第11話 要はヒットアンドアウェイ!
「はい、父上。クレイトを殺そうとしていました。」
バルメントがそう言うと、男は苦虫を嚙み潰したような顔をする。
「クレイトを?」
男は最終確認でも取るようにそう訊く。
「はい。このようなゴミ存在そのものが無価値だと」
バルメントは極めて冷静にそういう。
だが、そんなバルメントとは裏腹に男の顔は俺から見てもわかるほど、怒りに満ちていた。
「だからといって、殺そうとするのはやりすぎだ!」
「けれどクレイトは民衆からも嫌われています」
バルメントはまるで自分の行いが正しいかのようにそういう。
俺も、民衆に嫌われているというだけで殺すのはやりすぎだと思う。
「父上もそう思うでしょう?」
「チッ……。違ぇよ……!」
メイさんがバルメントの意見に異議を唱えるように小声で怒り交じりにそういう。
……怖いです。
「だが……!」
父が拒むようにそういう。
ちなみに、この人は俺の父ではない。
名前がわからないだけだ。
「無能力者で、民衆からも嫌われている。こんな男生きているのが大問題!殺すべきです」
「だが!……」
「実の息子を殺したくないと?」
「違う!」
父は声を荒げる。
「あなたは国民を第一に考えてきたはずです。ならば、こんなのはどうでしょう?」
バルメントは部下らしきものから、書類のようなものを受け取る。
「なんだ?それは」
「国民のアンケートです。……クレイトに関してのね」
バルメントが父に書類を手渡す。
「なんだっ!これは……」
父は驚きを隠せないようだった。
何が書いてあるのか知りたいんだけど……。
「クレイト王子「第一王位継承権」剝奪に賛成が……99.8%だと?」
おお、すげぇ。
どんなことをしたらそんなに国民から嫌わるんだろう。
「そんなっ……馬鹿なっ!」
ずっと驚いているなこの人。
血圧だいぶ高いんじゃないか?
「仕方ない……。」
父がそういうと、バルメントは笑顔になる。
「でっ、では殺してもよいのですか?」
エラガンスは楽しそうにそういう。
殺していいんですか。を楽しそうに言うとか本当にどうかしてるだろ。
バルメント快楽殺人者なんじゃないか?
「いや、殺すのは許可しない。」
「そんな殺生な!……」
「クレイト。お前を……お前を……きょ、今日限りで……つ、追放だ……。」
父は、えらい歯切れ悪くそういう。
隣でメイさんが
「ジジイ、今回は特別に許してやる。」
と、また物騒なことを言っている。
怖いよう……。
「父上がいないところでお前を殺してやる!」
と、バルメントは捨て台詞を吐いて馬車に乗り、父の後を追うのでした。
「転移用魔力、溜まりました!。」
「すみません。ルナさん炎の魔法発動してもらってもいいですか? 転移に支障がないのなら、操作は必要ないので。」
「わかった。出すよ『炎』――」
ルナがそう唱えると、てのひらサイズの炎が出現する。
「ありがとうございます。『万物操作』――――」
酒が抜けたのか、メイさんが先ほどの荒々しさはどこへやら爽やかな声で礼を言う。
すると掌サイズの炎はバルメントが乗っている馬車に向かって飛んでいき……。
煌びやかな布に火が付き燃える。
「うわあぁぁぁぁ!」
と、バルメントの小さな叫び声が聞こえる。
怒りをあらわにし、馬車からエラガンスと取り巻きの部下が降りてくる。
「ルナさん!今です!」
「わかった!『転移』―――」
こうして、メイさんは復讐を終えたのだった。
攻撃してから逃げるとか……メイさん腹黒いなあ
✕ ✕ ✕ ✕
帰りもまたパミーフクスで拾った、馬車に揺られ、追放宣言されたクレイトとそのメイドのメイさんと共に、パミーフクス都心で降り、後は歩きで、魔王の国サルジニルグへと戻ってきた。
また、馬車でメイさんに説明を受けたのだが、クレイトは魔力視目者で、魔力を視ることができるらしい。
そして、ここ数年で地下魔力が暴発し、大きな揺れとなるそう。
ちなみに地下魔力とは、地面が持っている魔力のことらしいのだ。
そしてその地下魔力には魔力域があり、その魔力域を侵入しあうことで、形の違う魔力がぶつかり、大きな揺れを引き起こすらしいのだ。
さらに、魔力とは形が違うとぶつかるものであり、魔力が違うものと闘うのならば、魔力そのもので戦闘もできちゃうらしい。
クレイト曰く、ルナの魔力は「黒魔力」と呼ばれるものだそう。
専門用語ばっかりで頭がおかしくなりそう。
そして、その震源の中心となるのがオリエンルだそう。
なので、次期王子のクレイトが愛想悪くすれば国民も辟易して、この国から出ていくだろうと思ったそうなのだ。
もっと他にやり方はあった思うが、あの口の悪さは民を思うものだったらしい。
じゃあ、なんで俺には口が悪いままなのかな?あ?
だが、現実は違う。クレイトの思惑は失敗に終わった。エラガンスが第一王位継承者になるそうだ。
そして、クレイトはエラガンスから感じる魔力が「闇魔力」と呼ばれるものを発しているそう。
闇魔力は基本、悪魔が使う魔力らしい。
なのに、エラガンスが闇魔力で魔法を使っているのはおかしい。そういうのだ。
ちなみにブラット家の継承魔力は「白魔力」らしい。
悪魔、もしくは悪魔と契約した。
その可能性があると、そういうのだ。
そして、バルメントもまた無能力者なのだ。
悪魔は人間を唆す。
それは間違いではないようで、実際に悪魔と契約を結んだ者の末路は酷いものらしい。殺人鬼になったり、国家反逆者になったり、と。
そんな歴史があるからこそ、エラガンスが王に即位するのはまずいそう。
少なくとも地震発生までタイムリミットはあるので、その間にサルジニルグで解決策を練りたいそうだ。
まあ、特に断る理由もなく受け入れた。
ルナがな。
サルジニルグを復興させることと、もう一つオリエンルの国民を大地震、悪魔から守ること、この二つが今後の彼らの課題となりそうだ。
って、いうか。旅行券当たった意味全くないじゃん。
オリエンルには旅行しに行ったはずだよな?
一泊もせず帰ってきてるんだけど……。
どうなってんの?これ?
まあ、急いでたから仕方ないけどさあ……せっかく行くんなら海外旅行は楽しみたかった。
俺のそんな思いは誰にも届かないんだがな。タイムリミットはあるので、その間にサルジニルグで解決策を練りたいそうだ。
まあ、特に断る理由もなく受け入れた。
ルナがな。
サルジニルグを復興させることと、もう一つオリエンルの国民を大地震、悪魔から守ること、この二つが今後の彼らの課題となりそうだ。
って、いうか。旅行券当たった意味全くないじゃん。
オリエンルには旅行しに行ったはずだよな?
一泊もせず帰ってきてるんだけど……。
どうなってんの?これ?
まあ、急いでたから仕方ないけどさあ……せっかく行くんなら海外旅行は楽しみたかった。
俺のそんな思いは誰にも届かないんだがな。




