死闘
遭難して3日が経ったが、僕らは未だに森をさまよっていた。
とにかく歩きづらいのだ。
森の中は薄暗く、日が当たらないので、方向感覚が狂いやすい。
その上、倒木だらけで、たまにある獣道が救いだが、高確率で獣に遭遇する。
鹿、猪、アリクイ? 遭遇しても慌てず道から外れ、木に隠れれば何もせず行ってしまう。
熊は怖いので歌を歌いながら歩いている。曲はもちろん童謡とアニソンだ。
ミサにも分るように異世界語に翻訳している。しかし歌いながら歩くのは結構辛い。
森を抜けると背よりも高い草が生い茂っている。
鉈で刈ったり、踏み分けながら少しづつ進むしかない。
「ミサ、疲れてないか?少し休むか?」
「まだへいきだよ。」
ミサは歩きにくい道を、小さい身体で一生懸命歩いている。
口数も減って来た。
本当にそろそろ限界に近いかも知れない。
しばらく進んだ所で少し開けた場所に出た。
「ここで休憩しよう。」
「・・はい」
ミサの元気の無い返事を聞いて、無理をさせ過ぎたと反省した。
まだ日は高いがもうここで野営の準備をしよう。
水分補給をしたり、顔や手を洗ったりした。
こういう時、魔術はありがたい。
薪を集めようと辺りを見回すと、遠くで一匹のウサギがこちらを見ているのが判った。
なんとか捕まえられないかと考えていたら、なんとこちらに駆けてくるのが見えた。
ラッキーなどと安易に考えていたのが悪かったのか、次第に近づくウサギの姿は僕が想像していたものではなかった。
え?!ウサギってこんなに大きかったか?
僕が鉈を構えた直後、柴犬サイズのウサギが、僕を目掛けて弾丸のように飛んできた。
近くで見るウサギの顔は、牙が生えていて額には大きな瘤があった。
咄嗟に避けたが、直ぐに方向転換して、こちらに向かって跳躍する。
この世界のウサギは相当狂暴みたいだ。まともに喰らったら大怪我するだろう。
幸い真っ直ぐ飛んでくるだけなので、対処しやすい。
避ける際、ウサギに合わせて鉈を水平に振り抜く。
ガンッと言う音と共に、手にすごい衝撃が来る。
ウサギの頭に鉈が弾かれたんだ。硬っいなぁ。
手が痺れて鉈を落としそうになる。
ウサギは諦める事なく、頭突きを繰り返している。
なんとか回避していると、しびれていた手に力が戻って来た。
気持ちも落着き、考える余裕も出て来た。
これだけ見てれば目も慣れる。次は決めてやろう。
頭から血を滲ませながらも、真っ赤な目をしながら飛んでくるウサギ。
真っ直ぐ飛んでくるだけなら難しい事はない。
僕は鉈を撃ち下ろし気味にウサギに合わせる。
身体が大きい分当てやすい。
ガシュっとウサギの首筋にヒット。
手応えはあまり無い。
首から血を流しながらも諦めないウサギ。
さっきより速度が遅い。
落ち着いてウサギの首に鉈を撃ち下ろす。
今度はクリーンヒット。
ウサギを見れば明らかに弱って、もう飛んで来そうもない。
鉈を構えたままウサギにゆっくり近づく。
血を流し過ぎたのか、その場から動かないウサギ。
しばらくの間、動かないのを確認して、首筋に鉈を力一杯降り下ろした。
ウサギ肉ゲット。
干し肉意外の肉は久しぶりだ。
解体のやり方は組合で習ったが、実際出来るかは別だった。鶏のだけどね。
皮が剥がしづらそうだ。
解体は明日にしよう。




