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〇〇しないと出られない部屋?

「リリアム・スロインド」


「…………何でござろうか?」


「しっかりと俺と目を合わせてみろ」


 リリアムはその言葉を無視して、オーウェンから顔を逸らしている。


「まあ、いいが……ここは何処なのか教えてくれないか?」


 チラッと彼の方に視線を向けると、にっこりと微笑んでいた。今までに見たことがない笑みにリリアムは頬を染めるどころか血の気が引いたように青ざめた。何故なら、顔は笑っているのに目が全く笑っていないからだ。


「ヒッ!」


「もう一度聞くぞ。リリアム・スロインド……ここは何処だ?」


「こっここは……」


 少し前に遡る。学園生活にも慣れ始めていたリリアムは廊下を歩いていた時だ。


「リリアム」


 穏やかな声で名前を呼ばれ、振り返るとそこに立っていたのは自身の姉であるヴィヴィアンである。その表情は女神のように綺麗に笑っているのに、リリアムを見る瞳は冷めていた。その理由がわからず、彼女の登場に思わず引き攣った笑みを返してしまった。


「ねっ、姉さん? どうしたんですか?」


 廊下の人の目があるので、表の顔で接したリリアムにさらに笑みを深めたヴィヴィアンは手招きをした。


「話があるのだけれど……今、大丈夫かしら?」


 その言葉はこちらの予定を聞いているようで有無を言わせなかった。そのため、リリアムの答えはイエス以外の選択肢はない。


「だっ、大丈夫です」


 その言葉に彼女は「ありがとう」と微笑んだ。そんな彼女に周りは黄色い声を上げた。しかし、リリアムの心は悲鳴を上げた。


 そして、二人して空き教室へと入った。勿論、誰もいない事を確認した上で、ヴィヴィアンは防音魔法をかけた。


「姉上は相変わらず、魔法が得意のようで」


「当たり前よ。私の努力の成果だもの」


 ヴィヴィアンは幼い頃から魔法に対してずっと、ひたむきに努力していた。リリアムは魔力が少ないため、彼女とは違い、剣術の方に力を入れた。


「そんな事よりも愚弟」


 ヴィヴィアンは凄まじい表情でリリアムの肩に手を置いた。その事に恐怖して後ろに下がろうとするが、彼女はそれを許さなかった。


「貴方……ずいぶん、学園生活が楽しそうね」


「えっ? どう言う事でござるか? 確かに、某の学園生活はつつがなく送ることができているが……」


「無自覚⁈ 無自覚でBL展開! 我が愚弟ながら、なんたる快挙」


 肩を勢いよく揺さぶれるが、リリアムには自覚が全くない。と言うよりも、BL展開など望んでいないのだ。


「あっ、姉上!! 某はBLなどしていないでござるよ!」


「何を言っている! クラスでヒロインの弟がまるで護衛騎士のように側にずっといるらしいじゃないか!」


「それは……周りが勝手に言っているだけで……某達はただの友達である」


「ああ……同じクラスなら良かった……。それに、愚弟達は同室な関係……壁になって二人の様子を間近で見たい……間近で……間近で?」


「あっ、姉上?」


 様子がおかしい彼女にリリアムの表情は引き攣ってくる。何となく良くない気がするからである。


「よし! 愚弟。今日の放課後にヒロイン弟を呼び出せ」


「…………はっ?」


「そうだな……この空き教室だ。頼んだからな。愚弟!」


 それだけ言うと、佇まいを直した彼女は教室から出て行った。その時の彼女はもう猫をかぶっている。


「ねっ、姉さん!!」


 急いで彼女を追いかけたが、微笑みながら追い返さらた。リリアムに拒否権はないのだと改めて痛感した。


 そして、現在である。空き教室にオーウェンを連れて来たまでは良かった。その後が問題なのだ。中に入った瞬間に鍵を締められた上に教室が真っ白な空間に変わった。きっと、幻影魔法だろう。そんな高度な魔法を使える人間は限られている。きっと、姉上の友人だろうとリリアムは予想した。彼女の側には彼女同様に腐った友人が存在している事をリリアムは知っている。


「リリアム・スロインド。早く答えてくれないか?」


 答えも何も、姉が無理やり実行した『〇〇しないと出られない部屋』である。部屋は空き教室のままなので扉を剣で切るだけで出られるとは思うが……学園の備品を壊すわけにはいかない。そのため、リリアムはオーウェンに何と答えるか迷っていた。


「リリアム・スロインド」


 声色から彼が怒っている事が伝わってきたリリアムは焦った。


「…………ふっ、二人きりになりたかったんだ」


 咄嗟に出た嘘だった。そうでも言わないと、この部屋の説明をさせられる。いや、説明しても良かったのではないか? 言った後に後悔した。


「なっ⁈」


 リリアムのそんな考えなど思ってもいないオーウェンは顔を真っ赤に染めた。


「べっ、別にここじゃなくても寮で二人きりになるだろう」


 それもそうだ。某達は同室。オーウェン氏には嘘だとバレているのだな。


「オーウェン氏。申し訳……」


 謝ろうとした時だった。上から一枚の紙が降ってきた。その紙をリリアムが取る前にオーウェンが手にし、目を通した。


「…………はっ?」


 きっと、姉上の事だからBL展開的な事を書いてるでござるだろうな。


 そんな事を思いながら、オーウェンの隣に立ったリリアムは彼の手の中のものを覗き込もうとした。しかし、そうする前に彼が問いかけてきたのだ。


「この紙も……お前の仕業なのか?」


 実際には姉のせいなのだが、彼女とは姉弟なので自分のせいでもあると思って頷き返した。


「…………はあ⁈」


 だが、彼は先程よりも顔を真っ赤に染めた。そんな彼の様子を見ながら、そんな変な事でも書いていたのかと改めて紙に書いている事を読んだ。


「お互いに抱きしめ合いなさい」


「声に出して読むな」


 紙を顔に押し付けられた。ひどいでござる。


「しかし……簡単なお題でよかったでござる」


「…………お前が考えたものじゃないのか?」


「そっ、某であって、某ではない。そっ、そんな事よりも早くハグしましょうぞ」


 深く突っ込まれたくなくて、両手を大きく広げて、彼が来るのを待った。だが、彼は大きく目を見開いたまま動かない。


「オーウェン氏? 何をしているでござるか? 早くきてくだされ」


 早く終わらせたくて、首を傾げながら、彼の名を呼んだ。


「オーウェン氏?」


「………………」


 彼は口に手を当てて固まった。彼の目にはリリアムが可愛く見えている。相変わらず、リリアムの顔に弱い。それに、普段のリリアムの様子からは考えられない行動にオーウェンの心臓は痛いほど跳ねていた。


「ねえ……早く」


 その言葉にオーウェンの何かが切れた。そして、ゆっくりとリリアムに近づくと、そのままギュッと抱きしめた。


「オーウェン氏って……イケメンなだけあっていい匂いでござるな……」


 それに、筋肉質でござる。その上、いい身体。某ももっと、筋肉がついたらいいのに……。


 そんな思いのリリアムとは違い、オーウェンは固まっていた。想像していたよりも柔らかい身体に鼻に香るのは女子のような甘い香り。それに、頬に当たるフワフワの柔らかな髪……離れたくなくて抱きしめる腕に力が入った。


「おっ! もう、いいでござるな」


 ヒラヒラと上から白い紙が落ちてきた。そのため、リリアムはオーウェンから離れようとしているのに、彼が一向に離れない。


「オーウェン氏? オーウェン氏ったら!!」


 彼の背中をバンバンと叩くが彼は離れてくれない。それどころか、さらに抱きしめる腕に力が入った。

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