第14話 魔法の授業
翌朝は早く起き、昨日と同じ時間にヒメノが部屋へ迎えに来た。師匠も用事があると言って俺が出るのと同時に部屋を出た。
「なんじゃ、今日はしっかり起きとるのじゃな。妾が折角起こしてやろうと思うとったのに」
「そうやってまた何かする気だろ? やめてくれよ。心臓が止まりそうだ」
昨日と同様に学校に向かいながら俺たちは並んで歩いていた。街の通りは朝から多くの人で賑わい活気に溢れている。
「ふふっ、お主が早く起きんからじゃよ。文句を言われても困るのぉ」
クソ、ヒメノのやつ絶対に楽しんでるよ。
魔法学校へはローブを着た学生がちらほらと入り口に入っていく。ヒメノは着物を着ているが、ローブを着た方が普通なのだろう。
ヒメノが先に歩いているので、行く場所は分かっているのだろう。俺は何も言わずに付いていく。
今日は昨日右に行ったホールの左の廊下に入った。ホールと廊下にも朝のためか昨日より人が多いように感じる。廊下の突き当たり、右にまだ廊下が伸びていた。突き当たりの大きめの扉を開く。
正面の教壇へと至る廊下の左右に大量の椅子と机が段になって並んでいた。300人ぐらいは入るだろうか。
ほとんどの席は埋まっていて生徒が座りガヤガヤと話し声が高い天井に響いている。
「すごいな……」
つい立ち止まり天井と広いホール内を見回した。立ち止まっているとヒメノは先に行ってしまった。
前の席にはまだ空きがあるのでその中へ俺とヒメノは座った。周りの生徒は遠巻きに俺たちを見て何か話している。
「見たことない人」「あの才女が誰か連れてる」「部外者」などあまりよく思われてない可能性もあるが昨日よりはマシな気がした。やはりあまり歓迎されていないのだろう。
「気にするでないぞ、あんなのは弱いものの遠吠えみたいなものよ」
ヒメノは俺に耳打ちした。他の国から来たヒメノはこの中で今まで生活して慣れているのだろう。
俺は無言で頷く。すると教壇の横の扉が開いた。いかにも魔法使いといった風貌のとんがり帽子に白い口髭を蓄えたおじいさんが出てきた。
「みなさん、おはようございます。『魔術基礎』の授業を始めます」
そういうと授業をはじめた。黒板に魔術の基礎を書き難しい言葉を言っているので、段々と眠たくなってきた。周りを見ると何人か寝ている生徒も見受けられる。かくゆう隣のヒメノも涎を垂らして開始10分で寝始めてしまった。ヒメノを肘で小突いても起きる気配もない。机に突っ伏し寝ている。
そして1時間程が経ち授業は終わった。授業の内容は魔法属性についてだった。赤の火属性、青の水属性、緑の風属性、黄の光属性、黒の闇属性話だ。お互いの相性や使い方についての話だった。
「なあ、お前授業中爆睡してたけど大丈夫なのか?」
「なんじゃ、妾はあんな基礎などとっくにマスターしておるから大丈夫じゃ。おぬしの付き添いの為に来とるのじゃから」
「そうか、ありがとな」
朝はあんなに俺を脅かしたり、からかっていたのに案外いい奴なのかもしれない。
「さて、どうしようかの。初等魔術の授業は今日はもうないんじゃよな。ほれ」
そう言うと紙を一枚出した。紙には15回分の初等魔術の授業の予定表が書いてあった。
「俺、こんなの貰ってないぞ」
「だって妾が渡すように言われてたからの、渡し忘れてたんじゃ」
ヒメノは悪びれずに言う。
「おいっ!」
ヒメノはヘラヘラして「すまんのー」とか言いっている。
予定表には今日の第3曜日、午後からの授業は休みになっていた。どうしようか……。
「おぬしこの後、暇かの?」
「暇だな、師匠もどっか行っちゃったし」
俺は空を仰ぎ見て言った。まだ昼飯には早いし。
「ならば! 妾に付いてくるのじゃ。狩りに行くぞ」
ヒメノは山のある方角を指差して言った。
俺とヒメノは街から少し離れ、森の中へと入っていく。森の中は夏でも涼しい風が木立を揺らし、葉の間から光が差し込んでいた。ヒメノは鼻歌なんて歌いながらご機嫌な様子だ。俺は何をするのか全く分からず付いてきてしまったことを早くも後悔し始めた。
「狩りって言っても何するんだ?」
「これじゃよ」
ヒメノは木の根元へと近づき、そこに生えている黄緑色の草を採った。
「これがなんなんだよ?」
ヒメノの手にある草を摘まみ首をかしげる。
「これは傷薬に使える薬草じゃ。売れるし、自分でも使うことができるから定期的に採りに来とるのじゃ」
またもやヒメノは自慢げに言った。顔が我が事のように得意げだ。
「なるほどな。この黄緑色の草を採ればいいんだな」
「うむ」
俺は内心ビビり倒していた。狩りなんていうからなんかモンスターを狩るのかと思ったが薬草採取なら安心だな。
俺たちは森のあちこちに生えている薬草を採っていった。




