勇者三人と転機1
正解は熱い男ハイレッドでした。
……知るか馬鹿野郎はないんじゃないかなーさすがに。
ヒントはなかったけどクラスを当ててもよかったのに。
その場合の正解は戦士拳士野伏。
ちなみに本人に絶対最後の語感で選んだろって突っ込んだら首を傾げられた。
ともかく、前衛二枚後衛一枚で役職で考えたら攻撃役2人に回復役兼防御役が1人。
バランスはいいとは言えなくても前よりは大幅にましになった。
それはそうと、もともと5年も準備に費やした僕とクルスはかなりの慎重派だったらしくレオンは1年でこの街までたどり着いていたらしい。
その後は上層の街ではなく下の街を本拠地にして依頼を受けながら4年かけながらゆっくりと降りていったらしい。
本人は依頼のことを人助けだと言っていたこともだけど、地図なしで降りていたと聞いて驚きより呆れが先に来たのは仕方ないことだと思う。
まあ、人助けを最優先にしていたために仲間ができず孤高のぼっちになっていたレッドもブラックとホワイトという仲間を得て絶好調。
野伏の索敵能力もあったレオンのおかげでスタブの最終層の街まで到達するのにかかった時間は全部で3か月ぐらいだったかな。
でも、とりあえずの目標がなくなって勇者としては絶不調だったけどね。
つまりは新しい目標を立てなければいけない時が来たということだ。
スタブ最下層の建設中の街、そのさらに下の地図も部分的にはできていない通称未踏破域。
ファンタジーの看板を背負うモンスターであるドラゴン五匹が先をクルスに争うように襲い掛かる様子は迫力がある。
先ほども閃光弾で仕切りなおさなければなし崩しに乱戦になっていただろう。
とうのクルスは冷静に、真剣にドラゴンたちが近づいてくるのを待ち構えていた。
「ホワイトは下がってろ。行っくぜ、レンジャーキーック」
待ちきれなかった一人がわざ名を叫びながら助走をつけて正面のタイニードラゴンに一発飛び蹴りを入れるレッドことレオン。
ドラゴンが強いのはファンタジー定番とはいえタイニーと名の付く通り人ほどの大きさしかないこのドラゴンは今までたまったダメージと助走までつけたレオンのクラス補正という名の不思議パワーが乗った蹴りに耐えられるはずもなく後ろに吹き飛ぶ。
ちなみにこの技はレンジャーとついているが野伏とは関係ない我流の技だ。
「ああ、囲まれますから、急に前にでないで……」
「フォローしておくよ。『ブレイク』19金貨」
衝撃波を放つ『ブラスト』がレオンを回り込んで背中に一撃を入れようとしたタイニードラゴンをひるませる。
その後に続けてレオンが放った後ろ回し蹴りが食い込むことであえなくクリスタルになった。
「サンキューなブラック」
「早く戻ってください範囲攻撃が来ます。『フェイスシールド』」
三匹のタイニードラゴンが連携して吐いてきたファイアーブレスをクルスが盾を掲げて支えダメージを抑え込む。
聖騎士の『フェイスシールド』の真価は範囲攻撃を防ぐところにある。
そもそも戦闘中に剣と盾を持つクルスは両手がふさがっており、回復する場合どうしても下級魔法になってしまうのが弱点だ。
そして、残念ながら下級魔法の『ヒール』は至近距離、具体的には接触によってでしか効かない。
結局ダメージを集めて自己回復することが一番有利となるのだ。
昔はクルスが後ろに敵を通さないことでどうにかしていた部分、要は距離を壁にしていた部分は前衛が増えたことで工夫や連携が必要になり、逆に僕が資金をなげうって無理やり補ってきた部分に本職が入ることで必要がなくなった。
3人になって出来なくなったこともあるが出来ることがより増えたのはこの3か月で実感したことだ。
本職の攻撃役が入ったことで生まれた僕の余裕は遊撃として活用することになったのもできるようになったこともその一つ。
レベルの上昇によって筋力が上昇したことで買った、より遠距離に届くようになった新しい弓を背中に背負い直し、体格的に考えるともう小さめの両手剣といってもいい大きさの軽量化の祝福のかかっている片手半剣を抜く。
「せいやー!!」
「レンジャーパンチ!!」
そして、剣を構えながらタイミングを計って『フェイスシールド』の途切れる瞬間と同時にレオンと一緒にクルスの左右から飛び出した。
向かって左の二体はレオンに任せながら、右端のドラゴンに両手で持った剣に加速をつけて叩きつける。
クラス補正がなくても物理法則によってある程度ダメージは期待できるのだ。
だが、本命はこの後にあったりする。
「29金貨一発!!」
タイニードラゴンの押しかえしの勢いで左足を軸に回転しながら剣を片手に持ち直し、腰から魔石を抜いて回転の勢いをままに横殴りに『アイアン・スピア』の魔石をたたき割る。
魔石から伸びた鈍色の槍がウロコを突き破りタイニードラゴンをクリスタルに変える。
左の方を見やるとちょうどレオンが二体のタイニードラゴンをのしたところだ。
二人だった時と違って僕が乱戦を好むレオンに合わせるように弓で誤射が生じそうなときは剣をもってお互いにフォローできる位置取りをするために積極的に前に出るようになったのが最も大きな変化だろう。
「パンパカパーン。祝福つきへヴィドラゴンメイルー。祝福は少なくとも軽量化じゃないみたいだね」
この竜鱗を使ったへヴィスケイルメイルはこのスタブの街では複合素材系の装備を除けばハイエンドな装備の一つである。
正確には僕がロップできるハイエンドな装備の一つ。
もちのロンのこと売値金貨1000枚は下らないこの装備は地上までかかるギルドの物品輸送の費用やバルドルさんの職人組合の手数料を通しても大幅に黒字だ。
まあ、帰りたい理由はこれを持ったまま戦いたくないからなんだけどね。
「さすがにこれをもって探索を継続するわけにもいきません。帰りましょう」
僕のアイコンタクトと言葉の含意を受けてクルスが探索を打ち切ることを提案する。
「えー、せっかく誰も来たことのないとこじゃん。もう少しだけ奥行こうぜ」
案の定徐々に幼い部分を見せるようになったパーティーリーダーのレオンはその提案に反対。
ほうっておいたら奥に一人で突撃してい行きそうだ。
そういえば、この三か月での三人の変化といえばもう一つある。
「引くべき時に引くのもまた……漢です」
「漢なら仕方ねえな」
それはクルスがレオンの操縦法を完全に会得したことだ。
最初はレオンに遠慮していたクルスも一か月が過ぎた頃にはレオンの本性を見抜き、今では名義上パーティーリーダーはレオンだが実質的にクルスがパーティーの方向性をきっちりコントロールしている。
ちょっといびつな形だが僕としては何も文句ないのでこのままでいっかなあと思ってる。
「よっし、じゃあ俺様に続け、ブラック、ホワイト」
もう一つ言うとこの三か月でレオンの僕とクルスの呼び名も固定された。




