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異世界は神様と共に  作者: 腹巻
22/42

22話 女神の聖剣

「別れるのは辛いけど、もう一生会えない訳じゃないんだからね。」

「うん。」


「はぁ~、それもう何回目だ?」

何度と無く繰り返されるやり取りに、呆れた顔でため息をつくラグナ。


ハル達はミサの叔父が待つ邸宅へ向かっていた。


「この辺りの筈なんだが。」

ラグナは組合で貰った地図を確認している。

たどり着いたのは、ある商人の屋敷だった。

ぐるりと囲む高い壁には、侵入防止の返しが付いている。

大きな鉄門には警備の兵士が2人立っていて、馬車や人が近付く度に臨戦態勢を取る。

その剣呑な雰囲気に、通行人も足早に去っていく。


「本当にここですか?」

「そのはずなんだが・・・」

過剰なまでの厳重な警備に、ミサを渡すのを躊躇してしまう。

こちらに気付いた警備兵が声を掛けてきた。

「失礼ですが、ミサ様をお連れ頂きましたラグナ様とハル様でございますか?」

「はい。そうです。」

肯定すると警備兵は身分証明書の提示を求めて来た。

組合員証を見せると、明らかにホッとした様子で、門を開けて中へ誘導してくれた。

門から庭に足を踏み入れると、外の雰囲気とはまったく違って、英国風ローズガーデンにしか見えない素晴らしい風景が広がっていた。

季節外れなのか、バラの花は満開とは言えないが、それでも甘い香りが心を楽しませてくれる。


建物までは少し距離があったが、美しい庭を見ながら歩くのは苦にならない。


玄関が見えた所で扉が開き、何人もの人がこちらに向かって走って来た。


「ミサ様!よくご無事で。」

先頭にいた初老の男性は、そう言ってミサの前に低頭する。

そしてこちらを向き直り言った。

「ラグナ様とハル様ですね。お待ちしておりました。


ぞろぞろと人を引き連れて、屋敷の中へ案内してくれた。


ギンも一緒に一室に通されたが、高そうな家具や調度品があり、とても落ち着かない。

すぐにメイドさんがお茶を持って来てくれたが、茶器も高そうで緊張する。

しばらくして先ほどの初老の男性と一緒に、背の高い男性が入って来た。

ラグナさんは男性を見て驚いていたが何も言わなかった。


「ミサ・・・」

「おじさま。」

ミサは声で判った様で叔父さんに笑顔を向けていた。

「本当に無事で良かった。申し遅れました。クロノス・クロスフィールドと申します。」

やさしく目を細めミサを見ていたが、こちらに向き直り頭を下げて言った。


「ハル・マサキと申します。オアイデキテコウエイデス。」

「ラグナです。今日はハルさんの付き添いで来ました。」

貴族の方らしいので、ガッロ直伝の挨拶をしたが、正解だった様だ。

ラグナさんにしては緊張して挨拶をしている。

小声で説明してくれたが、クロスフィールド家は公爵位を持ち、王家にも連なる血筋を持つ大貴族だそうだ。

だが続いて言われた事実はさらに驚くものだった。


「娘を助けて頂いてありがとうございました。」

「いえ、・・・娘?」





「おにいちゃん!またあえるよね?」

「絶対会いに来るよ。ミサ~」

「いつまでやってんだ。ほら、行くぞ!」

なかなか帰ろうとしないハルを、引きずる様に連れて行く。


「元気でなぁ~」

「もう聞こえないぞ。」

いい加減辟易していたラグナだった。




◇ ◇ ◇




クリスは王城内にある宝物庫にいた。


「陛下。何故こちらに?」

「いやぁ、ここにある武器で良さそうなものは無いかと思ってね。」

宰相ルーファスの案内で宝物庫に連れて来られたクリスは、国王アレクシスがいるのに気付き不審に思って声を掛けた。

「何があったのですか?」

「ああ、いやぁ、言いづらいのだが・・・」

国王が助けを求めようとルーファスを見ると、すぐ横にマリアが睨み付けていた。

「あ・・・」

「お父様!どう言う事ですか?」

いきなり現れた愛娘に、アレクシスは観念して今回の経緯を説明した。



帝国は勇者召喚の術を使用して異世界より、勇者3名の召喚に成功した。

そして聖剣が勇者専用の武器であり、王国が所有する《女神の聖剣》の所有権を主張した。


勇者から武器を取り上げる行為は、さすがに国王であっても言い出しづらかった。

特に娘のマリアには知られたくなかったのだ。


「何故そんな要求を飲まねばならないのですか!」

「人類連合各国の署名があるのだ。」

「どうせ帝国が小国を脅して強引に書かせたものに決まってます!」

現在、人々が暮らす国は小さな国も合わせると、30前後あると言われている。

人類連合はそういった国々が、大国による理不尽な行為から身を守るために、勇者によって作られた機関であった。

国連のようなものである。

ほとんどが多数決で決まる為、小国の有利に働く事が多い。

「それにしても勇者召喚ですか。帝国は世界の覇権を本気で狙っているのでしょいか?」

この事はある程度予想はしていたが、早すぎる展開に

困惑は隠せない。

「聖剣を渡せだなんて、あの剣は女神イリアス様から授かった我が国の至宝でもあるんですよ!渡せる訳ないじゃないですか!」

「いや、数年貸し出すだけなのだ。」

「それでもです!」



クリスは魔王との戦いの後からずっと悩んでいる事がある。


魔王の持つ圧倒的な力の前では、自分はあまりにも無力だった。

今まで勇者の名に恥じぬよう、研鑚を積んできた。

歴代勇者と比べても負けないという自負もある。


それなのに。

魔王には手も足も出なかった。

仲間に助けられ、聖剣の力に助けられて、なんとか魔王を倒す事が出来た。

だが勇者として、人類の希望であり続けなければという思いは、更なる力を求めずにはいられない。


もし本当に新たな勇者が現れたのなら、これが良い切っ掛けかも知れない。

修行の旅に出るのも良いだろう。

ハルさんの訓練もあるし、アルも誘うのも良いかも。


「陛下。少しよろしいでしょうか。」




クリスは聖剣を返却した。

更なる力を手に入れる為に。


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