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悪役王女の矜持  作者: ふう


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10/12

番外編 2 悪役女王の婚約者は暗躍する

全てはマルグレーテ王女のために。

エリオット皇子の視点です



 「はあっ⁈ 姫サマに振られたぁ?

可愛いからってリリーナ嬢に鼻の下伸ばしてるからだろ、エル!」


 素っ頓狂な声を上げたのは俺の二つ上の乳兄弟で従者のライリーだ。

二人きりの時は子供の頃のままの遠慮のない態度をとる。

 夜会から帰って先程の婚約者候補の契約を破棄されたことを告げると、帰ってきた第一声がこれだ。


「だから振られたとか言うな!

それに俺はリリーナに鼻の下なんか伸ばしていない。

絶対にだ!

それから可愛いという言葉はマルグレーテ以外に当てはまる者なんていないっ!」


 そう、マルグレーテは可愛い。

前世のちょっと我儘なマルグレーテも、今の悪役っぽくツンツンしているマルグレーテも、どんなマルグレーテでも全て可愛い。

 子猫が歩いていても寝ていても、シャーッと威嚇していても可愛いのと同じだ。

できることなら離宮にでも閉じ込めてずっと愛でたいと思うがさすがに王太女を閉じ込めるのは無理があるか…。


「そんな気持ちの悪いこと考えてるから姫サマに嫌われたんじゃないのか?」


「えっ、口に出てたか…?」


「いや、顔に出てたぞ…。」


「………。」


「と、とにかく婚約者候補から外されたからもうここにいる必要はない。

ちょっと予定より早くなったが祖国(くに)に帰るぞ。

すぐ発てる用意をしてくれ、ライリー。」


「ちょっ、え?今からか⁈」


「ああ、早い方がいい。」



 夜明け前、北の祖国へと続く道をライリーと二人無言で馬を走らせる。

 そして思い出すのは昨夜の俺を婚約者候補から外したマルグレーテのことばかりだ。


(やはりマルグレーテも前世の記憶があるのか…?)


これまでもそうだった。

他の者は変わらないがマルグレーテだけが前世とは全く違う行動をしていた。

 まず最初に違和感を感じたのは俺に対する行いだった。

 この国に来た当初は前世と同じく祖国が用意した王都郊外のボロい家に住んでいたが、すぐに防犯上の理由だといって王宮近くの立派な屋敷に沢山の使用人と護衛と家庭教師まで用意された。

マルグレーテの指示だと言う。

 そしてその礼を言うため訪れた王宮で会ったマルグレーテは、きつく巻いた髪にド派手な化粧と大人っぽいドレスを着て、

「あなたにわざわざお礼を言われるほどのこともなくってよっ。」

とツンツン言い放ち、前世とは性格も見た目も違っていて驚いた。

今、小説とかで流行りの悪役令嬢みたいだが、でもそんな姿もなかなか似合うし、俺にしたらますます子猫が精一杯毛を逆立てているみたいで可愛いだけだった。


 一年後、そんなマルグレーテはエコールサンク学園に首席で合格し、俺も次席だったのでこれも前世とは違っていた。

 そしてマルグレーテは在学中にその優秀さを認められ国政に参加する。

按察官(アエディリス)」と呼ぶ優秀な側近二人を重用し、次々と目覚ましい法案を成立させていった。

 まず一つ目は、国境や港に新しく検疫所を設けて外国から入る物品や人を厳しく管理して取り締まる。

まるでこの先の未来で起こる蝗害や伝染病を予期し未然に防ぐためのような見事な政策だった。

 その検疫所設置の余剰効果で密輸や犯罪率が低下した事もあり、大胆に国内のスラム街解体や貧民救済に着手し、インフラ整備も行った。

それに加えて救護院と孤児院を国営化し、庶民向けに無料で通える学校や職業訓練所を開設して職を斡旋する施設も作った。

 使える人材を育成することによりこれからのこの国がますます発展していく基礎を作った訳だ。

 それとともに、前世でも悪評が高かったり裏で悪事に手を染めていた貴族達を按察官を使ってかなり力技で糾弾しているようだ。

マルグレーテが女王となる頃にはだいぶゴミは綺麗に片付いていることだろう。

いつもの黒い扇を手に高笑いしているマルグレーテの姿が目に浮かぶようだ。


 そして最後にマルグレーテが行ったことが俺を婚約者候補から外したことだった。

 前の人生ではマルグレーテは俺のことが好きだったはずだ。

リリーナに嫉妬するほどに。

それで選ばれて婚約者になったがなぜか結婚はしなかった。

きっとそのせいで、この国を我が物にできなくて焦ったリチャードが密かに俺に刺客を差し向けたのだろう。

クロワルド王国のせいにして責任を取らせる口実のために。

 そしてこれは推測だが、俺が死んだ後に祖国が、蝗害や伝染病で国力が低下していたこの国に戦争を仕掛け、その後にマルグレーテの命を奪ったのだろう。

あの腐ったヤツならやりそうなことだ。

 それでマイヤの言っていたあの伝説が本当だとしたら俺の命を代償に俺の愛したマルグレーテの命の危機に時が巻き戻ったと考えられる。


 そして今、俺達は二度目の人生を生きている。

マルグレーテも前世の記憶を持っているはずだ。

だから恐ろしい未来を回避するために前とは違う行動をし、俺に対する冷たい態度も婚約者候補の契約を破棄することにも納得がいく。

俺が殺されて、このクロワルド王国と自分自身が滅ぶ恐ろしい未来を変えるためにと。

 そう考えると一人で頑張っているマルグレーテの思いに胸が痛んだ。

自惚れでなければ()()もマルグレーテは俺のことを本当は嫌ってないと思う。

でなければいろいろと俺のことを気に掛けたり、ましてわざわざ婚約者候補を大勢の前で破棄したりしないはずだ。

まあ、リリーナのことを今回も勘違いされている気はするが。

 だから俺も前世の記憶を思い出してからは、これから起こる恐ろしい未来を変えるために俺ができることを精一杯頑張ってきたつもりだ。


 そして今、俺は最後にやるべきことの為に祖国(くに)へ帰る。

予定よりは少し早かったが、準備は整っている。

全てはマルグレーテとの幸せな未来を掴むために。





次回も本編では語られなかったエリオットの物語です


お読みいただきありがとうございます。

不定期投稿になりますがよろしくお付き合い下さいませ。

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