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異世界は神様と共に  作者: 腹巻
20/42

20話 オアイデキテコウエイデス

ミルドレイク王都の外壁が見えて来た。


街道から続く大門の前には、入場を待つ長い行列が伸びている。


行列は2つに別れていて、半分開いた大門を馬車が通っていく。

徒歩の人は門の横にある、片開きの扉から入るみたいだ。

王様とかの偉い人が通る時は、門を全開にして通るんだろう。


衛兵は優先的に通してくれると、言っていたが断っていた。

残念。VIP気分を味わって見たかった。


検問の効率は良く、30分位で馬車は門を通過した。


門を抜けると、広場の様な場所に出た。

馬車が並んで荷の積み降ろしをしている。

広場を囲む様に建っているのは倉庫だろうか。


荷捌場を抜けると、放射状に3本の道が伸びている。

その真ん中、一番広い道を行くと、王都の街並みが見えて来た。

統一感の無い建物、カラフルな色彩の品を列べている店、この雑多な雰囲気に、心が高揚してしまう。


そんな商業区の先に自由組合の総本部がある。


職員数約2千人、組合員数は全世界で50万人を超える。

創立は千年前で、勇者が仲間と共に創った組織だ。


馬車は組合総本部の前に停車した。


僕はリサとギンを連れて、クリスと共に組合の入口に向かった。

組合の建物は石造り3階建てで、すぐ隣には木造の建物が併設されていた。アヤトの王城に似ている。


クリスは近くの職員をつかまえて話をしていたが、そのまま奥へ入って行ってしまった。

僕とミサは行列の最後尾に並ぶと、前にいたおっちゃんが声を掛けてきた。

「ありゃあんたの飼い犬か?」

「犬じゃ・・・まあそうですよ。」

「か、噛んだりしないか?」

犬が苦手なんだろう、声が震えている。


「大丈夫ですよ。あ、でも頭の良い奴ですからね、悪口とか言われたら・・・ガブッ」

と言っておっちゃんの脇腹を指で掴んだ。

「ギャァァー!」

やり過ぎた。こんなに怖がるとは思わなかった。

でもミサが笑ってたからいいか。

その後おっちゃん達に、ミサが構い倒されていた。


王都の総本部であっても、組合員達は変わらず真面目で良い人が多い。

さほど時間も掛からず順番が来たので、おっちゃん達も名残惜しそうだ。


受付で用件を伝えると、組合証の提示を求められる。

アヤトでは使う機会が無かったので、荷袋の奥にしまい込んでいたんだった。

周りに白い目で見られながら、荷物を床にひろげて組合証を取り出した。

職員は顔をしかめながら受け取ると、書類をめくって確認している。

アヤト国では木札だったが、この国では紙を使っているみたいだ。


確認が終わると受付職員の案内で建物内の一室に通された。

ここで待つようにとの指示だ。

見回しても机と椅子が4脚あるだけの何もない部屋だった。


どのくらい時間が経ったのか、時計が無いので分からないが、待ちくたびれて寝てしまった。

起きた時には薄暗くなっていて、お腹も空いて来た。

ギンには干し肉をあげて、僕とミサは焼き栗を食べたが、人が来る気配はない。

誰か呼びに行こうかとも思ったが、旅の疲れが出たのかそのまま眠ってしまった。



その時、僕達がまた行方不明になったと、大騒ぎになっていたらしい。


朝、掃除に来たおばちゃんが僕達を見つけ、無事クリスさん達と合流する事が出来た。


聞けば、職員が違う部屋に待たせたまま帰ってしまったそうだ。ひどいな。

部屋で待っていたクリスも、いつまで経っても来ないので心配になり、職員達と一緒に街中を探してくれたらしい。心配掛けてごめんなさい。

朝、出勤してきたその職員は、勇者まで巻き込んだ大騒ぎに、顔を青くして謝っていた。

少し可哀想だったな。

ちょっとした意地悪だったらしいが、何もしないで寝てしまった僕にも責任があるからね。



これでようやく任務が果たせる。

昨日と違って豪華な家具の揃った広い部屋で、クリスさんとアニエスさんに挟まれて座っている。

コンコンとノックの音と同時に扉が開き、白いロングコートを着た長髪の男性が入って来た。

クリスさん達が立ち上がったのを見て、慌てて立ち上がってお辞儀をする。


「やぁ、昨日はすまなかったね。」

「軽い!」

僕を見て気さくに声を掛けてきた男性に、アニエスさんが嗜める様に言う。


「ははは、アニーは相変わらずだな。」

アニエスさんをアニーと呼ぶって事は親しい関係なんだろうな。

「話を進めて貰えますか。」

クリスさんが話を促す。

「そうだったね。私はこの組合総本部の長でクラウスと言います。ようこそ王都へ。」

クラウスさんは総本部長だったのか。

「ハルと言います。オアイデキテコウエイデス。」

貴族に会ったらそう言えと、ガッロさんに教えてもらった。


挨拶を済ませると、ミサの叔父さんの家を教えてもらった。

だがすぐに訪ねる事は出来ないらしく、あらかじめ先触れを送って相手の返事を待つそうだ。

ミサの叔父さんは上級貴族で、気軽に訪ねたりしてはいけないらしい。


クリスさんとアニエスさんは、このまま残って話をするそうだ。


僕とミサは部屋から退出して、拠点で連絡を待つ事になった。

外に出るとラグナさんが馬車で待っていてくれた。


マリアさんが食事を用意してくれているので、しばらくお世話になる勇者の拠点へ向かう。


場所は商業区の中でも高級店が建ち並ぶ一角、いわゆる高級住宅街にある。

多くの貴族や裕福な商人が屋敷を構えるこの街は、貴族街より地価が高く審査も厳しい。

大金持ちの最終目標がこの街に住む事らしい。

さすが勇者だ。


3ヵ所ある検問はすべて顔パス。意外にザルかも。


大きな門が開き馬車が入って行く。

オルガーノの拠点ほど広くはないが、白亜の豪邸がそこにあった。

馬車が止まって外に出ると、腰の曲がった老人が馬車を引いて行ってしまった。

ラグナさんの後に続いて豪邸に入ると、中はガランとして装飾品の類いは見当たらない。

案内された部屋も、ベッドと箱が数個積んであるだけの、何もない部屋だった。


ここが今日から生活する部屋か、まずは色々買い揃えないとな。


と考えていたら。

「ここが俺の部屋だ。」

「・・・・・・」


ラグナさんは隣の部屋へ行くと扉を開けて言った。

「ここがハルさんの部屋だ。」

「・・・はい。」


部屋の中を見ると、ベッドやテーブル、椅子、棚など必要なものは大体揃っていた。

「ありがとうございます。」

「隣が俺の部屋だから何かあったら言ってくれ。」

そう言ってラグナさんは、自分の部屋に入って行った。


程なくしてノックがあり、マリアさんが食事の用意が出来たと呼びに来てくれた。


食堂に行くと大きなテーブルをに、美味しそうな料理が沢山並べられている。

クリスさん達も戻って来て、ミサとの最後の食事を楽しくする事が出来た。


ミサの叔父さん宅へは明日の昼前に行く事になった。

今夜はギンを枕にミサと一緒に寝た。



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