26話 マツヤ王国
「どうだ、彼等は間に合いそうか?」
「今、第二騎士団とこちらに向かっている途中です。問題ありません。」
「その他はどうなってる?」
「攻城戦にあたり守備隊の増員を第三騎士団から、市街戦を想定して市井の者からも募っております。」
「よし。何とか準備は整いそうだな。」
マツヤ王国では、帝国の宣戦布告を受けて、国王の指示で家臣達が準備に追われていた。
帝国が異世界から勇者を呼び出した事は広く知られているため、マツヤ王国でもこの戦争に悲観的な意見が多い。
だが、宣戦布告されている現状では、戦争を避けるには敗北宣言するしかない。
帝国に降伏するという事は属国になる訳ではない。
国を蹂躙されるのだ。
これは実際過去にも起こっている。
現皇帝になって以来、数多くの国が滅亡した。
王族は皆殺し、国民は全員奴隷にされた国もある。
人類連合に現状を訴えているが、期待は出来ない。決議が出る頃、我が国は蹂躙し尽くされているだろう。
頼みの綱は彼等しかいない。
援軍が到着するまで守り切れるかが勝敗の鍵だろう。
◇ ◇ ◇
帝都からマツヤ王国までは約10日の行軍であった。
コウキ達は最前列の部隊に配属されていた。
ナナミは不満たらたらで愚痴っている。
「なんで回復役の後衛が最前列にいなきゃいけないのよ!」
「大丈夫。ナナミさんは僕が守るから。」
「コウキ君。あんまりそう言う事は人前で言わない方が良いわよ。」
「いや、そう言う意味じゃ。」
「わかってるわ。でもこの配置はおかしいでしょ。私のやってたゲームでこんな事してたら全滅よ。」
ナナミさんの言ってる事は分かる。
でも今回はゲームじゃなくて戦争だから同じではない。とは言え聖女は回復要員として後方で支援だと思うけど。
先日、皇帝から聖剣を預かった。
ミルドレイク王国に伝わる宝剣だそうだ。
僕の場合、スキルに【聖剣】を持っているんで剣の性能が上がるんだとか。
皇帝からのプレッシャーは計り知れないよ。
戦いの指揮を執るのは皇帝の従弟らしい。
前線に一般兵や奴隷兵を配置するのは普通だと思う。
しかし僕たちやクルー団長も同じ最前列にするとか、嫌がらせの意味もあるのかもしれない。
圧倒的な戦力で殲滅出来るという自信なのだろうか。
帝国軍10万に対してマツヤ軍3万。
倍以上の戦力差があり、やる前から勝った気でいる指揮官。
僕の胃が今にも潰れそうだよ。
戦争は初めてだし、人との殺し合いなんてした事ないし。
でもこの世界で生きていくには必要な事だと、自分に言い聞かせているが、考えるだけで足の震えが止まらない。
ナナミさんの愚痴を聞いている時が一番気が休まるよ。
タカシ君は相変わらず離れて歩いている。
話し掛けても睨まれるだけで会話にならない。
伝令が来て、本日の行軍が終わり夜営の準備に取り掛かる。
一般兵士に混じってテント設営等を手伝った。
ナナミさんは調理を手伝っている。
不安だ。言葉には出さないけどね。
ここでまた問題が発生した。
食糧がなくなっていたらしい。
昨日も同じ様な事を言っていたな。
僕達のいる隊はまだ優先的に回って来るが、一般兵士や奴隷兵が中心の隊は食事が半分になっているとナナミさんが言っていた。
この時は大変だなぁ位にしか思ってなかったけど、まさかあんな事になるなんて。
◇ ◇ ◇
「かしら~。頂いて来ましたよ。」
「ごくろうさん。お!酒もあるじゃないか。」
「指揮官用の物資にありました。戦争だってのに良いもん食ってますよ。」
「そろそろ良い頃合いだな。」
「お!じゃあお城に向かいますか?」
「バカ。これからが本番なんだよ。」
「冗談ですよ。でも本当に良いんですか?勝手に寄り道して。」
「良いんだよ。元々数が違い過ぎるんだ、少し減らさないと戦いにもならん。」
「勇者も居るみたいですからね。」
「分かったらさっさと配置に付け。」
「ヘ~い。」
暗闇に元の静けさが戻った。
◇ ◇ ◇
行軍7日目。
夜営中の帝国軍は魔獣と戦っていた。
無数の虫がテントに入り込み兵士達を襲った。
大きな蜘蛛を斬り伏せながら、クルー団長が檄を飛ばす。
「散らばるな、固まって対処しろ。」
「クルー団長、大丈夫ですか?」
「コウキ。こっちはいい。中央のテントを頼む。」
「分かりました。」
中央のテントには指揮官や上級貴族の子弟がいる。
コウキは気が進まなかったが中央にある大きなテントに向かった。
不思議な事に虫は一匹も見えない。
「こっちは大丈夫でしたか?」
テントの外で警備をしている兵士に声を掛けたが、指揮官殿が寝ているので静かにしろと怒られた。
仕方なくクルー団長の元に戻ると、虫の魔獣は消えていた。
「こう毎日では兵がもたんな。」
「指揮官のテントには虫は来てませんでした。」
「おかしいな。」
「誰かが虫を呼び寄せているんでしょうか。」
「かもしれん。」
「マツヤまで後少しですが・・・」
「食糧が減って士気が下がってるのに加えて毎晩の襲撃だ。兵達も限界だろう。軍長殿と話して来よう。」
クルー団長は軍長に建て直しの進言をしたのだが、総大将であるジョアン伯爵は聞く耳を持たず、逆に進言した軍長を叱咤した。
自分達はずっと平和な行軍だったのだから、素直に受け入れられないのだろう。
怪我人は出ているが死者はいないのがせめてもの救いだ。
予定より1日遅れでマツヤの国境に到着した。
戦争の描写が難しいですね
脳内補完でお願いします




