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モフモフ猫魔獣に転生した私は、イケメン公爵にモフモフ可愛がられるだけのスローライフが待っていました。【連載継続】  作者: 逆立ちハムスター


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激痛のポエムと石化の聖獣

「……あ、ハンス? 二股がバレて逃げるように転職したわよ。今頃別の街でまたお花を配ってるんじゃないかしら」


夜の集会でプリシラから聞いたリネットの恋の結末は、あまりに呆気ないものだった。リネットが傷つく前に解決したのは良かったが、人間の男の節操のなさに、私は月を見上げて溜息をついた。


だが、屋敷に戻った私を待っていたのは、別の種類の「節操のない愛」だった。


「聞け、カトリーナ。私はついに、ステラの愛らしさを全人類に知らしめるための聖典を書き上げた。これを王都の新聞、いや、近隣諸国の社交界にまで配布するつもりだ」


レオヴィルが鼻息荒く掲げたのは、一束の分厚い原稿だった。嫌な予感しかしない。


「……どれ、『この肉球は、暁の女神が落とした真珠であり、踏まれた者は楽園の門を叩くであろう』……。ふん、お兄様。相変わらず語彙が貧困ですわね」


カトリーナが冷笑しながら、自らの原稿を取り出す。

「私のはこうですわ。『その瞳は、宇宙の真理を映す黄金の湖。覗き込む者は己の魂の卑小さを知り、ただ跪くことしか許されない』。これこそがステラを表すに相応しいポエムですわ!」


(……やめて。お願いだからやめて!!)


私は全身の毛が逆立つのを感じた。


(このままじゃ、私の黒歴史が次々お全世界に配布されちゃう……! 阻止しなきゃ、猫として生きる前に『社会的な死』を迎えるわ!)


私は叫び声を上げながら机に飛び乗ると、レオヴィルとカトリーナの原稿を奪い取った。

「にゃああああーーーっ!(消え去れ、黒歴史めーー!!)」

そして、自慢の「沈み鉄木」で作られた最高級爪研ぎ(シュレッダー)に原稿を叩きつけ、一心不乱にバリバリと引き裂いた。


「おお……! ステラが私のポエムに触れ、あまりの感動に情熱的なダンスを踊っている!」

「違うわお兄様! 私のポエムを全身に取り込もうとして、自らの体に刻んでいるのですわ!」


(違う! 処分してるの! 物理的に消滅させてるのよ!!)


紙吹雪と化したポエムの残骸の中で、私は虚無の目をした。


翌日。昨日のポエムバトルの疲れもあり、私は「今日は一日、誰にも邪魔されずに寝る」と決意した。

だが、あのレオヴィルが私を放っておくはずがない。


そこで私は、先日カトリーナが試作で作らせていた「私にそっくりの等身大ぬいぐるみ」を、ベッドの布団の中に器用に配置した。


(よし、これで完璧。レオヴィルがこれに満足している間に、私はクローゼットの奥で本物のスローライフ(昼寝)を堪能させてもらうわ)


しばらくして、部屋にレオヴィルとカトリーナが忍び込んできた。

「ステラ、まだ寝ているのかい? ……おや?」


レオヴィルがベッドに近づく。私はクローゼットの隙間から息を潜めて観察した。

(さあ、気づきなさい。それは綿と布よ)


「……動かない。ステラが、一ミリも動かないぞ」

レオヴィルの声が震え始めた。

「カトリーナ……見てくれ。彼女の体が、まるで彫刻のように硬い……。これは、まさか……」


「……っ! まさか、私たちの愛が重すぎて、その尊さに耐えきれなくなったステラが、緊張のあまり『石化』してしまったというのですか!?」


(……はぁ!? なんでそうなるのよ!?)


「セドリック! 今すぐ国中の名医を、いや、石化解呪の専門家を呼び集めろ! 聖職者もだ! 我がステラが、愛の重圧で石になってしまった!!」


数十分後、屋敷は戦場と化した。

「石化の兆候はないようですが……」と困惑する対魔術王宮医師に、レオヴィルが「節穴か! この冷たい触り心地を感じないのか!」と怒鳴り散らしている。聖職者がぬいぐるみに向かって必死に祈りを捧げ、カトリーナは「私がドレスを着せすぎたせいで……!」と号泣し始めた。


(……罪悪感が……罪悪感がマッハで攻めてくる……!)


これ以上は国家予算の無駄遣いだと判断した私は、混乱に乗じてぬいぐるみをクローゼットに引き込み、自らがベッドに滑り込んだ。


「……にゃ、にゃーん(あー、よく寝たわぁ)」

私が大きなあくびをして伸びをすると、部屋中の人間が静止した。


「……解けた。石化が……解けたぞ!!」

「奇跡ですわ! ステラ、ステラあああ!」


レオヴィルとカトリーナが、文字通り私に飛びついてきた。二人の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。


(……ごめん。もう二度と影武者なんて使わないわ。……でも、少しは触って『これ、ぬいぐるみじゃない?』って疑う知性を持ってほしかったわね……)


私は二人の「愛という名の重圧」を全身で受け止めながら、またしてもスローライフが遠ざかっていくのを感じ、静かに白目をむくのだった。

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