最終話(上):永遠に
稀代の謀反人ケビン・シュバルツ及びマサユキ・ユイ等によるシュバルツ王国乗っ取り計画は未遂のまま終了したのである。総督府や各地の訓練施設跡を速やかに占領し、総督府や訓練施設等の関係者は次々と処刑された。その中には騎士団長を夢見ていたハードンの姿もあり、手枷足枷を嵌められた状態で処刑台に座っていた
「ははは、我が人生、ここまでか。」
「最期に言い残す事はあるか?」
「次に生まれ変わったら、貴族になるぞ。」
「執行!」
「(さらばだ、ユイ殿。)」
この後に、謀反人ケビン・シュバルツはシュバルツ王国から【魔王】と呼ばれるようになり、未来永劫語り付かれる事となったのである。一方、王宮では国王ロバート・シュバルツは朝議の場に姿を現し、ロミオやユリヤやクレア等の王族や貴族問わず臣下の礼を取った。王太子ロミオは進みより祝賀を述べた
「父上にあらせましては、謀反人ケビン・シュバルツとその一味を討伐せざる事でしょう御祝い申し上げます!」
「おめでとうございます!」
「「「「「おめでとうございます!」」」」」
ロミオからの祝賀がいい終えると臣下たちから一斉に御祝いの言葉を述べた
「うむ、皆には心配をかけされたな。」
「父上、何故、仮病を?」
「ロミオよ、敵をあざむくにはまず味方からと言うではないか。ケビンの動きを知るためにはそうせざるをえなかった・・・・それに。」
ロバートは臣下たちを睨み付けた。睨みつかれた臣下の中にはケビンの謀反に関わった貴族たちもおり、青ざめた表情で俯いていた
「【ヘイホウドウ】なる軍学塾に出入りしている貴族の子弟も此度の謀反に関わっているかもしれんし、この中にもケビンと通じた者がいてもおかしくはあるまい。」
ロバートがそう言うと、ケビンと関わった貴族の背筋がぞくっとした。その様子を見たロバートは溜め息をつき、こう述べた
「まぁ、これ以上疑ってもしょうがない。謀反人であるケビン・シュバルツとマサユキ・ユイ等の【ヘイホウドウ】の一味は晒し首となったのだ、良き見せしめとなった。それ故、此度の事は水に流そう。」
国王の口から謀反に関わった事を水に流すという言葉が出た瞬間、ロミオ、ユリア、クレア等は驚きと複雑な表情を浮かべ、臣下たちの中にはホッとする者や複雑そうな表情や明らかに不満そうな表情を浮かべる者がいる。臣下たちを代表してアルンフェン公爵が進みより理由を問い質した
「畏れながら陛下、それでは甘すぎなのでは?」
「先程も言うたであろう。ケビン・シュバルツ及びその一味は晒し首にし、良き見せしめにしたと。裏切ればどうなるか身に染みて知ったであろう。」
「ですが。」
「それに各地で私兵を育てる施設や武器庫、兵糧故が火事で焼失し、投資をした貴族たちの中には大損した者もおり、無事では済まされなかったからな。」
ロバートがそう言うと、謀反に関わった貴族たちは再び顔を青ざめた者がいた
「その貴族たちが急に自分の領地に増税をかけた者、生活を保つために増税をかけざる者がいれば、それが謀反に関わったという証拠になるしな。その証拠を持って謀反に関わった貴族たちを潰せるしな。」
「なるほど。流石は陛下、畏れ入ります。」
アルンフェン公爵は納得し臣下たちを見渡すと、青ざめた貴族、苦笑いを浮かべる貴族、冷や汗をふく貴族がチラホラいて、思わず嘲笑を浮かべてしまった
「話はそれだけか、アルンフェン公爵。」
「いいえ、もう1つ・・・・この件にはサコン・シマ国士準男爵殿は関わっておるのでしょうか?」
アルンフェン公爵からこの件に島左近は関わっているのか尋ねた。ロミオやユリヤやクレア等の王族や他の貴族たちもアルンフェン公爵の発言に注目していた
「あやつは関わっておらぬよ。」
「それは誠にございますか?」
「ほぉ~、余を疑うのか?」
「畏れながら、陛下は謀反人を炙り出すために偽りを仰られたので・・・・」
「そうだな、確かにあやつは王宮へ参内しているが、余に対して病平癒のための御守りや魔除けの札を献上しただけだ、勿論あやつには会っておらん。余が仮病だと知った時は流石のあやつも驚いておったがな。」
「左様にございますか(これは関わってるな。)」
アルンフェン公爵等、島左近を知っている者以外の左近を知らない貴族たちは拍子抜けするように驚いていた。誰しもあやつが関わっていると思っていたようだな
「左様にございましたか、陛下に対し、御無礼申し上げました、御許しのほどを。」
「構わん、もしあやつが関わっておったら褒美を出しておったわ、ハハハハハハハハ(約定を果たしたぞ。)」
端から聞いていたユリヤとクレアは島左近が関わっている事に気付いていた。何故、国王が島左近は関わっていないと言うのか理由は後で伺いつつも、国難が去ったことにホッとした
「(サコン、礼を申すぞ。)」
「ユリヤ大公殿下。」
「何か?」
「この場にサコン・シマがいないのが残念ですわね。」
「そうね。」
「大公殿下はあの御方が好みのタイプでしたわね。」
「何が言いたい?」
「いや、奇遇だと思いましてね。もしサコン・シマに嫁がいなかったら私がなっていましたわ♪」
「ふん、相変わらずね。」
「私と貴方は同じ男を好きになる運命かもしれませんね。」
「えぇ、その通りね。」
「ふふふ、あの御方も罪な事をなさいますわね、王族の女を虜にするなんて。」
「あぁ、私たちが王族に生まれたのが残念だわ。」
2人は互いに島左近に1人の異性として好意を寄せている事に軽口を叩きあっていると、そこへロミオが割り込んできた
「ユリヤ大公殿下、叔母上、先程から何を話しているのですか?」
ユリヤとクレアの会話に割り込むロミオに、2人はキッとロミオを睨み付けた。ロミオはユリヤとクレアの凄まじい迫力に押され、後退りした
「ロミオ、淑女の会話に割り込むとは無粋ですわよ。」
「お、叔母上。」
「ロミオ、長生きしたければ空気を読め。」
「は、はい。」
こうして国難が去ったシュバルツ王国は再び平穏な日々を送るのであった
島左近清興だ。ワシは与一、オルマ、イザークら騎士等と共に領地へ帰っていた。アリーナたちからは心配され、子供たちからお土産をせがまれたのは言うまでもなかった。今はワシらが無事に帰還した事を祝して御祭りが開かれている
「左近様、ようやく平穏な日々が訪れましたな。」
「あぁ。」
「何か心配事でも?」
「いや、ケビン・シュバルツを思い出してな。」
「はぁ?」
「もし奴が国王になったらこの国はどうなっておったであろうな。」
「まぁ、共に戦ったマサユキ・ユイたちと貴族たちと共に治世を当たるでしょうな。」
「あぁ、だがケビン・シュバルツとマサユキ・ユイ等は当初の目的は同じだがケビン・シュバルツが国王になった際はどうなるであろう。」
「まぁ、それぞれ思惑と欲得がございますからな。」
「そうだな、もしかしたら分裂しておったかもしれぬな。鎌倉幕府や室町幕府同様に内輪揉めをしていた可能性があるやもしれぬな。」
左近が気になっていたのはケビンとマサユキたちの治世であった。本格的な武家政治を創始した源頼朝公亡き後、御家人同士が対立し、謀略によって身内同士が殺し合い、最終的に源頼朝公の妻である北条政子の実家である北条氏が執権政治が行われた。その後、後醍醐天皇による討幕が成功し建武の執政が行われたが公家中心の政に嫌気が差した武士達は後に室町幕府初代将軍である足利尊氏公によって後醍醐天皇方を退け、室町幕府が築かれた。しかし兄弟・家臣同士の争いが激化し、3代将軍足利義満公の時代で一時は平穏を取り戻したが、後に応仁の乱が起こり、戦国時代へと突入し室町幕府は有名無実化したのである
「もし左近様の仰る通りになったら、とばっちりを受けるのは下々の民にございましたな。」
「あぁ、ワシらとて無事では済まされなかったわい。」
こうして家族と再会できたのも、あの者たちを亡き者【ケビン・シュバルツ&マサユキ・ユイ等】にして得ることができたのだから・・・・
「旦那様!」
「お前さん!」
「「「「父上!」」」」
黄昏れているワシらを余所にアリーナたちが呼んでいる。ふふ、全く泰平ボケした者たちだ・・・・
「左近様、参りましょうか。」
「あぁ。」
異世界へ転生した島左近は国士準男爵【公爵格】として活動し、後に遅れてジュリアス王国やシュンフェン王国から【国士】と【公爵格】の称号を授かり、国外で初の【国士準男爵】に就任し、国内外で押しも押されぬ実力者となった。それを踏まえてか、息子で後継ぎであるアルグレンは国王の命で国王の姪(養女)を娶った。娘のサリーナも同様に国王の命でチャベル・シュバルツ【後にユリヤ・シュバルツの養子となり大公家を継承】の婚約者、後に正妃となる。息子のシリウスも国王の命とリチャードの懇願でリチャード・アルバイナの実家であるアルバイナ侯爵家の令嬢と婿入りで婚約を結び、結婚したのである。島左近は愛人をもたず、妻のアリーナと夫婦仲が非常に良く死ぬまで寄り添い続けた後に、島左近は75年の生涯を閉じた。その半年後に妻のアリーナもこの世を去った。従者である颯馬与一は島左近の死から3年後に去り、妻のウルザも半年後にこの世を去ったのである。島左近亡き後のシマ国士準男爵【公爵格】家はシュバルツ王国と共に繁栄し続けるのであった
「与一、楽しかったぞ。」
「某もです、左近様。」
「旦那様、私も忘れないでくださいませ。」
「お前さんもよ。」
「「ははは、すまんすまん(笑)」」




