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蒼失の空_EndOfFurthest  作者: 秋久 麻衣
第一章_焼け堕ちた未来
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帰路


 追加の仕事、その後始末を終え、レオとリアはハーベルへ戻ってきた。

 そこでサインと追加の報酬を貰い、さっさと二人は集落を後にする。

 ハーベルの人々は喜んでいたものの、トラックに増えた《ゴブリン》の機影は見ないように努めていた。布で覆い、隠していたとはいえ。まともな人間なら、そこに人の死を感じ取るだろう。

 そしてまともな人間ならば、それが何よりの証拠となることを知っている。脅威は取り除かれたという、何よりの証拠だ。

 そんなハーベルを後にしたレオとリアは、トラックに揺られながら帰路に付く。

 ヘッドセットの向こうでは、ジミーが今も音を聞き、警戒を続けているだろう。

「出来ればバージョン違いの《ゴブリン》が良かった。あれ、武装パーツはそこそこ売れるから」

 話題はどうしても手に入れた戦利品の値踏みとなる。リアは端末をいじりながら、うーんと唸る。今はガスマスクを外しており、ころころ変わる表情が直接見えるようになっている。

「ダメだ。状態がいいだけの《ゴブリン》じゃ、どうやっても儲からない。赤字分の補填には利かないよ」

「やっぱり、そうか……」

 まあ、分かっていたことではある。それでもやはり、がくりと来てしまう事実だ。

「教会に請求出来ないの?」

「あいつら出し渋るからな。選考待ちで有耶無耶にされる。それに、今回は輸送中の戦闘じゃない。契約外だ」

 赤字の補填には、別途仕事を見繕うしかない。問題は、ちょうどいい仕事があるかどうかだ。うまく選ばないと、小競り合いの尖兵にさせられる。結果は先程見てきた通りだ。

「世知辛いねー」

 リアの呟きに、ほんとになとレオは返す。

 そこから先は、特にトラブルもなくトラックは走っていく。ハーベルから目的地まで、それなりの距離がある。途中でリアは欠伸をし、助手席で丸まって眠っていた。

 黙々と運転を続ける内に、だんだんと道が拓けてきた。セントラルシティ、通称教会通りに近付きつつあるのだ。

「リア、そろそろ」

 片手でぽんぽんと、丸まっているリアを叩く。何度かそれを繰り返すと、リアは唸り始めた。

「うー、もー。なに?」

「そろそろ教会通りに着く」

「……はーい」

 リアはもぞもぞと動きながら、ガスマスクとフードを被る。ここから先、自分達の拠点へ辿り着くまで。リアはこの顔で過ごす。

 荒れていた筈の道路が、少しずつ舗装路へと変わっていく。

「まず拠点に寄って、お前と《ゴブリン》を降ろす。ジミーと先に休んでくれ」

「……待ってるから早く帰ってきてよ」

 ガスマスク越しでも分かる。目を細め、不満げな表情をしているのだろう。

「分かってる。こいつを納品して報酬を貰ったら、それで今日は仕舞いだ」

 レオは苦笑しながら言う。リアはあの時より大きくなった。大きくなったとはいえ、こういう所は変わらない。

 進行方向に、壁と検問所が見えてきた。セントラルシティ、通称教会通りの外苑入り口だ。

「少なくとも、今日ぐらいは腹一杯食おう。貧乏になるのは明日からでいい」

「それはそうだね。良いことを言う」

 レオとリアはそんなことを言い合いながら、セントラルシティへと近付く。

 都市国家や政治基盤なるものは、自分が生まれるずっと前に崩壊してしまったらしい。最終的に、人々の営みを守ることが出来たのは教会だった。その教会を中心に、セントラルシティは構成されている。

 もっとも文明的な場所であり、もっとも教会と近い場所、それがセントラルシティだ。

 教会に追われる身であるリアが、隠れ潜んでいる場所でもある。

 二人を乗せたトラックは、特に苦労もなく検問を越え、街へと入る。

 五年も経ったのだ。すっかりリアは、この街の住民となった。頻繁に外出することはないが、顔馴染みの知り合いや友人もいる。

 だが、彼女の顔は常にガスマスクに覆われているのだ。その檻がなければ、自分はリアを守れない。

 レオの望みは、未だ叶わないままだった。

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