黒の勇者と白の勇者とギルドという組織
では予定通り次の更新は月曜の夜になります。
あと前話が輪にかけてひどいのでいつか修正するかもしれません。
ある日、あなたは意気揚々と武器を携えて旅に出ました。
同じ目的を持つ仲間と出会ったかもしれないし、周りにその仲間との仲を勘違いされたかもしれない。
そして、今あなたはダンジョンがある目前の街にいます。
最初にあなたはどうしますか?
この質問になんて答える‽
武器や防具を揃える‽
確かに新しい街に着いたならそれは重要だね。
今まで使っていたものより性能がいい武器や防具が手に入るかもしれない。
まずはダンジョンの情報を揃える‽
万が一に対応することもとても重要なことだけど最初にと言われたら違うんじゃないかな。
勇んでダンジョンに突撃をかける‽
それは最後にすることだよね?
金策‽
二文字に悲哀が詰まっているね、でも残念。
その街のドンにあいさつに行く‽
いや、その言い方はないんじゃないかな。
……今までで一番惜しいけど。
正解は定番のあれです。
「異世界ファンタジーの定番だね」
「どちらかというと多人数用ゲームの定番ではないでしょうか」
斜めにさす朝日を背に背負った大きな扉を前に二人して立つ。
何人かちらちらこちらを見ながら扉に入っていくたびに漏れる熱気が確かに目的地なのだろうという確信を与えてくれる。
世界の傷と呼ばれるダンジョンを囲む『スカブ』と呼ばれる街について真っ先に向かうと決めた目的地がこの扉の奥にあるのだ。
「ここにずっと立っていてもしょうがないですし入りましょう」
異論はないので先に覚悟が決まったのか扉を押し開けるクルスの背に隠れるようにして続いて建物に入る。
そして、おっかなびっくり扉に入った僕たちを出迎えたのは爆発的な音の奔流だった。
「パーティー募集だ。目的は第1層の突破!!回復魔法つかえる奴求む」
「『岩』を狩りに行くわ。警戒系のスキル持ち2人。報酬は頭割り!!」
「誰か3階の魔物の構成詳しく教えてくれ!!変動後のギルドの図鑑がまだ更新されてねえのよ」
扉の外の活気が低かったわけではないが中の活気はそれ以上だ。
「んー、さすが冒険者の本場ってところかな」
人ごみをかき分けるクルスを見失わないように歩きながら嘆息する。
こんなに人口密度の高い場所は前世以来である上、耳が一般的な人間だった前世より敏感なため我慢できないほどではないが少し気持ちが悪い。
人が混む時間帯だったかもしれないが装備を見る限りここにいる冒険者はまだこの街の冒険者の中で中堅にも満たないのだろうから驚きだ。
「冒険者の新規登録をお願いします」
どうにかカウンターにたどり着いたクルスが止まったことで追いつく。
「2人分ね。あとパーティー登録もよろしく」
クルスの方を見て一瞬呆けた長耳のお姉さん相手にクルスの横からすかさず言葉をつづける。
僕を視界に入れたお姉さんは金縛りが解けたかと思うと一つため息を吐いた。
そんなため息つかなくていいよ。
たぶん想像している関係とは違うから。
中身気にしないならお姉さんにもチャンスはあるよ。
それにしても人工ものとはいえ罪なイケメンである。
信仰による祝福は魅力ではなかったはずなのに驚きだ。
「ええと、お二方とも初めてですよね。ご説明は一緒でよろしいですか?」
「大丈夫ですよ」
「うん、大丈夫」
ほぼ同時に応える。
受付のお姉さんからの説明。
実に素晴らしくロマンを感じる瞬間だ。
「詳しい規則はギルドの資料館にございますので後でご覧いただくとして、基本的には三つ覚えていただければ大丈夫です」
受付のお姉さんがピッと親指から人差し指、中指と三本立てる。
「一つ目。ギルドはランクで冒険者を分けております。もちろん高いランクの冒険者の方がギルドのサポートを受けやすくなっております。ここで登録できるのはランク1までです。ここまではいいですね?」
一つ頷く。
それを確認したのかお姉さんは話を続ける。
「では、それ以上のランクはどこで登録できるか。実は世界の傷の中にもいくつか中継用の街がございます。そこまで到達するとその町に相当するランクに登録できます。ランク現在では5つ目の街が建設中ですから最高のランクは5です」
ここで中指を折りながら続ける。
「二つ目。冒険者は魔物を狩るからこそ、この街の市民権を得ています。そこで冒険者には二つ義務が生じます。一つ目は緊急時の街の防衛戦力の招集。もう一つは一人あたり三日に一匹の最低限のノルマです。二つ目の抜け道はいくつかありますけど基本的にお高いのでおすすめしませんよ?」
ウィンクしながら人差し指を折る。
「三つ目。これが一番重要なのですがギルドは仕事の仲介もしております。我々はこれを便宜上依頼と呼ぶのですがこの依頼はギルドの名前を看板として出しております。つまり、契約を守らなかったらこうです」
どこか暗さを感じさせるいい笑顔で残った親指を横にスライドさせる。
「以上の3点に異議がありませんでしたらここに自分の情報とサインを。それで登録は完了です」
「異議はないけど一つ質問いいかな‽」
クルスがペンを受け取り空欄を埋めていくのを横目に見ながら話す。
「おや、何でしょうか?あっ代筆でしたらただで大丈夫ですよ」
「僕も文字は書けるから大丈夫。そうじゃなくて人を探したいんだけど今書いてる用紙って他人にも自由に見られるものなの‽」
もし可能なら資料室を見ることは他の勇者を見つける助けになるかもしれない。
「自分よりランクの低い方でしたら。でも、人探しだけでしたら協力できるかもしれません。その方のお名前はなんていうのでしょうか?」
「知り合いのの知り合いで名前はわからないんだ。同じ色の目と髪を持っていることだけはわかるんだけど」
「それではさすがに……」
結局はそうなるか。
あまりにも情報が少なすぎる。
名前も知らないのに探せるわけないのだ。
クルスと僕の共通項から考えるに髪の色と目の色、そして、近づけばわかるということだけ。
ステータスに勇者とか現れれば楽なのにそれぐらいのサービスすらないのだからひどい話である。
「ううん、大丈夫だよ。自分で探す」
「ミーアの分も埋めておきましたよ。サインをどうぞ」
クルスからペンをもらって自分の名前の部分を埋める。
ちらっと上のパーティー名の所を見ると『ファイブカラーブレイブズ』とあって思わず二度見する。
分かりやすいパーティー名は任せてくださいというクルスに名前などには興味がなくはいはいとうなずいたのは僕だがいくらなんでもこれは直球すぎる。
……直球すぎるけど目的自体は達成しているし任せるといった手前勝手に変えるのもなあ。
このパーティ名を有名にすれば確かにほかの勇者が集まってくれそうだし、天秤のもう片方にあるのは羞恥心だけか。
名前を記入した紙をお姉さんに渡す。
渡す時に少し手が震えてしまったのはご愛嬌だ。
「はい、では受理しました。『ファイブカラーブレイブズ』のクルスとミーアですね。あなたたちの前途に希望が満ちることを祈ってます」
「それで、どうしますか?」
「予定に変更なっし」
ギルドの門から出て質問してきたクルスに言葉を返す。
パーティーを集めようかという考えもあったがある程度下の階層へ行くまで二人で行こうというのだ。
もちろん危険性は上がるが一人当たりの経験値やあとでパーティーメンバーと別れることを考えるとなかなか誘えない。
もちろん一時的なメンバーを集ってもいいが今度は信用ができない。
というわけで最初の予定通りに行こうということなのだ。
「それにしてもいくらわかりやすいパーティ名だと言ってもあれはないと思うなあ」
任せるとは言ったが文句を言わないとは言っていない。
ちょっと愚痴ぐらいいいだろう。
「完璧なパーティー名だと思いますが。何かいけなかったでしょうか?」
目を見るに本心から言ってそう。
「そのまんま過ぎてダサいよ。特にファイブカラーってところはね」
「実は私もそこは不安だったのです」
そうなのか。じゃああえて目につくようなダサい名前にしたのかな。
そんなことを考えているとクルスは何でもないことのように納得しかけた思考を壊した。
「やっぱり『ファイブカラーゴッズブレイブズ』の方がよかったですか‽最後まで悩んだのですが覚えてもらえるように簡単な方にしようかと思いまして。」
「その方向で会ってるよ?なんで増やすの、減らそう‽懲りすぎててわけわかんなくなってる」
「そうでしょうか?」
「そうだよ」
まだ疑問符を浮かべるクルスに断定を返す。
さすがに納得したのかクルスは今度はしっかりとうなずいた。
「では今度から気を付けます」
僕も今度から君に任せないよう気を付けるよ。




