36話 帝国へ行こう。
ミルドレイク城の謁見の間では、周りの好奇な視線を浴びながら、クリスとマリアが国王の登場を待っていた。
宰相ルーファスが登場して国王を呼び込む。
周囲に睨みを効かしながら、国王アレクシスが入ってきた。
その威厳に満ちた登場に、居並ぶ貴族達は臣下の礼をとる。
アレクシスは片手を上げて応える。
視線をクリスに向け言葉を交わす。
「勇者クリスよ。此度の件、感謝する。」
短い謝辞を述べた後、国王はオーク討伐の話を居並ぶ貴族に聞かせた。
貴族から称賛の言葉を浴び、居心地の悪いクリスは早々に退出するのだった。
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クリスとマリアは王族が使う応接室で、国王と宰相を待っていた。
国王にだけはゴブリンの件を報告した方が良いと思ったからだ。
程なく国王アレクシスが宰相ルーファスを伴って入ってきた。
「すまない。待たせたか?」
「いいえ。」
「はい。待ちくたびれました。」
「マリア。」
「・・・すまんな。」
クリスは嗜めたが、アレクシスは娘に弱く謝ってしまう。
このやり取りに慣れているルーファスは何も言わない。
口を出す事が愚行だと分かっているからだ。
気を取り直してアレクシスが聞いた。
「報告では聞いておるが詳しく教えてくれんか?」
クリスとマリアが頷き合い、絶対に他言は無用だと約束させた後、意を決して話し出した。
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「むぅぅ。俄には信じられん話だが真実なのだろうな。」
さすがに 二人が虚偽の報告をする筈がない事は分かっている。
「して、そのハル殿はどちらに居られるのかな?」
「お父様。会ってどうなさる気ですか?!」
「いやいやいや。ただ聞いただけではないか。何もせんよ。」
「陛下。そのハル殿についてはお二人にお任せいたしましょう。」
ルーファスが空気を変える。
「そうだな。何かあれば私が力を貸そう。頼んだぞ、二人とも。」
「「はい。」」
再度、気を取り直してアレクシスが話し出した。
「後、今回これが本題であったのだが・・・・・」
「お二人は帝国が戦争を起こした事はご存知ですか?」
ルーファスが補足する。
「はい。詳しくは聞いておりません。」
クリス達が旅に出てからの事で、組合で少し聞いただけだった。
「結論から言うと帝国は開戦2日で壊滅した。」
「それはどういう事ですか?」
☆
王城から出た二人は馬車の中で話し合っている。
「クリス。どうするつもり?」
「・・・迷っている。」
「じゃあ行きましょうよ。皆も賛成するわ!」
「しかし、ハルさんの事もあるし・・・」
今回のゴブリン討伐の件で、ハルの危険性が高まった。
無闇に他国へ連れ出しても良いのだろうか、しかしそれではハルの嫌がる拘束、監禁と同じ事。
一緒に居て守ると約束したのだ。
私の個人的な理由で危険な場所に連れて行っても良いのだろうか。
「貴方のお師匠様の事でしょう?ハルさんだって行きたいって言うわよ。」
「これは私事だ。一人で行って来るよ。」
「クリス・・・」
☆
拠点に戻って仲間に相談したのだが・・・・。
「何言ってんだ!俺達も行くに決まってるだろ。なぁハルさん。」
「ええ。帝国行ってみたいです。」
「おいおい。観光に行くんじゃないんだぜ。」
「それにクリスさんのお師匠さんにも会ってみたいですしね。」
「ありがとう。また面倒に付き合わせてすまない。」
「こうなれば早く帝国に行って、クリスのお師匠様を助けましょう。」
「ああ。準備を考えて3日後に出発だな。」
「「「「了解。」」」です。」
ー
次の日、ハルは組合総本部に向かっていた。
旅の最後の村でギンが戦った熊から採れた角の買取り額が出たらしい。
組合の建物は相変わらず立派で、土魔術を使って建てられた最新建築だ。
その後ろに隠れる様に建っているのが、勇者が建てたと言う木造校舎風の建物。
釘が使われて無いらしいので、アヤト君宮大工説を提唱したい。
アニエスと一緒に受付へ並ぶが、職員の一人が呼びに来て2階の1室へ案内された。
「初めまして。買取り担当のムジンと言います。」
「どーも初めまして、ハルです。」
「・・・・・・」
アニエスはフードを被り、離れた場所で本を読んでいる。
あまり組合に来たがらないのは、総本部長のクラウスさんと何かあるんだと思う。
「ではあなたが持ち込まれた角の評価額ですが、1本1万で買い取らせて頂きます。こちらの書類にサインをお願いします。」
「あ、はい。」
期待していたより低い評価額で残念だとは思ったが、無一文の今を考えると贅沢は言えまい。
ハルがサインをしようと筆を取った時、アニエスが近づいて来て腕を掴んだ。
「ちょっと待って。」
「あの・・・」
ハルが何かいう前にアニエスが職員に聞いた。
「その角を見せてくれ。」
職員はしばらく黙っていたが、迷惑そうに言った。
「それは無理です。今、研究機関にありますので。」
「ではその研究機関とやらを教えてくれ。」
「それも無理です。機密に関わる事ですので。」
「そうか。」
アニエスは少し考えていたが、ハルを見て言った。
「買取りは中止した方が良い。」
「なっ!あなたは関係無いじゃありませんか!」
職員は激昂していたが、ハルは黙って筆を置いた。
「ちょっと!本当に良いんですか?後悔しても知りませんよ!」
「あの、すいません。買取りは無かった事にします。」
アニエスがそこまで言うのだからと取引を断った。
「もうあんたは組合で仕事を貰う事は出来ないからな。」
「!?何故ですか?」
あまりの言い様に眉をしかめてしまう。
「これは善意で言ってるんだ。1本1万で売りなさい。」
さらに言い募る職員を無視して、アニエスは扉に向かった。
「もう帰ろう。ここには居たくない。」
「はい。」
「あー、それと明日にでも渡してある素材を取りに来るから用意して置いてくれ。」
そう言ってアニエスとハルは組合を後にした。
思ったような文章を書くのは難しいですね。
当分は読み難いとは思います。




