勇者三人と里帰り2
思い立ったが吉日というわけでもないが、準備に一日使った後、帰郷が決まった話し合いの次の日にはもう故郷へ戻る道の上にいた。
往復のことを考えると時間的余裕があまりないのも理由の一つである。
「ミーアの故郷ってどんなとこなんだ?」
つまんなそうに両手を頭の後ろに組みながら歩いていたレオンがふと思いついたかのように問いかけてきた。
たしかに、どんなところか言ってなかったな。
「森のそばのそこそこ大きな普通の街だよ。おすすめはカジノと花街……」
あとは……あれ?実はお勧めできるようなまともな場所がなかったりする?
いやいやいや、よくよく思い出せ……僕がよく行く場所は花街とカジノと斡旋所、マフィアさんち、神殿、ラドの家、酒場……碌な場所がねえな。
「花街って何だ?」
こいつ女性になにを答えさせる気なんだろ。
これで本当にわかってなさそうな顔じゃなかったら蹴っ飛ばしていたかもしれない。
「お金を払ってかわいい女の子と遊ぶところ。僕の同期もそこにいるかな」
主題をぼかして投げやりに答えてやる。
ああ、シーアは元気にやっているだろうか。
「同期って同級生みたいなもんか」
「同級生みたいなもんだよ。レオンにはいなかったの‽」
「一緒に訓練していた女の子はいたけど鬼みたいな娘だったぜ。気に入らないことがあると全身から炎を出しながら殴ってくんだ」
「うわあ、それは怖いね」
怒ったら何も言わずに真顔で詰め寄ってくるシーアとはまた違った怖さだ。どっちがより怖いとは言わない。
聞いた感じどっちもどっちだし。
「でも、お金払ってまで女の子と遊んぶか?それに、カジノってギャンブルするとこだろ?何が楽しいんだ」
「女の子はともかくカジノは勝つのが楽しいんじゃない‽」
「じゃあ、負けえたらつまんないじゃん」
「だよねえ」
言われてみれば確かにそうだ。
確実に勝てる保証があるギャンブルならともかく、リスクのある勝負って何が楽しいんだろうか。
「じゃあ、楽しい場所ねえじゃねえかよ。あーあ、こんなことならホワイトの方について行けばよかったなあ」
「待って、待って、待って。レオンでも楽しめる場所あるから」
ここで引いたら沽券に係わる。
故郷の名誉は今僕の双肩にかかっているといっても過言ではない。
「他に何があるんだよ」
他に他にってああ、あれがあったか。
今回の帰郷でも運が良ければ見られるだろう。
「後のお楽しみにしといてよ。僕の故郷はすぐに見れるとして赤の国はどんな感じだったの?」
これ以上突っ込まれないように話題を転換しておく。
「喧嘩が多い街だったぜ。いつもどこかで喧嘩があって、結局ぶっ飛ばしたりぶっ飛ばされたりして乱闘になってばっかだった」
「何その世紀末な所」
つい言葉に出してしまった。
自由を謳ってる黒の国でもそんなカオスな状況になってる街はそんなにないはずだ。
でも、レオンの翳りのない明るい表情から街に活気があることが伝わってくる。
「レオンは参加してたの?」
「一回だけな。その喧嘩に乱入して強いやつを投げ飛ばしたらそのせいで天才だと言われてむりやり学校に行かされそうになったんだよ」
「ご愁傷様。でもよく勝てたね。強い人ってことはレベルも高かったんでしょ」
赤の国で強いともなるとたぶん戦士だろうし、絶対に相手の方が力が強かったろうに。
技量で考えてもレオンが飛び出してきた時期を考えると勝ちようがない気もする。
この世界ではレベルとその差によるステータスの差は大きい。
何しろ僕が何でもありの戦いでレオンに勝てなかった最大の理由は基礎能力の差だ。
僕の場合は種族による差のせいだけど、状況的には変わらない。
「通りががりに急に殴られそうになったから避けてから殴ってきた腕を掴んで習ってた一本背負いで投げ飛ばした」
それに力が強いということは速いということでもあるのだけど
何でそのパンチを避けられるの?
「どこを殴られるかわかってたの?それとも決め打ち?」
「決め打ちって何なのかよくわかんねえけど。パンチとか見てからよければいいだろ‽何言ってんだ」
「ふ、ふうん」
格闘にそんなスキルがあるのか素なのか漢のセリフなのか。
判別させたくない気もするが味方の強さは知っておいた方もいいだろう。
レオンと並んで歩けるように調節した歩幅を少しだけ狭くしてレオンの斜め後ろに回る。
歩く様子が可能な限り不自然にならないように踏み出した右足に重心を寄せてサッカーボールをゴールに向かって蹴るように左足をレオンに向かって振りぬく。
「おい急になにすんだよ」
「問答無用!!」
小さいジャンプで避けたレオンに対して今度は軸足を左に移して右足で後ろ回し蹴り、そのままもう一度右足で地面を踏みしめて左足でやくざキック、震脚の要領で地面を強く踏んで左手で拳打。
そのことごとくを避けられた。
剣を背負ってる分僕も遅いが、旅の荷物の大部分をレオンに持たせてるから速さ的にはイーブン。
防がれるとは思ったけど一発もかすりもしないとは思わなかった。
こんな至近距離での不意打ちを避けきる。
少なくともそんな芸当僕は無理だ。
だからいつもの接近戦のように攻撃できないように畳みかけたんだがそれでも何回も反撃のチャンスがあったこいつはその二段ぐらい上を行ってる。
「気が済んだか?」
不思議そうにのぞき込むなコンボが途切れただけだ。
剣を振る勢いと重心移動を使えばもう少しコンボが続くもんね。
荷物がなかったら空中コンボも増えるもんね。
本気じゃなかっただけだもんね。
「何急に黙って考えてんだよ」
でも、自分の中だけの勝負だとしても今回の負けは負けだ。
「レッドがいれば案外勝てそうだなあって考えてたんだよ」
もしかしたら、こいつは天才なのかもしれない。
結局蹴るという




