21話 報せ
「ぐおおぉぉ蛮族めーー!!」
王城でも特に機密性の高い情報を扱う王の執務室、そこには珍しく怒号が響いていた。
国王アレクシスの元に届いた要求は、とても容認出来るものでは無かった。
「密偵にも詳しく探らせているところです。」
いつも冷静な宰相ルーファスも、表情が引きつっているのが分かる。
「帝国は何を考えているのだ!」
「魔王が倒された今となっては目的が明確ですよ。」
「クリスに何と言っていいか。」
「アリス様にもs」
「それを言うな!」
頭を抱えるアレクシスの気持ちも理解出来るだけに、帝国に対しては怒りの感情しかない。
明日、登城するクリスにどう説明するか。
ルーファスに丸投げする気満々なアレクシスだった。
◇ ◇ ◇
王都内の貴族邸宅。
「戻りました。」
何も無い空間から声がして、徐々に朧気な輪郭が現れた。
「ご苦労であったな。ヒュキ」
貴族らしく豪奢な服を身に纏い、黒い人影にやさしく言葉掛けた。
主の労いの言葉に、無言で頭を下げる。
「それで、ミサ様のご様子は如何でしたか?」
主の隣に立つ執事服を着た初老の男が、姿を現したヒュキと呼ばれた男に聞いた。
「はい。ミサ様は今、勇者達と行動を共にしています。」
「では明日は勇者殿も一緒にいらっしゃるのかな?」
「いえ、それが・・・」
ミサの護衛を任されたのはハルと言う男で、魔王城から救出された人間の1人だと言う。
彼はずっと2人の後を追いかけて来たらしい。
ミサが母親の墓参りへ行った時、牧場の留守番をしていたのはヒュキであった。
組合員が牧場を訪れた時に、ミサが助けられた事を知った。
そして爺さんが殺された事も。
彼は道中、危険な魔物や猛獣を狩りながら、2人を見守り続けた。
途中、仲間になった狼に見つかってしまったが、敵では無いと判断してくれたらしい。
ただ不思議だったのは、ミサと狼のスキルが異常に増えていた事と、ハルには解析がまったく効かない事だ。
どうも彼らにとって、都合が良い力が働いている。
そんな気がしてならなかった。
その後、勇者達と合流したのを確認して、彼は監視を離れた。
報告を聞き終えた主は、赤い眼から大粒の涙を流していた。
初老の執事は嗚咽の収まらない主を心配して、薄手の布を主の背に掛けて、ヒュキと一緒に部屋を出ていった。
「そうか。あの方が・・・」
◇ ◇ ◇
クリスは朝から忙しかった。
愚図るハルを送り出し、自分は陛下の呼び出しで城に向かう。
ハルにはラグナを護衛に付けてあるが、私より年上か?と思う程世話が焼ける。
悪気は無いのだろうが、ミサの方がよっぽど大人だ。
最後はミサに促されて、徒歩で指定の屋敷に向かって行った。
「ずっと一緒に居たんですから、さみしいんでしょう。」
涙目でミサを抱えて出ていくハルを、生暖かく眺めながらマリアが言っていた。
「我々もそろそろ行こう。」
組合総本部長のクラウスに伝言を頼む程、緊急の用事とはなんだろう。
クリス達を乗せた馬車は、王城に続く凱旋橋を渡り、聳える城門を抜けた。
世界一美しいと謂われるこの城は、国の名にもなっている湖に浮かぶ水上要塞だ。
クリスは国王に会う為、謁見の間へ急いだ。
扉の前には宰相ルーファスが立っていた。
23話から話は帝国に移ります。
ただいま執筆(笑)中ですので間隔が少しだけ開きます。




