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異世界は神様と共に  作者: 腹巻
31/42

31話 朱の手



帝国某所


魔道具のやわらかな光が室内に広がり、豪奢な調度品を優しく照らしている。

中央に置かれた円卓を囲む5席の内、4席は埋まっていたが口を開く者はいない。



「アカモート様がいらっしゃいました。」

執事風の男が扉を開けながら声を上げた。

円卓に座る4人は一斉に立ち上り、入口に向かって頭を下げる。

すぐに背の高い男が入って来て室内を見回す。

「遅くなったな。始めよう。座ってくれ。」

「「「はいっ。」」」


アカモートと呼ばれた男は、一番離れた席に座る男に声を掛けた。

「ナシュモ殿は組織には慣れたかな?」

「ええ。皆さんには良くして頂いて。一介の商人の私がこの様な場に居られます事、とても光栄に思っております。」


「あら、世界中の相場を影で操る大商人が随分謙虚な事言うのね。ここは貴方に相応しいと思うわよ。」

妖艶な衣服を身に纏った女が言う。


「そうだな。ナシュモ殿にはこれからも頼りにさせて頂きたい。」

鍛え上げられた身体の髭男が続く。


「我が帝国で商売をしてるのだ。役に立つのは当然の事だな。」

皇帝ウーシンは周りの冷たい視線に気付かない。


「最近は特需も相まって儲けさせて頂きましたから。」

「貴様を儲けさせる為にやっているのではない!」

触れたくない話題に激昂する。


「まぁまぁ、お互い『朱の手』の幹部だ。対等な立場なんだから。」

髭男が二人を止める。


「そう言えば戦争が始まったみたいね。どうなったのかしら。ふふふっ」

女は意地悪く戦争の話題を振る。


「聞いたよ。マツヤにしてやられたらしいな。」

「うるさい。全部勇者のせいだ。役立たず共め。」

あまりの言い草に呆れた表情でウーシンを見る参加者。


「勇者だからと言って召喚から2ヶ月足らずで戦場に立たせるとは。」

「勇者って言っても最初は素人同然でしょう?かわいそう。」

「敗戦の原因は勇者の裏切りだったみたいですね。」

「勇者3人の内の1人でしょ?その子に興味あるわ。」


「それに王国から借りてる聖剣を無くしたと聞きましたよ。」

「何故それを知っている?」

「さあ。」

固く口止めしていたのにも関わらず知られていた事に驚く。


「王国からは偽物を渡されたのだ。本物と引き換えなら返してやる。」

「馬鹿なの?そんなの通用するわけないでしょ。」


ガチャンと円卓に置かれる剣。

「これは・・・何故貴様が持っている?」

「それは言えない。だがこれが無いと困るでしょ?」

「ああ。」

置かれた剣に手が伸びるが、別の手が素早く剣を引っ込める。

「おっと。只じゃ渡せません。」

「どういうつもりだ!商人!」

「そうです。私は商人ですからね。対価を払って頂ければお渡ししますよ。」

「クソッ。いくらだ?」

「白金貨1000枚。安いものでしょ?」


「・・・わかった。剣をよこせ。」

「支払いが済んでからですよ。」

「ふざけるな!貴様が盗んだんじゃないのか!」

ナシュモは立ち上り、先程から黙って座るアカモートにお辞儀をした。

笑顔で頷くアカモート。


「では私はこの辺で。皆さんごきげんよう。ご連絡お待ちしておりますよ。皇帝陛下。」

「おい!待て!」

皇帝が慌てて後を追うが、扉を出ると商人の姿は消えていた。

「気味の悪い奴め。」





◇   ◇   ◇




マツヤから帝都へ戻ってしばらく経ち、コウキは騎士団の訓練場にいた。

以前と違いクルー団長はいない。


戦争の責任を取り、身分剥奪の上、鉱山に幽閉されていた。

元々皇帝とは折り合いが悪く、全ての責任を押し付けられた形だ。


コウキとナナミも首に奴隷紋を刻まれ、帝都から逃げる事が出来なくされていた。

奴隷紋と言うのは【呪術】の1種で、拘束力は【呪術】スキルのレベルによって変わる。

コウキ達の場合、行動制限は無いが距離の制限が付いている。


タカシが出奔した事で怒り狂った皇帝が施したのだ。


後で分かった事だが、タカシは5万人近い味方の兵士を殺していた。

コウキやナナミからもスキルを奪って逃げた事も分かった。


身体の傷は消えたが心の傷は消える事は無かった。


「コウキ君。いつまでウジウジしてるつもり?」

「ナナミさん。でも・・・」

「もう団長さんは居ないのよ?誰も助けてくれる人はいないの。わかってるんでしょ?」

ナナミさんはもう2回も捕まって連れ戻されているが、逃げるのを諦めてないようだ。


「でも逃げられないよ。僕はもう一生ここから出られないんだ!」

「聞いたのよ。奴隷紋は【呪術】だから同じスキルを持ってる人なら解呪出来るって。」

「そんな人どこにいるんだよ!」

「これから探すのよ。ねぇ、ここから逃げる方法を一緒に考えましょ。」

「無理だよ。こんなもん付けられて、帝都から出たら死ぬんだよ!」


「あっそっ。じゃあ私1人でも逃げるわ。」

「危ないよ。今度見付かったら殺されるかもしれないじゃないか。」

走り出すナナミを見て、仕方なく追い掛けるコウキだった。



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