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モフモフ猫魔獣に転生した私は、イケメン公爵にモフモフ可愛がられるだけのスローライフが待っていました。【連載継続】  作者: 逆立ちハムスター


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番犬ロボの反乱と、逃げられない社畜猫の罠

アランダ夫人の「犬化計画」は、ついに屋敷のセキュリティにまで及んだ。


「レオ、カトリーナ。猫なんて暗闇で目が光るだけで、肝心な時には逃げるだけよ。これからは、辺境の最新技術を投入した『魔導番犬ガード・ドッグ』を配置しますわ」


彼女が持ち込んだのは、重厚な石材で造られた無機質な犬型の石像だった。それが玄関、廊下、そして庭の要所に、まるでガーゴイルのように鎮座している。

だが、この石像にはアランダによる「悪意ある初期設定」が施されていた。


「ワン! ワン! ワン!! フシンシャ、ハッケン! フシンシャ、ハッケン!!」


私が廊下を一歩歩くたびに、石像が真っ赤な眼光を放ち、鼓膜を突き破らんばかりの爆音で吠え立てるのだ。アランダは「あら、聖獣様を不審者と認識してしまうなんて。やはり猫には『主人のオーラ』が足りないのかしら」と、扇子で口元を隠して優雅に笑っている。


(……うるさいわね! 自分の家で一歩歩くたびに警報が鳴る猫の気持ちを考えなさいよ!)


アランダは、猫に複雑な魔道具の操作など不可能だと高を括っている。だが、彼女は知らない。私の前世が、複雑なデジタルパスワードと二段階認証を毎日こなしていた「ITリテラシーの高いIT社畜」であったことを。


深夜。

私は暗闇に紛れ、得意の肉球消音で物音を立てずに石像の裏側にこっそりと回り込んだ。

そこには、バネ式のメンテナンスパネルが隠されている。私は肉球の柔らかな感触を活かし、前世で培った「不具合のある自販機を叩いて直す」くらいの直感でパネルを開け、内部の魔力回路へとアクセスした。


(……このスイッチが『認識対象』で、こっちのダイヤルが『感度設定』ね。丁寧に書いてくれていて新説ね。……よし。認識対象を『アランダの魔力波長』に、音量を『最大マキシマム』にセット!っと)


翌朝。

優雅に寝室から出てきたアランダ夫人が、廊下の石像の前を通りかかった瞬間――。


「ワワワワンッ!! ギガ・ワンッ!! フシンシャ! 極・不審者デス!! 排除セヨ!!」


屋敷を揺るがす大音響。石像はアランダに向かって猛烈な勢いで威嚇を始めた。

「なっ、なにごと!? こ、故障!? セドリック、早くこれを止めなさい!!」

「は、はい! ただいまっ!!」


アランダがパニックに陥る中、私は近くのチェストの上で、これ以上ないほど優雅に毛繕いをしていた。

結局、アランダは「……ステラが何かしたのでは?」と疑いの視線を向けてきたが、証拠など一切ない。あまりの騒音にレオヴィルやカトリーナからも「母上、ステラが怯えるので撤去してください」と苦情が入り、番犬ロボは一日で粗大ゴミへと変わった。


────


そんな折、王宮から衝撃の報せが届く。

「猫バカ王」ことフェリクス王が、アランダ夫人の帰還を祝う(という名目で私にに会いに来る)ために、電撃訪問するというのだ。メイド達が騒ぐのでまた何か始まったのかと思ったけれど、いつもの気まぐれ訪問だった。


アランダは鼻息を荒くしていた。

「ちょうどいいわ。陛下に直接、犬がいかに忠実で、国を護る防人として相応しいペットかをプレゼンしてやるわ。猫にうつつを抜かす今の王宮を正して差し上げなくては」


数時間後、王宮の馬車が到着した。

出迎えたアランダは、最高級の礼法と共に、まずはガルムを王の前に引き立たせようとした。


「陛下、辺境の誇り、勇壮なるガルムをご覧……」


「おおお! ステラアアアアア!! 会いたかったぞ! 今日は新作の『またたび入り王冠』を持ってきたぞ!!」


フェリクス王はアランダの言葉を光速でスルーし、私に向かってダイブしてきた。アランダの表情が凍りつく。彼女がどれだけ「犬の忠誠心」を説いても、王の耳には「ステラの可愛い鳴き声」もとい、猫猫猫猫しか届いていない。


「……陛下、犬は、主人のためなら命を……」

「そうかそうか。ステラ、今日は毛並みが一段と輝いているな。公爵夫人もそう思うだろう?」

「……ええ。ですが、犬の方が……」


次第にアランダの顔にイライラが募り、空気がピリつき始めた。

(……まずいわね。アランダ夫人が爆発して、王様に『犬派パンチ』でもお見舞いしたら、公爵家が取り潰されちゃうわ)


私はここで、究極の「平和的解決法マウント」を思いついた。

私はわざとらしくアランダの足元に擦り寄り、彼女の手を肉球で優しく、しかし確実な誘導で王の動線上へと導いた。


王が「ステラを撫でさせてくれ!」と手を伸ばした瞬間、私は巧みに身を翻し、アランダの手がちょうど私の頭の上に重なるように配置した。


「おお……! なんということだ!」

フェリクス王が感極まった声を上げる。

「公爵夫人、君もステラをこれほど慈しんでいたのか! 君の手から、ステラへの溢れんばかりの愛を感じるぞ! 犬派の君をも虜にするとは、ステラはやはり、この国の平和の象徴だ!!」


「あ、あら……? ええ、まあ……シッ、離しなさい、この毛玉……!)」


アランダは必死に手を引こうとしたが、王のキラキラした瞳、そして周囲のメイドたちの安堵のような「なんて微笑ましい光景だ」という視線の圧力に、引くに引けなくなっていた。


「素晴らしい! さあ、もっと撫でるのだ! 予と一緒に、ステラのこの究極の毛並みを堪能しようではないか!!」


ここから、アランダにとっての「公開猫可愛がり刑」が始まった。

王の熱い視線を浴びながら、彼女はひたすら、私を優しく、愛おしそうに撫で続けなければならなかった。


(……ふふん、いい手つきね。アランダ様、右耳の裏が少し痒いの、そこもお願い。……ほらほら、王様が見てるわよ? もっと笑顔で!)


アランダは顔こそ完璧な貴婦人の微笑みを浮かべているが、その瞳は燃えるような怒りで私を睨みつけている。

しかし、彼女が私を撫でれば撫でるほど、王の満足度は上がり、公爵家の安泰は確固たるものになっていく。


私は、アランダの膝の上で最高にリラックスした「ドヤ顔」を決め、彼女の美しく整えられた指先が、いつの間にか「猫を喜ばせるツボ」を完璧に捉え始めているのを、心の中で大爆笑しながら楽しむのだった。


王が満足して帰った後、アランダ夫人は魂が抜けたような顔でソファーに沈み込んでいた。その指先には、まだ私の「モフモフ感」が残っているようだ。


「……負けたわ。まさか、陛下を味方につけて、わたくしに猫を愛でさせるとは……」


(……負けを認めるなら、今のうちに『ドッグラン』の計画、縮小してくれないかしら?)


だが、アランダ夫人はただでは起きない。

彼女は自分の指先を見つめ、何やら不穏なことを呟き始めた。


「……あんなに撫でてしまった以上、わたくしの指は、もう猫の柔らかさを知ってしまった……。ならば、次は『犬の逞しさと猫の柔軟性を兼ね備えた、新型のキメラ・ペット』を開発させるしかないかもしれないわね……」


(……お願い、普通に犬を愛でていてよ!!)


犬派と猫派の戦いは、アランダ夫人のよからぬ「新たな執着」という、斜め上の方向へと進化を遂げようとしていた。

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