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モフモフ猫魔獣に転生した私は、イケメン公爵にモフモフ可愛がられるだけのスローライフが待っていました。【連載継続】  作者: 逆立ちハムスター


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最高評議会の密談とリネットの恋愛相談

「……最高評議会? 何よ、その国家機密みたいな名前は」


ある日の夜。私はギルに誘われ、屋敷の裏庭を抜け、街外れの古い時計塔の地下へと連れてこられていた。そこには、ただならぬ威圧感を放つ二匹の猫が、月明かりの差し込む広場で待ち構えていた。


「おい、連れてきたぞ。我が公爵邸の『聖獣』、ステラだ」


ギルの紹介に、まずは巨体が動いた。

「……ほう、こいつが噂の白い天使か。俺様はドン。この一帯の荒くれ野良共を束ねている」

片目に深い傷を持つ黒猫・ドンは、モグが三匹分くらい入りそうな体格で、地響きのような声を出した。


「あら、可愛いじゃない! 私はプリシラよ。商人の家で退屈してたの。この評議会、むさ苦しいオスばかりで嫌だったのよね。歓迎するわ、ステラ様!」

ペルシャ猫のような優雅な毛並みのプリシラが、親しげに鼻先を寄せてくる。ギル曰く、彼女はこの街の「ゴシップ・クイーン」としての顔も持っているらしい。


(……最高評議会。一体どんな高度な生存戦略が話し合われるのかしら……)


私が緊張して身構えた直後、ドンの口から出た議題は、予想を斜め上に裏切るものだった。


「――では、本日の第一議題だ。パン屋の隣の家の騎士、昨夜、メイドにフラれて一人で泣いていた件について」


(……!? な、何それ、ただの近所の噂話じゃない!!)


ギルがクールに補足する。

「ああ。夜通し鼻をすすってたってな。情けない声で『行かないでくれ、マリアーヌ!』って。おかげで屋根の上がうるさくて寝れなかったらしい」


「いい話じゃないか」とドンが深く頷く。

「パン屋の隣なら、泣き疲れて腹が減ってもすぐに温かいパンが食える。……もっとも、砂を噛むような味だろうが」


「やっぱり!」とプリシラが身を乗り出した。

「昨日あそこの窓が赤く光ってたのは、暖炉じゃなくて彼の泣き腫らした目だったのね。ねえ、そのメイドってあの黄色い家のリンゴが好きな子? 詳しく聞かせて!」


「さあな。そこまでは知らない」とギル。

すると三匹の視線が、新参者の私に突き刺さった。

「ねえ、ステラはどう思う?」


(……私? 元人間の、しかも社畜だった私に聞く?)


私は溜息をつき、元社会人としての冷徹な視点を猫語に乗せた。

「……パンの香りと騎士のすすり泣き。最悪な朝食のBGMよね。そのメイド、よっぽど耳栓の性能が良かったのか、それとも……彼の愛の言葉が、賞味期限切れのパンより退屈すぎたのかしらね」


「「ギャハハハハハ!!」」


ドンとプリシラが腹を抱えて大笑いした。

「気に入ったぞステラ! お前、毒舌のセンスがあるな!」

ギルも「馴染めて良かったな」と、満足げに尻尾を振っている。


(……私が求めていたのは、こんな『ゴシップ週刊誌の編集会議』みたいなスローライフじゃないんだけど……)


私は月を見上げ、恒例の白目を剥きながら、猫たちの底なしの好奇心に戦慄するのだった。


翌日。屋敷に戻った私を待っていたのは、別の種類の「恋の悩み」だった。


「……ねえ、ステラ様。聞いてくださる?」


掃除の手を止めたリネットが、頬を赤らめて私に語りかけてきた。もちろん、ただの独り言のつもりだろうが、猫語(と人語)が完璧に分かる私には、筒抜けである。


「食材を運んでくる馬車の御者の、ハンスさん……。すごく優しくて、いつも私にだけ、こっそりお花を一本、添えてくれるんです。……これって、自惚れてもいいのかしら」


(リネット……。あんた、あんな爽やかそうな男に……はぁ〜、でも恋かぁ。この猫の体じゃあ、恋愛なんて無理ね)


私の脳内には、昨夜プリシラから聞いた「最新ゴシップ」が即座に再生された。

『御者のハンス? あの男はやめといた方がいいわよ。街の西側の酒場で、別の三人の女の子に同じこと言ってるのを見たわ』


(あー、その男はやめといたほうがいい! 典型的な浮気者よ!)

私は必死に「にゃーん!(ダメよ、そいつは!!)」と鳴いて、リネットのスカートを引っ張った。


「あら、ステラ様。応援してくださるのね? 嬉しい!」


(違う! 逆! 全力で制止してるの!!)


そこへ、窓枠に座っていたギルが辛口の助言を加える。

「あの男、靴の匂いが他のメスの匂いで混ざり合ってて気に入らねえ。信用するな」


さらに、パテを食べていたモグまでが参戦する。

「え〜? あの人、いつもポケットにおやつを隠して、僕にこっそりくれるから、すっごく良い人だよぉ〜」


(モグ! あんたは胃袋で人を判断するんじゃないわよ!)


「あの男は靴が臭い(ギル)」「おやつをくれる神様モグ」「三股かけてる詐欺師(私)」。

三匹三様の猫語が飛び交い、カオスと化す待機室。


リネットは「ふふ、みんなで私の恋を応援してくれてるみたい。勇気が出てきたわ!」と、キラキラした笑顔でバケツを持って去っていった。


(……だめだ。言葉が通じないって、こんなに絶望的なのね)


私は、リネットの後ろ姿を見送りながら、今夜の最高評議会で「リネット救済作戦」を議題に上げることを決意した。

……まあ、その前にレオヴィルに見つかったら、ハンスは物理的に消される(騎士団送り)になる未来しか見えないのだけれど。

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