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レベル1の最弱勇者 ー僕だけレベル1のまま、四人で魔王城の最奥へ挑む物語ー  作者: 直助
第一章 始まりの町

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第8話 仮説

 森を抜けると、町の音が戻ってきた。


 パンを焼く匂い。

 遠くで鉄を打つ音。


 朝の匂いだった。


 


 ギルドの扉を押す。


 


 革と、汗と、古い木の匂い。


 昨日と同じ。


 



「終わった」


 ヒナタが依頼票を受付に置く。


 


 受付が確認し、印を押す。


「討伐完了です。報酬はこちら」


 


 袋が置かれる。


 


 本当に軽い依頼だった。


 


「……その前に」


 ステラが言った。


「測定、いいですか」


 


「好きにしろ」


 


 水晶が台に置かれる。


 


 ヒナタ。


「75」


「変わらずか」


 


 セレネ。


「65……あ、少し上がってます」


 


 ステラ。


 手を置く。


 淡い光。


「……69」


 ほんの一瞬だけ、まばたきが止まる。


 視線が数字に残ったまま、動かない。


 


 

「どうした」


 


「……いえ」


 短い返事。


 それ以上は言わない。


 


 

 最後、ミド。


 


 触れる。


 


 ……何も起こらない。


 

「測定不能ですね」


 


「安定してんな」


 


「……はい」


 


 それで終わり。


 


 ステラはまだ水晶を見ている。



 ほんの少しだけ、首を傾げて。


 何も言わず、掲示板へ歩いていった。


 



 ヒナタが肩を回す。


「次、どうする」


 それだけだった。




 その後、いくつか依頼をまとめて受けた。


 


 森の外縁。


 昨日と同じあたり。


 


 小型の駆除。


 見回り。


 巣の確認。


 


 特別、強い敵はいない。


 


「右、二体」


 

「了解」


 

 ステラが止める。



 ヒナタが斬る。


 

 セレネが補助する。



 終わる。


 


 拍子抜けするくらい、早い。


 


「……楽ですね」


 セレネがぽつりと言う。


 


「四人いると、こんなもんだ」


 ヒナタは肩を回す。


 


 昨日より、動きが合っている気がした。


 


 自分は見るだけ。


 それでも足手まといじゃない。


 それが、少しだけ嬉しかった。


 そして、またギルドへ戻る。


 



「……もう一回だけ」


 ステラが水晶に手を置いた。


 


 淡い光。


 


「……70」


 小さく、息が止まる。


 


「どうした」


 


「……変です」


 水晶を見つめたまま言う。


「……この上がり方、計算と合いません」


 


「上がったならいいだろ」


 


「いえ」


 首を横に振る。


「私は、こんなふうに続けて上がるはずがないんです」


 静かな声。


 確信に近い言い方だった。


 


 視線が、ゆっくりミドに向く。


 


「……たぶん」


 


「……ミドの分、私たちに流れてます」

「測定不能なら、消えるはずがない」


 


 ヒナタが舌打ちする。


「……なんだそれ」


 


「仮説です」


「もう少し測れば、はっきりします」


 それだけ言って、ステラは手を離した。


 


 水晶の光が、ゆっくり消えた。


 


 ミドも、同じように手を置く。


「測定不能ですね」


 光は、何も返さなかった。




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