勇者三人と転機2
テーブルには水っぽいシチューが三皿と固いパンが三つ。
前世に比べればまずい食べ物でも地の底でありつく物としては上出来な部類だ。
これも層を下るたびに補給に金がかかるせいで物価が上昇していくのが大きな原因である。
「このまま未探索地域を探索してもいいんだけどなんかここに魔王いそうにないんだよね」
パンをシチューに浸しながら一緒に机を囲む二人に言葉を投げかける。
「むぐぐ、いいんならいいんじゃねえか?」
「そもそも魔王を探しに降りているわけではないですしね」
「……うん、ごめん。もっとはっきり言うと金銭的には効率が悪い。レベル的にもそろそろ頭打ちだよ」
これは純粋なパーティの金庫番からの意見だ。
僕ら限定だが実は未探査域は今日のように実入りがいいことが少ない。
それでも支出が減っているから金はたまっていくけど四層あたりの方が稼げるのは事実。
まだ仮定の域を出ないが、この世界でいうレアのドロップアイテムとはいわば可能性の前借で、可能性が低ければ低いほど、現在からの乖離が遠ければ遠いほどドロップがしにくくなる。
だから大量に狩られるのがこの街が完成するか、次の街ができるかを待たなければいけない未探査域の魔物はほとんど素材しか落とさないのだ。
さすがに希少な素材なので高いことには高いのだが今までと比べると効率が落ちてしまう。
「金銭にとらわれる必要もないと思いますが」
「今でも技術はともかくレベルだけで言ったら世界でもトップ層にいるからさ。これ以上レベルを上げるよりはまずは仲間や魔王の情報を集め始めた方が……」
上に行けばいくほどレベルが上がりにくい仕様上見切りをつける頃合いだと。
「残りの方たちが来るまでここで調べながら待つでいいではないですか。待ち合わせにここ以上に最適な場所はないはずです」
「レオンの例を見ると僕たちが来たのはこれでも遅い方だよ。これ以上待っても。ギルドの最高ランクの資料見ても何もなかったし」
伝説として何か残っていると思ったのに勇者や魔王という単語すら見つからなかった。
大きな期待はしていなかったがそれでも何かしら手掛かりが見つかるとまったく思わなかったわけではない。
「ではどうするのです?世界を回るのですか?そちらの方があなたの大好きな効率が悪いですよ」
「それでも、もう過半数集まってるわけで何か行動起こさなきゃと思うんだよ」
実際1人の時ならともかく、もう過半数の3人も集まってるんだから逆に迎えに行ってもいいタイミングだ。
「別にそれはいいのですが、具体的にはどこに向かうのですか?国をまたいで有名な場所はここ以外にないはずです」
で、結局はこの結論に至る。
「記憶的にはそうだよねえ。ねえ、レオンはなんかない?」
最初に発言してからパンをお腹に収める作業にいそしんでいたレオンに話を振る。
レオンは方針決定みたいな複雑な話し合いにはあまり関わってこない。
訳が分からない部分もあるのだろうがどちらかというと興味がないという部分が強い感じだ。
「何の話だ?」
「この世界に来てからここ以外に行きたかった場所はないかって話」
案の定これまでの会話を聞いていなかったレオンに端的に答えてやる。
聞きたかった部分だけだけどこれでいいだろう
「行きたかった場所はないけど……」
クルスと一緒に肩を落とす。
何かあれば儲けものぐらいの気分ではあったけど何もないと分かるのも少し残念だ。
「行きたくなかった場所ならあったぜ」
だが、その次の言葉で命を吹き返した。
「どこ?」
「学校」
もう一度肩を落とす。
黒の国ではどこの街も神殿で読み書きを教えるのが主流だったからか学校はなかった。
だが、5か国あるんだから学校がある国ぐらい一つあるだろう。
「この世界に来ても天才だっておだてて行かせようとするから困ったぜ。飛び出して来てやったけどな」
「この世界に学校なんてあるんですか?」
クルスの問いを聞くにどうやら白の国にも学校はなかったようだ。
「俺様も最初はないと思ったんだけどよ。この世界に来てからしばらく一人で修業してたら、ぱーぷる冒険者よーせい学校ってーのに入らねえかって言われた」
「なんでそんな学校あるの?」
少しだけ興味がわく。
なぜ、赤の国だけに学校があるのか分かれば何か役に立つかもしれない。
強い戦士を排出するからとかしょうもないオチの可能性もあるけど。
「なんでって言われてもわかんねえよ。でも、青の国の方にあるって言ってたぜ。優秀な冒険者を育てる場所なんだってさ。せっかく学校ない世界に来たんだから行くわけないっての」
「まあ冒険者養成とか今さらだし、この世界の学校に興味はあるけど行く理由はないかなあ」
「待ってください、今青の国って言いました!?」
クルスが多大な驚きとともに机を叩く。
シチューの入った椀が軽く机から浮くぐらいの衝撃だ。
「うん?その学校があるのは青の国だぜ」
「じゃあ、その学校に行きましょう!!それもすぐに!!」
「なっなんでそんなに驚いてんだ」
クルスが戸惑っているのが見える。
そう思っている僕も同じ気分だ。
「そりゃ目的地候補の一つだとは思うけど確定じゃない程度だし、そんなに驚くようなことだった?」
「レオンはともかくミーアまで気が付かないのですか?
レオンと同レベル扱いされた。
なんか納得いかない。
「気が付かないって何さ」
「例えばですよ、出発地点の近くにそんな学校があったら絶対に行くでしょう?」
「養成ってうたってるぐらいだから行くね。でも、それで5年も無駄にするかな。クルスの方の理由は知らないけど僕の場合は結構やむにやまれる理由があったんだけど」
本当に街から旅立つ許可をもらう為だけに四年ちょいかかったのは予想外だった。
途中でいろいろ楽しくなっちゃって旅立ちを延ばそうとしたほうは言い訳できないけど。
「私の場合もそんな理由です。ですが、他の人も同じような学校に通っていると思ったらどうでしょう」
頭にしみ込むように、それともパズルがはまっていくようにクルスの言いたいことが伝わって来た。
「お手柄だよ!!レオン!!」
「おっおう。漢だからな」
手を机に叩きつけながらシチューの椀を浮かす。
次の目的地は青の国の冒険者養成学校だ。
そこに青の勇者が確実にいる。
目線を落としてみればシチューに漬かったままのパンはふやけていた。
きゅーてんかーい
前語りがある特性上最悪の場合の調整が効くので、絶対にエタりはしないから大丈夫ですよ
そもそも学園編は次の章ですが




