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異世界は神様と共に  作者: 腹巻
38/42

38話 訳アリ物件



帰り道もアニエスの怒りは収まらない。

「これだから組合は嫌になる。」

確かに組合嫌いなのも分かる気がする。


ハルは今まで組合にはお世話になったし、良い人ばかりと会って来た。


だが王都の総本部がこんなにも酷いとは思わなかった。



嫌な気分の時は何か食べて、気を晴らすしかないな。

金はあるんだし使わないと。

「あっ!そうだ。」

ハルは思い付いてしまった。

昔からやってみたかった事。


「これから不動産屋に行っても良いですか?」

「ハルさん、まだ我々の所から出す事は出来ないよ。」

「分かってます。出る勇気もありません。それより落ち着いたら喫茶店をやりたいんですよ。」

「喫茶店?茶屋の事かな。茶葉を扱うのは大変だよ。相場次第で大損だからね。」

「いやいや。お客さんにお茶を飲んで休憩してもらう感じの場所です。」

「ふ~ん、なるほど。うんそれは良いね。」



商業区の外れに建つ、古い不動産屋に入った。

理由は組合員の証が付いていない店だったからだ。


中を見ると老人が座っていたが、お爺さんなのかお婆さんなのか分からない。


「こんにちは。」

ジロリとこちらを睨んでいたが、顔を上げて言った。

「なんじゃ。客か、珍しいな。」

どうやらお爺さんのようだ。


「ええ。なんか面白そうな物件でも無いかと思って。」

「面白い物件なんぞあるわけなかろう。」


それでもお爺さんは色々な物件資料を見せてくれた。

かなり色褪せているその資料は、長い間売れていない事を示していた。


「値段が安いけど何があるんですか?」

「まぁなんだ。訳ありだな。」

その中にある殆どが事故物件。

曰く付きってやつだ。


「ハルさん、ちょっと見せて。」

「はい。どうぞ。」



しばらく眺めていたアニエスが、書類の束を返しながら言った。

「この訳あり物件全部買ったら?楽しそうじゃない?安いし。」

「そうですかね?じゃあ全部買っちゃいますか。」


「おい。ちょっと待て、お前さん達正気か?」

「アニエスさんも面白そうだっていってますし。」




「ん~~、良いだろう。お前さんに売った。その代わり、この土地を売る時は又ここに来てくれんか。」

「分かりました。約束しますよ。」


「土地物件の登録契約はいつが良いかね?」

「じゃあ今からお願いします。明日から当分留守にするんで。」

「分かったよ。」

「ではこれを。」

土地代全部で白金貨120枚を机の上に置いた。

「!?まさか現金を持ち歩いているとは。」



契約とは土地私有の証が書かれた魔道紙を使い、王城にある地図型魔道具に土地所有者を登録するものである。


契約に使用する魔道紙は、不動産の所有者に渡される権利書の様な物。


魔道紙が意思を読み取り、無理矢理に契約する事は出来ない。


因みに王城にある魔道具は遺跡からの出土品である。







「これで契約は成された。」

「ありがとうございます。」

「いや、こちらこそありがとう。お前さんなら信用出来る。」

「?」




拠点への帰り道。

「アニエスさん、何であの物件を進めたんですか?」

アニエスに聞いてみた。

「買った僕が言うのも何ですけど、もっと良さそうな物件があったと思うんですけど。」


「ははは。この物件を全部集めると広い1つの土地になるんだよね。」

「え!?」

「住所の書き方がどれもバラバラで、最初は気付かなかったけどね。それでよく見たら全部が同じ場所を指してるじゃないか。」

「なるほどねぇ。・・・でもマリアさんには怒られますよね?」

「黙ってれば分からないよ。きっと。」

「本当ですかぁ?」

「ははははは。」




「あの二人は何者なんだ?やつらの仲間では無いとは思うが、まさか全部買って行くとはな。」


爺さんはアニエスとハルを思い出して笑いが出てしまう。



その時店に入って来た者達がいた。


「おい、じじい。いい加減売ったらどうなんだ?」


「何を言っておる。いつでも売ると言うとるではないか。」

「けっ。そんなもん誰が買うかよ。欲しいのは教会の土地だよ!今日はどんな事をしても契約して貰うからな。」


「残念だったのう。たった今売れてしもうたよ。ほれっ。」

売却済みの物件資料を男達に見せる。


「なんだ?いつものゴミ物件じゃないか。」

「これをお前達のボスに見せてやれ。」

「ふざけるな!」


男達はお爺さんを殴り付けると、店中を家捜しを始めた。


しかも目的の物が無いと分かると店を壊し火を着けた。


住民からの通報により、すぐに兵士が駆け付けて来たお陰で、お爺さんは無事だったが、店は燃えてしまった。





◇ ◇ ◇





「お前ら土地は手に入れたんだろうな?」

「いえ、店中探しましたがありませんでした。」


「城の記録では契約は済んでる。お前らは何をしてやがったんだ。」

「そう言えばお頭に渡せって紙があったな。」

「それだ!どこにある?」

「これです。」

部下が持つ書類の束を引ったくる。


「ん?これはなんだ。」

「ですからお頭に見せろって言ってた紙です。」

「これは・・・くそっ!気が付かなかった。こんな所に隠してやがったのか!」


元盗賊の不動産屋シボルは少し考えていたが、良い案が浮かんだのかニヤリと笑って部下に指示を出した。

「今の所有者はハル・マサキって奴だ。お前らは急いで探して来い!

「お頭は?」

「俺は他にやる事がある。」

そう言って笑うのだった。








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