仲が良い……?
オーウェン・コーランは男爵家の長男として生まれた。そんな彼には双子の姉がいる。マリー・コーランだ。オーウェンと同じミルクティー色の髪はふわふわで同じ色の瞳はパッチリと大きく、可愛らしい顔立ちをしている。そのため、男爵領でマリーは有名人だった。ただ、容姿が可愛らしいからだけではない。彼女は稀有な光魔法を使えたのだ。しかし、それで威張るような彼女ではない。むしろ、魔法なんてと言う感じだ。だが、見た目と違って性格は男勝りだった。幼い頃はオーウェンの方が病弱で身体も弱かったので、姉は男に、そして彼は女の子に間違われていた。だが、そんな彼女はオーウェンの面倒をよく見ていた。
「オーウェン。よく聞いて! 貴方は元気になって学園に通うのよ! 私の代わりにね!」
「俺には無理だよ……」
「無理じゃないわよ! 私が貴方を強くするんだからね! それに、私は学園に通わずにダンと結婚するんだからね!」
そして、その言葉通り、オーウェンは身体が丈夫になり、それどころか剣の腕も強くなった。そのため、マリーに代わって学園に通う事になった。しかし、その事によってオーウェンの生活がガラリと変わるなど思いもよらなかった。
「オーウェン氏ってさ、学園には何を学びに来たの?」
リリアムは紅茶を飲みながら、机に向かって勉強をしているオーウェンに話しかけた。
「……俺はお前の隣の席だが?」
「そうだね。マリーたんの代わりにね。じゃあ、将来は騎士団? あっ! オーウェン氏も某が入れた紅茶でも飲む?」
「紅茶はいらない。騎士団も目標だが……俺の家は男爵家だ。父親がお人好しすぎてお金が足りない上に没落寸前に近い。だから、どこかのお金持ちと結婚するために来た」
うわぁ……ゲームの原作のマリーたんと一緒の理由。流石、双子……。
「と言うのは建前だ。マリーが絶対に学園に行けと言ったからな」
「ええ⁈ マリーたんが? というか、マリーたんの話をもっと聞かせてくだされ!」
一気にオーウェンに詰め寄ったリリアムの頭を彼は掴んだ。
「変態は俺に近づくな」
「へっ、変態⁈ 某、これでも一応は公爵家の人間ですぞ!」
その言葉に彼は一瞬固まった。リリアムがまさか公爵家の人間だと思わなかったのである。
「某の名前、知ってる? 某、リリアム・スロインド。スロインド公爵家の次男でござるよ」
「…………それがどうした?」
そんな事を言ってはいるが、頭を掴む手は震えていた。
「声が震えているでござるよ」
「ああ? 俺の声は震えてない」
「某、金持ちである」
「…………リリアム・スロインド」
まさかのフルネーム呼び。それに、頭を掴んでいた手が離れた。そして、その手はそのまま目の前にやって来た。
「これからも仲良くしよう」
凄まじい手のひら返しである。だが、リリアムは目の前の彼はマリーの弟というフィルターがかかっている。しかし、それだけではない。本性を晒せ出せる事ができる貴重な一人のため、その手を握り返した。
「こちらこそ、よろしくお願いしますぞ!」
二人は熱い握手を交わした。それが数日前の事だ。
「リリアム・スロインド」
そして、現在のオーウェンとリリアムは見た目には良好な関係を築いているように見える。何故なら……。
「リリアム様! オーウェン様が来られましたよ」
「リリアム様! 良かったですね」
「……そうですね……」
「では、我々は離れておきますので」
そして、リリアムの周りはいなくなり、オーウェンだけが残った。
そうなのだ。オーウェンと共に過ごすようになってから周りから変な気を使われるようになったのだ。
「見てください。リリアム様とオーウェン様がいるわ」
「並んでいるとまるで絵本の騎士とお姫様のようですよね」
「お似合いのお二人です」
そんな言葉が聞こえてくるのだ。やめてくだされ。某はマリーたん一筋である。
「オーウェン氏。某、周りから嫌われているかもしれないでござる」
「それはないだろ。取り巻きはお前のご機嫌を取ろうと必死だし」
「取り巻きじゃないでござるよ。この容姿に想いを馳せているだけでござる。某でいうマリーたんのように」
「リリアム・スロインド。俺の姉をマリーたんと言うのはやめろ。鳥肌が立つ」
「オーウェン氏はシスコンですからな」
「……変態見た目詐欺野郎が……」
「トゲトゲ言葉反対でござるよ」
「…………」
オーウェンはジッとリリアムを見た後に何も言わずに席についた。
「……気難しい奴でござるな」
こんなやり取りは日常的によくある会話である。だが、結局はオーウェン以外、素の自分で話すことができないリリアムは彼にすぐに謝るのだ。
「オーウェン氏……怒った? 先程はごめんである。某の事をBL要素で見る目に耐えられず、八つ当たりしてしまったでござるよ……」
オーウェンの机の側でしゃがみ込み、彼の顔を下から覗き込んだ。眉が下がっており、まるで子犬のような表情に彼は心臓を抑えた。
相変わらず、オーウェンはリリアムの顔に弱かった。性格はアレなのにと思いながらも、彼はいつもリリアムを結局は許すのだ。
「…………わかった。それよりも、次は剣術の授業だろ。移動するぞ」
その言葉に嬉しそうに立ち上がったリリアムは先ほどの表情とは異なり笑顔になった。周りはその笑みを見た瞬間に心臓を抑えた。
「リリアム様……可憐です」
「相変わらず、天使のようだ……」
そんな彼らの様子を見たオーウェンは無になった。何故なら、リリアムは自分以外にも笑顔を振り撒く男なのだと改めて感じたからだ。
「オーウェン氏……初めての剣術授業だからと緊張なさってますな〜」
彼の側で小さな声で話しかけたリリアム。だが、オーウェンはそんな彼に深いため息を吐いて、そのまま無視をして歩き始めた。
「ツン? ツンデレでござるか? デレが少ないツンデレは良くないでござるよ」
そんな事を言いながら、リリアムはすぐにオーウェンを追いかけた。そんな彼らの様子に周りは暖かな目を向けた。
「やはり、仲が良いですね」
「羨ましい限りです」
そんな彼らの会話が聞こえていないリリアムは早足で前を歩く彼に追いつくのに必死であった。




