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異世界は神様と共に  作者: 腹巻
18/42

18話 黒歴史


「市場に行ってみたいです。」

「わかった、案内するからあんまり俺から離れるなよ。」

「ありがとうございます。ミサ、良かったなー。市場で美味しいもの色々食べような。」

「うん、楽しみー。」

「ギンもな。」

「ウォン」


次の日、ラグナさんの案内で、市場を見て回っていた。

屋台が建ち並び、お祭りの様な人混みに気分は高まる。

「あれは何ですか?」

「ん~芋かな。」

ラグナさんが適当に答えるが、違っている事が多く、食べて見ないと分からない。

「残念でした。鶏肉ですよこれ。」

「おじちゃん、はずれ。」

「俺はまだ23だ!」

だが、それが楽しかった。

僕とミサは笑いながら、ラグナさんに答え合わせをする。


美味しそうな匂いに引かれ、もう何度目かの質問をした時だった。

「あれは?」

「・・・・・・」

返事がないラグナさんを見る。

視線の先には、お供を引き連れた、身なりの良い太った男が見える。

「どうしました?」

「いや、何でもない。」

そう言ってラグナさんは目線を反らした。


男の通る先は、波が引くように、人混みが割れる。

偉い貴族の人かもしれないと、遠目で見ていた。


その時、店の前で何かを売っていた少年が、男に気付かずぶつかりそうになっていた。

「家畜の分際で私に触れるとは!」

そう言ってお供に合図を送る。

「すみません、すみません。」

少年の母親らしき人も必死に謝っている。


お供の大男は少年を両手で掴むと、くるくる回転して勢い良く投げ飛ばした。

少年が軽いのか、大男が怪力なのか。

地面に直撃すれば怪我では済みそうも無い高さだ。

弧を描いて飛んでいく少年を見て、周りの女性達は「キャー」と声を上げている。

興味を無くしたのか、男はお供を引き連れ行ってしまった。

飛ばされた少年の方を見ると、いつの間に移動したのか、ラグナさんが抱きかかえていた。

地面に激突する前に受け止められたらしく、少年は助かった様だ。



「ありがとうございました。」

と言って少年は母親と帰って行った。

「あれって誰です?酷い事しますね。」

「あのゲス野郎はこの街の領主の息子だ。」

吐き捨てるように言った。

「そして、投げたクソは・・・」

そう言い掛けた時、先程子供を投げた大男が、こちらを見て立っていた。

「久し振りだなぁ、レジー、ああ、今はラグナって名乗っていたんだったか。」

「・・・ドルク」

「国を逃げ出した弱腰レジーが、今は勇者の仲間の英雄様だもんな、笑えるぜ。

「・・・・・・」

大男は嫌らしい笑みで、ラグナさんに近づき耳元で、何かを囁き去って行った。


「大丈夫ですか?」

「ああ、何でもない。それより他に行きたい所はあるか?」

そう言って笑顔で案内を再開した。


夕方になり、街灯に明かりが灯り始めた頃、ミサが眠ってしまったので、宿まで送ってもらい帰って来た。

「今日はありがとうございました。」

「ああ、また明日な。」

そう言ってラグナさんは、街の中に消えて行った。


何となく昼間の事が気になっていた。

昔の知り合いみたいだったが、友好的な雰囲気ではなかった。

宿には戻らずミサを抱えたまま、ラグナさんを探す事にした。


昼間、子供を助けた空き地に行くと、ラグナさんとドルクと呼ばれた大男が、2人で話しているのが分かった。


何の話をしているのか気になる。

少し近づくと植込みに、大勢の人間が潜んでいるのが分かった。

ヤバそうな気がする。大勢で襲うつもりなのでは。

誰かに知らせないと。

「ギン、急いで勇者さん達を呼んで来てくれないかな。」

ギンは「ウォフ」と小さく吠えると走り出した。

更に近づき耳を澄ますと、2人の会話が聞こえて来た。




「なぁレジーよ、本当に戻って来る気はないのか?俺が許すって言えば、仲間の誰にも文句は言わせないぞ。」

「・・・盗賊の仲間になる気はない。」

「あの時、お前に斬られたハンもキムも、帰って来て欲しいって言ってるんだぜ。」

「・・・・・・」


「そうかこれだけ言ってもダメか。」

大男が片手を挙げると、100人近い男達が、ゾロゾロと姿を現した。

それぞれ、手には武器を持ち、ラグナを囲む様に移動する。


「レジー、久し振りだなぁ。お前にやられた傷が痛むんだよ。」

「キム・・・」

「俺も夢に見るんだぜ、お前の死ぬ姿がな!」

「ハン・・・」

「お前ら、相手は英雄様だ油断するなよ、全員で押し包め!」

100人近い男達が、ラグナに殺到して行く。


ラグナは覚悟を決めたように、一人づつ大斧で殴り倒して行く。

「いつまでもつかな?」

ドルクはいやらしい笑みを浮かべながら、部下に指示を出している。


低い木に隠れて様子を伺っていると、不意に肩を叩かれた。

ドキッとして振り返ると、すぐ横でクリスがラグナの方を見て睨んでいる。

腰の剣を握る手に力が入っているのが分かった。

いくら英雄ラグナでも、100人相手では分が悪いだろう。

しかし、クリスはその場に留まり様子を伺っている。



            ☆



もう半分は倒しただろうか。

既に体力は限界に近く、武器を持つ手に力が入らなくなってきた。

まだこの後に、盗賊の首魁ドルクが残っている。

状況は相当に悪いと言っていい。

敵が隠れているのは分かっていたが、まさかこんな数がいるとはな。

皆に内緒で来た事に後悔は無い。

クリス達には知られたくない過去だ。

盗賊行為をした事は絶対に無い。

だが、昔の仲間が盗賊仕事をした時、その場にいた者全員を、斬り倒して逃げてしまった。

この事が世間に知られれば、在らぬ誤解を招くだろう。

クリス達にも迷惑が掛かる。

今回はその精算するつもりだった。

例え殺されても、悪には屈しない。

俺にとって勇者の仲間である事が、なによりの誇りなんだ。



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