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あわわ  作者: ななし
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老人のはなし

〘老人のはなし〙


連れてこられたばかりの若い人を見つけた。

困惑しているらしく、わたしは話をすることにした。

若い男性はこう聞いてきた、「この世界は理想郷なのか?」と。

わたしは頷くと、彼は驚愕した。

当たり前だろう。

わたしはまだ幻想哲学装置に神経を繋がれていない。

この世界の仕組みはこうだ、まず、この世界に連れてこられる。

しかしいきなり装置を繋がれるわけじゃあない。この世界はあまりにも理想郷とは程遠い歪んだ世界だ。

理想郷だと誘われ騙されやってきた人間達は失望するだろう。

そしてその失望は、怒りや絶望や困惑になる。それがこの世界で溜まり続け一定を超えたとしよう。するとその負の感情が幻想哲学装置のエネルギーとなり、神経に繋がれ、「天使」になる。

箱庭たちは幻想哲学装置に繋がれた人間達を天使と呼んだ。

彼らはこの世界ではあまりにも不似合いな幸せそうな笑顔ばかりを浮かべていた。

そして、理想郷の食料として食べられていく。

それは彼らの中の幸せがこの世界で溜まり続け一定を超えたとき、今度は理想郷の養分として消えていくのである。

そして箱庭たちはいう。

「美味しかったね」と。

わたしはその会話を聞いてしまったが、バレなかったのは運の尽きだ。

この老いぼれがなかなか幻想哲学装置に繋がれないのも、老い先が短いから生きることに既に諦めているからだろう。

だが、この若者は感情の揺れが大きいように見えた。

きっとすぐに、天使になってしまうだろう。

あの装置は恐ろしすぎる。

人々に幸せを与えるのは確かだ、しかし、所詮中身は悪魔の技にすぎない。

そしてそのうち人類を食い尽くすのだろうか…。

だがもうここに来てしまった以上出口はない。この理想郷は入口はあるが出口はどこにも存在しないのだ。

逃げられない。

あたりの亡霊達は、まるで嘆き悲しむようにあたりを浮いている。

この存在はよくわかってないが、きっと食われたもの達の魂なのだろう。

わたしのような老人がもう神経を繋がれてもなんとも思わないが、若者にはせめて生きて欲しい。

「気をつけるんだぞ。」

「……。」

わたしの言葉は、こんな歪んだ世界の中で真っ直ぐに届いたのかどうかは、分からなかった。

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