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モフモフ猫魔獣に転生した私は、イケメン公爵にモフモフ可愛がられるだけのスローライフが待っていました。【連載継続】  作者: 逆立ちハムスター


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氷上の妖精と禁断のマフラー

少しばかり暑くなってきた、今日この頃。王都の暑さで肉球が湿る日も増えてきていた。


「……やりすぎよ。せめて室内にしてほしかったわね」


公爵邸の庭園に、突如として銀世界の異界が出現した。

レオヴィルが「ステラに涼を届けたい」という一心で、超高級な魔道具と氷魔法の術師を総動員し、広大な庭園の一部を「永久凍土スケートリンク」に改造してしまったのだ。

魔法の障壁で冷気は閉じ込められ、空からは人工の雪まで舞っている。


(……涼しいを通り越して、肉球がキンキンに冷えるわ! でも、これだけの施設を作らせておいて完全スルーは、元社畜として良心が痛む……。仕方ない、一滑りしてあげるわよ)


前世の幼少期、少しだけフィギュアスケートを習っていた私の経験が、猫の驚異的な身体能力と融合した。

氷の上を滑る感覚は、存外に心地よい。私はリンクの中央で軽く加速し、勢いよく宙を舞った。


(えいっ! シングル……いや、今のひねりならトリプルいけたかしら!?)


着氷した瞬間、観客席(という名の庭のベンチ)から割れんばかりの拍手と悲鳴が上がった。モフり聖天教信者の貴族達といつもの2人だった。


「ああ……!! ステラが、氷の上で精霊のように舞っている! なんという美しさ、なんという躍動感!」

「兄様、感心している場合ではありませんわ! 私たちもあの中に入り、ステラと一緒に銀世界の住人となるのです!」


二人は即座に、お抱えの職人に「即席のスケートシューズ」を持ってこさせた。

カトリーナは軽やかな冬のドレスに身を包み、不慣れながらも可憐に氷を蹴り出す。

一方、レオヴィルは……。


「……兄様。なぜそのスケートを履くのに、全身フルプレートの鎧を着込んでいるのですか?」

「転倒して、万が一にも氷に傷をつけ……いや、ステラにぶつかって怪我をさせては困るからな」

「重すぎて氷が割れますわよ! それに滑れませんわ!」


カトリーナのツッコミを無視し、レオヴィルは生まれたての小鹿のように鎧をガシャガシャと鳴らしながら、必死にバランスを保っていた。

私はそんな二人を尻目に、バク転を混ぜた連続ジャンプを披露する。


「ブラボー! 聖獣様の四回転跳躍(?)に栄光あれ!!」


ひとしきり楽しんだものの、人間である二人の体温は限界を迎えていたようだ。ガタガタと震え、鼻を赤くした二人は、後ろ髪を引かれる思いで屋敷へと引き上げていく。

私は「私は大丈夫だから」と肉球でサインを送り、一人リンクに残った。


すると、二人の気配が完全に消えた瞬間。茂みからギル、モグ、ララ、そして数十匹のギルメン猫たちが一斉に飛び出してきた。


「おい、待たせたな。冷気を楽しませてもらうぜ!」

ギルは慌てふためきながらも氷に爪を立てて走り回り、モグは「これ、お腹で滑るのが一番楽だよぉ〜」と、まるでアザラシのようにリンクを滑走していく。ララは意外にも体幹が強く、優雅に円を描いていた。


(……ふふ。やっぱり、みんなで遊ぶ方が楽しいわね)


その後も疲れるまで、ギルメン達と滑って、純粋に子供の頃のように楽しんだ。


夕暮れ時。

リンクの冷気で程よく冷えた私は、夕食のために屋敷へ戻った。

そこで私を出迎えたのは、ドヤ顔のレオヴィルだった。彼はまだ少し寒そうにしていたが、その首には見たこともない「真っ白なマフラー」が巻かれている。


「ステラ、見てくれ。これは君の日々のブラッシングで集まった『聖なる毛』を、最高級の絹糸と共に編ませた特製マフラーだ」


(…………は?)


「これでいつでも君の温もりを感じながら、リンクでスケートができるというものだ……。ああ、なんて柔らかい。まるで君に常に抱きしめられているようだ……」


(執念が怖いわよ!! 自分の『抜け毛』を大切に保管され、それを身に纏った男に抱っこされる猫の気持ちを、一秒でも考えたことある!? ホラーよ、それ!)


私は引き攣った顔で後退りしたが、そこにカトリーナが乱入してきた。


「兄様! 狡いですわ! そのステラの抜け毛……いえ、聖なる糸、半分は私の取り分ですわ! 今すぐそのマフラーを解きなさい!」

「断る! これは私が三日三晩、毛玉をほぐして準備したものだ!」


廊下でマフラーの端と端を引っ張り合い、醜い争いを始める公爵兄妹。


(……勝手にやってなさい。私はマフラーより、今は温かいミルクと美味しいおやつが欲しいの)


私は、抜け毛を巡る醜争を見捨て、ウルル(クッキー)を連れてキッチンへと悠々と向かった。

窓の外では、まだ猫たちが楽しそうに氷の上で踊っている。

公爵邸の初夏(?)は、まだ始まったばかりだった。

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