37話 ルナルーの杖
素材が売れず無一文のハルはガッカリしていたが、ゴブリンが落とした杖を思い出した。
帰り道、アニエスに相談しようと、ゴブリンが落とした杖を見せた。
いくら位で売れるか解析して貰おうという訳だ。
ハルの持つ物は全部、売却禁止を言い渡されていた。
杖は魔物が使っていた物なので、これを売りたい。
「これはこの前拾った杖なんですけど、いくら位で売れますかね?」
「うん。ちょっと貸して。」
アニエスは変わった形の杖を受け取り解析を掛ける。
Name : ルナルーの杖
※ 試練を突破した超越者に与えられる杖
等級 : ―
効果 : 暗黒魔法2倍
!?
「これをどこで?」
「この前倒したゴブリンが落としたんですよ。」
「・・・・・・これは売れない。」
「ええ~。残念。少しでもお金になるかと思ったんですけど。」
ガッカリするハルを見て可哀想に思ったのか、みんなで相談しようと言ってくれた。
拠点に戻ったアニエスは全員を集めて杖を見せた。
まずアルヨルが声を掛けてきた。
「これがあのゴブリンが持っていた物ですか。随分変わった形をしているな。」
「んでこれはどんなもんなんだ?」
ラグナが単刀直入に聞いた。
「ルナルーの杖。ルナルーはあのゴブリンの名だ。」
アニエスは解析結果を紙に書いて机に置かれた杖の隣に並べた。
「専用武器と言う訳ですか。」
「勇者にとっての聖剣の様なものだな。」
ラグナが余計な一言で、マリアに睨まれていた。
「ここに書かれた情報に、試練を突破した超越者の杖とあるが。」
アルヨルが紙に書かれた一文に興味を持ったようだ。
「超越者と言うのは初めて聞きました。」
「確かにあのゴブリンは色々超越してたな。」
クリスはあの日の事を思い出して考え込んでいる。
「試練と言うのも興味深い。」
「何に対しての試練でしょうか。」
「超越者になる為の試練なのだろうか。いつか挑戦してみたいな。」
マリアにはクリスの気持ちも分かっていた。
「クリスに角が生えたら嫌よ。」
「マリアは怒ると角が生えるがな。はは・・・いでっ」
ラグナは杖で殴られていた。
「暗黒魔法?魔術の事ですか?」
「アルは聞いたことあるか?」
「・・・ああ。実は森の民から聞いた事がある。古の民、エルフはスキルを使わず魔術を操ると。」
「エルフ!居るんだ!」
興奮しているのはハルだ。
「ああ。エルフは森の奥にいる。だが人前には滅多に出て来ない。」
「いつか会ってみたいです。」
「ハルさん。この杖を売って貰えないだろうか?」
アルヨルは考え込んだ末、意を決してハルに頼み込んだ。
「え、ええ。皆さんが良いなら。」
売れたらハルも嬉しい。
「理由を聞いても良いか?」
アニエスが聞いた。
「今まで森の民の村で調査をしていたんだが、どうも長老達にはまだ隠しごとが多い。だがこの杖はエルフの秘事に関する物のようだ。何か進展があるかもしれない。」
「エルフか。そうだな、アルを信じよう。」
「ハルさん。これでどうだ?」
アルヨルが机の上に革袋を乗せる。
見た感じ100枚位は入っていそうだ。
「こんなに良いんですか。ありがとうございます。」
「じゃあ俺は早速向かうとするよ。」
「そうか。だが気を付けてくれ。まだあのゴブリンが残っているかもしれない。」
「わかった。皆も帝国に行くんだろ?バルカン卿は俺にとっても恩人だ。よろしく頼む。またな。」
アルヨルはそのまま森の民の村に向かった。
アルヨルの置いていった革袋を持つと、ずっしり重かった。
開いて見ると白金貨が185枚入っていた。
価値を聞いて驚いてしまった。
「こんなに貰えませんよ。」
「アルヨルの奴、奮発したな。」
「あいつの厚意なんだし貰って置きなよ。」
「大丈夫だ。アルヨルは大金持ちなんだから。」
「大金を持っていると危ないから組合に預けておいたら?」
「絶対にヤメロ!」
アニエスの反対で組合は諦めた。
翌朝、アニエスと組合に向かった。
受付で素材引き取りの話をすると、奥から昨日の職員と共に太った男が現れた。
「お前か、無礼な平民と言うのは。」
「この方はギーダ伯爵様である。本来値段も付かぬ様な物に1本1万も出して頂けるのだ。感謝しろ!」
「素材を持って来てくれ。」
アニエスは二人を無視して受付に話し掛けた。
「貴様!この俺が誰だかわからないのか?」
「知らん。興味もない。」
「やぁ、アニーじゃないか。何を騒いでいるんだい?」
入り口から入って来たのは、総本部長のクラウスだった。
ー
「とにかく素材をここに持って来なさい。」
受付で事情を聞いたクラウスは溜め息をつきながら職員に指示を出した。
「それは出来ません。」
担当職員のムジンは本部長を睨んでそう言った。
「それは何故かな?」
「現在、研究機関にありますので、持ち出しは不可能です。」
「そうか。ではその素材とは何ですか?」
「魔物の角です。」
「ではその代金を払えば良いのでは?」
クラウスはアニエスを見てそう言った。
「ただの角なら持ち出しても平気だろう。」
アニエスは不機嫌そうに言った。
「まぁそうだが・・・・」
「いや、実は調査中に壊してしまいまして、それで代金を払おうと言ったのですが。」
慌ててムジンが言い募る。
「全部壊した訳では無いでしょう?」
「どうなんだ?ムジン。」
「え、いや、それは・・・」
「もういいではありませんか!本部長。壊したものは仕方ありません。ギーダ伯爵も居られるのです。たかが組合員の言う事など聞く必要ありません!」
現れたのは副本部長ヒルマル。
「ヒルマル。そんな事出来る訳ないだろ。」
「組合は今、大変忙しいのです。あなた達も一旦お帰り下さい。」
ヒルマルの剣幕に退出する事にした。
明日には帝国へ向かう為、王都を出ないといけない。
何ヵ月掛かるか分からないので、一応帰る迄保留にしておくよう受付に話しておいた。
それを見たヒルマルはこちらに近づいて来て言った。
「何をしてるんだ!早く出て行け!」




