタ箱って…普通に考えると貴重なものだと思うのだが。
「誰が作ったのか、それとも最初に見つけたのかは分からないけど、部屋を見つけた証にテキトウな物を残していっているから、テストの答案用紙とか、ハンカチとかネクタイとかだよ」
皇族となると一癖二癖あるのが当たり前なのだろうか。
ネクタイが一番引っかかる。もしかして数日はネクタイなしだったなんてこともあり得るんじゃ…。
「その中で一番の掘り出し物は何だと思う?」
「剣とかでしょうか」
「ガレディアスらしい回答だね。残念だけど不正解。答えはポエムだよ、ポエム」
当時のことを思い出しているのか、懐かしそうに目を細めた陛下は微笑んでいる。
「著名な方のものだったんですか?」
「ん?いや、違うよ。父上のものだったんだよ。父上自作のね」
陛下の父上といったらそれはもちろん前皇帝陛下である。
まだご存命であり、南の辺境で前皇后とご隠居生活をしている。
「当時はまだ父上に全然頭が上がらなくてね。たまには一泡吹かせようと思って暗記して、父上の前で暗唱したんだ。そしたら魔物暴走の鎮圧を一人で任されて」
「魔物暴走を一人で?本当ですか?」
魔物暴走―魔物たちが大量に発生し文字通り暴走する。
陛下は魔法が使えないなずだから一人で止めるとなるとかなり難しい。
「いや。ユヴェリアスを巻き込んだよ。アイツもポエムを読んで笑っていたからな。ホントにあの時ばかりは死ぬかもと思ったよ。まあ、何にせよはっちゃけるなら学生のうちにだからね。フィリアもたまには、 はっちゃけなさい」
「…了解です」
流石に陛下の言うはっちゃけるが常人の普通じゃないことは理解している。
自分はそんなことはしないだろうと、心のなかでユースフィリアは呟いた。つい先日塀から侵入したことを棚に上げて。




