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異世界は神様と共に  作者: 腹巻
23/42

23話 新たな勇者

僕は秋山光輝。都内の高校2年生だ。


1年前、幼馴染の佐藤隆史君が、いじめにあっている現場を目撃した。

隆史君とは特別親しかった訳じゃないけど、親同士が知り合いで町内行事の時は、顔を合わせる機会が多かった。

その時は怖くて逃げてしまったんだけど、一瞬こちらを見た隆史君の目が忘れられなかった。


だから先日、いじめられていた隆史君を見て、止めてくれる様にお願いした。

それをきっかけに標的が僕に移る事も覚悟をしていたんだ。

でもまさか隆史君も一緒になって、いじめに加わるとは思ってもいなかった。


「光輝。今日も裏の公園に来いよ!」

「今日はこれから家の手伝いがあるんだ。」

「ふざけんな!お前が来ないと困るんだよ。絶対来いよ。」

何故隆史君が困るかと言うと、僕の代わりにいじめられるから。


隆史君が派手にやるんで、クラスみんなが知ってしまった。

正直、いじめてる奴らも困ってる。

隆史君がいない時、いじめっ子達が言っていた。

来年の受験に備えて、問題は起こしたくは無いと。


放課後、隆史君の自分勝手な命令を無視する事にした。


家に帰る途中には、隆史君が指定した公園がある。

遠くから様子を見ていると、隆史君が突き飛ばされていた。

いじめっ子達も付き合いきれないって感じだろう。


横断歩道の信号が赤になり立ち止まった僕の背中を、誰かがドンと押した。

道路に倒れ込む僕の目前に、白いライトバンが迫って来る。

突き飛ばしたのは真っ赤な顔をした隆史君だった。

無言でこちらを睨み付けている。

「あぶない!」


誰かの声が聞こえた。

女子生徒が駆け寄って来るのが分かった。


その時、地面が光り魔方陣が現れた。


でも、まさかまさか。

ラノベでも読んだ事はあるが、まさか本当に起こるとは思ってもいなかった。

チラリと見た隆史君の顔は笑っていた。




◇ ◇ ◇




薄暗い部屋の中で、ベットに寝かされていた。

3台のベットがあり、隣には隆史君が寝ている。

反対のベットにはあの時駆け寄って来た女子生徒。

確か名前は西野さん。

どのくらい寝ていたのか分からないけど、硬いベットに寝ていたからか背中が痛い。

夢じゃないって事は分かった。


「え?ここどこ?」

隣を見ると西野さんが起きた。


「分からない。西野さんだよね?」

「うん。君は秋山君でしょ?」

「駅前の交差点での事は覚えてる?」

「ああ、そうか。そういう事か。」

西野さんは1人で納得したようだ。


隆史君を見ると起きていて、何かブツブツ言っている。

「隆史君。大丈夫?」

「・・・異世界転移だ!」

隆史君は満面の笑みだ。


突然部屋の扉が開き槍を持った兵士と老人が入って来た。

「お目覚めになられましたか、異世界の勇者殿。」

「「「・・・・・・」」」

僕達の返事を待つ事なく、老人は1人で話を進めていった。



?



「・・・そういう訳で魔王討伐にご協力ください。」

多分これはダメな召喚ってやつだな。

帰す気もなく国の戦力として勇者を呼ぶってのはラノベの定番だからね。

本当に魔王がいるのか怪しいもんだ。



そこに白いローブを着た男が入って来た。

「これから皆さんには能力解析を受けて頂きます。」

老人がローブの男に指示をして、1人づつ解析を受ける事になった。

まずは僕の額に手を翳し、茶色い厚紙に書き写している。


書き写した紙を覗き込んだ老人は、ウンウンと何度も頷いている。

次は西野さんが解析を受けた。


老人も満足そうにしている。

最後は嫌がる隆史君を兵士が拘束して解析を済ませた。


「皆さま素晴らしい。コウキ様は【勇者】、ナナミ様は【聖女】、これで我が帝国は救われます。」

絶賛する老人だったが、タカシ君の解析表を見た時は、露骨にガッカリしてた。


全属性の魔術を使えるが、ステータスは一般人と変わらないらしい。


だがタカシ君は解析表を見てニヤニヤ笑っていた。



僕らはその日の内に勇者としての訓練をする事になった。

住まいは城に個室が用意され、朝から剣術や魔術の特訓を受ける。


この世界にはスキルと言われる能力がある。

魔術もスキル扱いになるため、スキルが無ければ魔術は使えない。でも詠唱の必要はないから便利だ。


スキルは産まれた時から付いているモノと、訓練によって身に付くモノがある。

僕の持つ【聖剣】スキルは聖剣の能力を引き出すもので、剣術を使えないと意味がない。

だから【剣術】を重点的に伸ばして行く。


西野さんの持つ【聖女】スキルは、【回復魔術】の効果を上げるもの。

回復魔術と防御術を中心に習っている。


タカシ君は魔術全般を使えるので、それらを伸ばして行く予定だ。



剣術は第一騎士団のクルー・バルカン団長が教えてくれている。

「またタカシは休みか。」

「魔術師に【剣術】は必要ないそうで。」

「魔術師だからと言って身を守る為には基礎も大切なんだがなぁ。」

熱血指導が辛いんだと思うけど言わないでおこう。


「今日は模擬戦をするぞ。」

騎士団の訓練に参加して初めての模擬戦に気合いが入る。

僕の相手は入団2年目のモリスさん。

対峙しただけで気合いが伝わって来る。

「始め!」

クルー団長の合図で2人の距離が縮まり、剣と剣がぶつかった。


    ☆


「そこまで!」

終始押され気味で、最後は剣を飛ばされて負けてしまった。

模擬戦が終わりクルー団長が僕の手を取り引き起こす。

「コウキ。もっと相手を見ろ。」


「モリス。お前はスキルに頼りすぎだ。」

さすが帝国最強の騎士、的確に指摘される。

「「ありがとうございました。」」


勇者補正なのか、LVもステータスも上がりが早い。

それなのに一番経験の浅いモリスさんにも未だに勝てない。




僕たちが元の世界に帰るには、魔王を倒して帰還魔術を手に入れるしかない。

最初に会った老人が言っていた。

絶対帰す気ないと思う。


明日はこの国の皇帝に会う予定だ。

胡散臭い召喚をした張本人に会うのだ。

どんな事を言われるか不安だが、今のところは大人しくしているしかない。


クルー団長が言うには、皇帝はとても厳しい性格の人で、絶対怒らせるなと言われた。

ほんと不安しかない。





◇ ◇ ◇





タカシは込み上げる笑いが抑え切れなかった。


異世界に来れた喜びで叫びそうになった。


召喚されて早々ベットに寝ていたのは予想外だった。

召喚時に拘束する術などを使うのはよくある話だからな。

今のところ大丈夫そうだが安心は出来ない。


嫌な笑いをする爺に解析をすると言われ、能力を知られるのはヤバいと思った。

必死で抵抗したが、兵士に押さえ付けられ強引に調べられた。

あの時の兵士は絶対殺す。


自分の解析表を確認して、欲しかったスキルが見えた時は狂喜乱舞してしまった。

ステータスの低さなんて問題にならない。


Name:タカシ・サトウ

LV:1

HP:60

MP:60

STR:8

DEX:8

AGI:8

VIT:8

INT:8

MND:8

スキル:【火魔術1】【水魔術1】【土魔術1】【風魔術1】【氷魔術1】【雷魔術1】【奪取】

加護:女神イリアス



このスキルは異世界チートに必須だからな。

だが解析スキルを手に入れないと何も出来ない。

相手の能力が判らないと発動しないからだ。


目の前の魔術師に使えばすぐ気付かれるだろう。

バレれば警戒されて、最悪拘束されるかもしれない。

機会を待つしかない。




訓練が始まって1ヶ月が過ぎた頃。


俺は今、週に数回は訓練と称して帝都にある《傭兵ギルト》で、傭兵と一緒に魔獣を狩っている。


レベルを上げるより、スキルが増えるのが楽しい。

だがバレない様にするのは大変だ。

スキルが使えなくなれば、当然俺が疑われるからな。

偶々遭遇した死に掛けの傭兵から、全てを頂く事が出来た。

それが分かってからは、大分やり易くなった。

傭兵ってのは得意気にスキルを使って見せてくれる。

2人だけで森へ行き、スキルが消えてしまえば後は魔獣の餌だ。


だがしばらくはその手も使えなくなった。

俺を疑う人間が出て来たからだ。

やり過ぎたか。

当分はレベル上げだけするしかない。くそっ。





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