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悪役王女の矜持  作者: ふう


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12/12

番外編 4 悪役王女の婚約者は全てを手に入れる

お待たせいたしました。エリオット編いよいよ完結です。




 ブレイズランド帝国の北東地方で新種の伝染病が発生した。

 その知らせは俺の記憶の通りで、元々はその地方の風土病が突然変異したものだ。

 前世ではブレイズランド帝国で流行した後、クロワルド王国へも飛び火して多くの死者を出し、結果的に国を弱体化させ破滅へと向かう元凶となる。

 俺は今後の対策の相談に今や副官となったライリーに声を掛けて帝宮へと向かう。

 クーデターの成功により新皇帝の下、少しずつ混乱も収まり復興に向けて進み始めたこの国に、伝染病の流行は新たなブレーキとなる。

その被害を最小限に抑えてクロワルド王国への感染拡大を防ぐ為に数年前から手は打ってきた。


 前世の記憶を思い出した俺は学園に通いながら、まずは将来二つの国を疲弊させる恐ろしい伝染病について調べ始めた。

そして感染が拡大する前に特効薬を作る事ができないかと考えた。

 伝染病は元はブレイズランド帝国の北東の湖や森林の広がる俺の母の一族が治める地の風土病だった。

 ガキの頃、下町で会った薬師の婆さんに教えてもらった「魔女の薬」の一つが後に開発される特効薬だと気付いたのだ。

 クロワルド王国の王都の下町で、リリーナの紹介で知り合った()()()()()と言われた薬屋の薬師の爺さんが魔女の薬の製法を知る者だったのだ。

 それで前世の俺は、伝染病が蔓延している中、その薬屋を訪ねて特効薬の処方を依頼したが、かつてのクロワルド王国の状況では薬の原材料を入手出来ず断念せざるを得なかったのだ。

それはブレイズランド帝国の北東地方の森に自生するある草の根を乾燥させた物とブレイズランド帝国とクロワルド王国でも採れる鉱石の粉末だった。

 その時のクロワルド王国では飢饉による混乱の為、ブレイズランド帝国との交易は止まり鉱山は閉鎖していたのだ。

 でも現世()なら俺の商会を通じていくらでも原料の調達は可能で、俺はまた奉仕活動で下町での信頼を得ていたリリーナに近づき、その偏屈で有名だった薬屋の爺さんを紹介してもらいクロワルド王国で先に特効薬を作る事に成功していた。

 あの時、学園の建国祭の夜会で下町の怪しげな店に出入りしているとあいつらに糾弾されたが。

 そして先日クロワルド王国にある商会からの連絡で特効薬の大量生産の準備が整ったとの報告も来ていた。

 その知らせを持って皇帝に策を進言するつもりだ。



 「待っていたぞ、大公。こちらへ。」


 皇帝の豪華な執務室には兄のローランド帝と没落した元侯爵で今は公爵位を賜った新しい宰相が俺を待っていた。

宰相は皇帝にとっては叔父であり後ろ楯となった。

 そして俺は「革命の英雄」と呼ばれて、公爵より上の大公の位を得た。

しかし領地は持たず、相応の報酬と立派な屋敷を得て、今は皇帝の相談役として軍部の指導もしている。

 俺にとって国も皇帝の座も魅力は無い。

そう、これからの計画を進めるために高い地位が欲しかったのだ。

あ、最初に買った屋敷は子爵位を得たライリーにくれてやった。

マイヤもそのまま住んでいる。

 そのライリーが、「姫サマに振られて祖国(くに)に逃げ帰って八つ当たりでクーデターを起こしたなんて言われたらカッコ悪いだろ?」とか言うので、未だ一部の者以外には王族に連なる者という以外素性も顔も伏せたままにしている。


 皇帝に呼ばれたのはやはり最近国内でじわじわと感染を拡大している伝染病の事だった。


「近頃の伝染病の拡大で昨日とうとう数人の死者も出た。

このままだとますます患者数も増えてせっかく復興の兆しも見えた国内に悪影響が出ることだろう。

至急の対策を検討したいためお前を呼んだ。

何か考えはあるか?」


と、疲れの見える皇帝が問う。


「はい。

先日、私が得た情報によると隣国のクロワルド王国でこの伝染病の特効薬が開発されていて量産に入ったそうです。

陛下、クロワルド王国へ親書を送り、特効薬の輸入を願ってみてはいかがでしょう。

現国王フィリップ陛下も次期後継者のマルグレーテ殿下も人道的に優れたお方でこの話断る事はないかと。

それにこれをきっかけに今まであまり交流の無かった今や世界一裕福で豊かなクロワルド王国と交誼を結んで損はないかと存じます。」


「ほう、それほどか…。

で、以前お前はその王女の婿になりたかったのだな?」

 

「いえ、まだ諦めた訳ではありませんよ。兄上。」


悪い顔で笑った俺に兄皇帝は破顔した。


 婚約者候補を外されたのは予想外だったが、マルグレーテを手に入れることを諦めた事はない。

その為に俺はこの5年間必死に頑張ってきたのだ。

 商会からの報告でクロワルド王国とマルグレーテの動向は絶えず掴んでいる。

 学園を卒業後、マルグレーテは結局誰も婚約者に選ばなかった。

前世の記憶を持ち、残りの三人のこれからの行いを知っていたなら当然のことだろう。

 俺も裏から手を回してハインリヒとリュシアンには()()のハニートラップを仕掛け、学園の剣術大会でジョルジュを叩きのめして力の差を見せつけた。

 下町のごろつきどもを相手に実践を積んできた俺にしたら学園で教える剣術など綺麗事だ。

お陰でクロワルド王国では力を持て余している奴らに合法的に力を使えて尚且つ街の人からは感謝される自警団を作ったり、ブレイズランド帝国では血気盛んな者どもを集めてレジスタンス軍を組織した。

 そんな結果、マルグレーテは誰とも結婚せずに女王になる道を選んだようだ。

でも俺は前世の記憶からマルグレーテが本当は結婚に憧れを持っていたことを知っている。

 だから今こそ前世で起こった悲劇の要因を全て取り除き、莫大な資産を持ち、小国の元首に匹敵する大公という地位を手にした俺は逆にマルグレーテへプロポーズするのだ。

 その機会は案外早くやって来た。


 クロワルド王国は我々の交渉を快く承諾し、特効薬を廉価で輸出し医師なども派遣してくれた。

 お陰で国内の伝染病は大流行とはならずようやく下火となった。

 クロワルド王国への感染拡大も国境の町で数名程度で済み、今回リリーナの婚約者も無事だった。

 それでもクロワルド王国には少なくない金額の代金が渡り、原料調達から製造まで一手に負った俺の商会はかなりの利益を上げた。

 そしてこのことに感謝の意を示す為に両国間に友好条約を締結する事になり、内情を知ってる皇帝は俺を調印式へ全権を持つ大使として任命した。

俺への褒美としてブレイズランド帝国の皇帝から大公位を持つ皇帝の弟とクロワルド王国マルグレーテ王女の婚約の打診の親書とともに。

 一度はフラれたが、大国であるブレイズランド帝国からの正式な国と国との契約結婚の申し込みを聡明なマルグレーテは断れないだろう。

ただ俺の希望でマルグレーテには知らせずに直接伝えたいと申し出た。


 そして俺は正体を隠したままちょうど一年ぶりにクロワルド王国を訪れた。

 久々に見るマルグレーテは風格に満ちますます美しくなっていた。

 調印式が無事に終わり、夜、クロワルド王国の建国祭を兼ねた歓迎の夜会が始まる。

 俺は豪華な紺の軍服にかなり伸びた髪をえんじ色のリボンで纏め、王族らしいゆったりした動作で挨拶を終えてマルグレーテを優雅な仕草でダンスに誘う。

 俺たちは前世以来となるダンスを楽しみ、マルグレーテを花の都とよばれる王都の夜景が望めるバルコニーへと誘った。

ちょうど花火も上がり雰囲気もバッチリだ。

 そしてとうとう俺は意を決して仮面を外し、驚きて目を丸くするマルグレーテの前に跪き渾身のプロポーズをした。


「マルグレーテ様、心よりお慕いしています。

私に再び貴女のお側に立てる許可をお与え下さい。

どうか私と結婚して下さい。」


たっぷり間を置いて


「よっ、良くってよ。」


とちょっと悪役令嬢っぽく応えてくれたマルグレーテを思わず抱きしめて俺は心の中でガッツポーズをした。

 ホールの中へ入ると、事前に根回ししていたため皆が固唾を飲んで俺たちを見守っていて、そのままマルグレーテの手を取り進んで国王に無事プロポーズを受けてくれたと報告をする。

 すかさず宰相が皇帝と国王の署名が既に入った婚姻許可証を掲げ、よく分かっていなさそうな、そんな顔も可愛いマルグレーテを囲んでホールは大騒ぎとなった。

 盛大な皆の祝福と、「祝♡ご結婚」と書かれた横断幕に結婚式入場曲を演奏する楽団と、珍しく朗らかに笑っているマルグレーテの姿を見て、俺は今までの苦労が吹き飛ぶ思いがした。

 

 そして二ヶ月後、王太女の即位式と同時に最速で結婚式が挙げられることになった。

 まず、莫大な金額の結納金がブレイズランド帝国に支払われ、返礼に国内の鉱山で採れたかなりの大きさのダイアモンドの原石がいくつかクロワルド王国へ贈られた。

俺からはマルグレーテに城一つ買えるほどの大きさの俺の瞳の色の美しいサファイアのネックレスとピアスを送った。

 そして王宮に新居を構える事になったので、改装工事や最高級家具などを社員価格で早急に用意させたことはナイショだ。


 そしていよいよ迎えた結婚式。

 白いウエディングドレスに俺の贈ったサファイアのネックレスをつけたマルグレーテは世界一美しかった。もう女神かと思うほどに。

 マルグレーテも白い儀礼服にマルグレーテから贈られたマルグレーテの瞳によく似た紫のアメジストのブローチを付けた俺の姿を気に入ってくれたようだ。

 そして国王夫妻や兄皇帝などたくさんの参列者に見守られながら式を挙げ、白い馬に引かせた馬車に乗り王都をたくさんの市民の祝福を受けながらパレードを行う。

前世、マルグレーテが望んだ豪華な結婚式となった。

 それから王宮にて王太女の即位式を行い、ブレイズランド帝国から贈られた大きなダイアモンドが嵌まった王冠を戴く。

この瞬間、とうとう俺は前世では得られなかった、世界で最も裕福な国の将来の女王の王配となった。


 バルコニーから俺とマルグレーテは王宮前広場に集まったたくさんの市民の歓喜の声に応えて手を振る。


「ああ、やっと手に入れた。」


思わず漏らした俺の安堵の呟きにきょとんとするマルグレーテがあまりにも可愛いくて思わず抱きしめて頬にキスを落とした。


「愛してるよ、マルグレーテ。前世から。」


そう、長い時をかけてやっと捕まえた俺の至宝。俺の希望(ひかり)

大切に大切に閉じ込めて全ての悪意から遠ざけて(いつく)しみ、お前の好きな俺の甘い笑顔を向け続けよう。


一生その笑顔の曇ることがないように、俺の世界一豪華で広い鳥籠の中で…。



二人はとうとう結婚して幸せにな…るのか?

たぶん…。


長い間お付き合いくださいましてありがとうございました。

最後に評価やコメントを頂ければ幸いです。

また他の作品でお会いできれば嬉しいです。



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