表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最下位を装う元剣聖、学園1位の理事長令嬢が公然と俺にだけ甘すぎて困ってます  作者: あざね
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/7

2.日常の中に、微かなズレ。






「おい、聞いたか? 我妻さんと劣等生、一緒に遅刻してきた……って」

「……はぁ? 劣等生が遅刻するならともかく、なんで我妻さんも?」

「分からねぇよ。なんでも二人で一緒に走ってきたらしいぞ」

「お前それ、まるでさ――」



 ――完全に失敗した。

 俺と梨花はあの後、二人揃って眠りこけてしまった。

 母親が様子を見にこなければ間違いなく、午前中の授業には欠席することになっていただろう。幸い二時限目の合同授業からは参加できそうだが、昼休みに職員室へ呼び出しを食らうのは確定だった。



「……しかも、変に噂になってやがる」



 クラスメイトの視線が鋭くこの身に突き刺さる。

 劣等生の俺と優等生であり高嶺の花である梨花が、二人で校門に駆け込んできたのだ。噂にならないのも無理な話かもしれないが、陰口のように噂をされているのは気分がよろしくない。

 そう思いながらも、俺が次の授業の準備を進めていると――。



「えへへ……噂になってるね」

「学校ではむやみに話しかけるな、って言ってるだろ?」

「今さらじゃないかな。幼馴染みってことは、知られてるんだし」

「そうだとしても、妙なのはそっちも困るだろ?」

「困らないよー?」

「……なに喜んでんだよ、困れよ」



 その幼馴染みが、どこか嬉しそうに話しかけてきた。 

 俺は思わず一瞬だけ硬直し、彼女の笑顔から目を逸らして少し肩を落としながらため息をつく。すると梨花が不満げに頬を膨らすので、慌てて話題を変えることにした。



「そういえば、今日の二限って合同授業らしいけど、なんなんだ?」

「初心者向けのダンジョンで、魔法の実習だよ!」



 その説明があったから遅刻できなかったの、と彼女は唇を尖らせながら言う。

 そんな幼馴染みの訴えを軽く流しながら考えた。――なるほど。だからクラスの違う彼女が、俺の教室まで迎えにきたのか。

 俺と梨花は学年こそ同じだが、成績の差があるために教室が違っていた。

 彼女は俗にいう将来有望な生徒の集まるクラスで、こちらは言うまでもない。



「でも、それくらいなら焦らなくても良いんじゃないか?」

「担当の先生が、楠木さんだとしても?」

「げ……アイツかよ」



 俺は梨花から与えられた情報に、思わずげんなりとしてしまった。

 楠木というのは、俺らの学年の主任教員。

 ただ、少しばかり難があって――。



「楠木のやつ、ネチネチと小言が多いんだよな……」



 何かと生徒に難癖をつけては、嫌味を口にするのが趣味とでもいわんばかりの人物だった。そのため学生たちからは、陰で『粘着物質』と呼ばれている。

 あるいは本人もそれを承知しているだろうけど、改める様子は欠片もなかった。

 しかし、楠木が絡むなら早々に移動した方が良いだろう。



「とりあえず、行くか」

「……うん!」



 そう思って俺が言うと、梨花は満面の笑みで頷くのだった。







「えー……今回のダンジョンは、政府から認定を受けている初心者専用の安全なものであるが――」



 ――ダンジョン前に、生徒たちが集合している。

 その前で小柄でメガネをかけた痩せた初老の男性こと、楠木教員が話していた。だが、真剣に彼の話へ耳を傾ける生徒は少ない。なにせ今日の授業で入るダンジョンは、訓練用と呼んでも過言ではないからだ。

 日本政府認定というのは要するに、教育教材として認められている、という意味。

 出現するのはスライムに限られるので、事故の起こりようがなかった。



「あー……こんなの、合同でやる必要あるのかよ」

「これで訓練になるのって、最下級の生徒たちだけだろ?」



 そんな授業に対して、特に不満を口にするのは優等生クラスの生徒たち。

 たしかに、彼らにしてみれば暇で簡単なものに違いなかった。

 かくいう俺もそう思い、少し肩の力を抜いている。



「それでは各々、怪我のないように注意しながら中を進むように!」

「はーい」



 そして楠木の話が終わり、学生たちが順番にダンジョンへ入っていく。

 俺たちのクラスは最後に足を踏み入れることになり、その中でも最も成績の低い自分は最後尾で中に入ったのだが――。




「――――ん?」




 その瞬間、何か違和感を覚えた。

 ホント微かな歪みやズレ、とでもいえばいいのか。言語化はなかなかに難しいのだが、魔力の流れが想像よりも速い……。



「まぁ、気のせいか……?」



 俺はそこまで考えてから、そう思うことにする。

 そして、少し小走りに先を行くクラスメイトのもとへ向かうのだった。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ