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勇者パーティーから追放されたけど金髪巨乳にTSしたのでざまあしてやります  作者: かわうそ


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26.消去法で俺

 翌日から聞き込みが始まった。

 まずはマルクスフェルト家の使用人への聞き取り。アルたんと俺で貴族の屋敷を訪れた。

 屋敷は町の北区にある石造りの立派な建物で、正面に掲げられた家紋は鷹と薔薇の組み合わせだった。鉄柵の門を通され、砂利を敷いた長い前庭の小道を歩く。手入れの行き届いた植え込みの薔薇は季節外れにも拘らず幾輪かが花をつけていて、魔術的な温室管理がなされているらしかった。門番の兵士に通され、応接室で待つこと二十分。応接室は深紅の絨毯と重厚な樫の家具で統一されていて、壁には少女の肖像画が飾られていた。柔らかな麦色の巻き毛に、水色の瞳。それがクラウディア嬢なのだろう。穏やかそうな微笑みを浮かべた、十九歳の令嬢。

 現れたのは年配の女中だった。目の下に深い隈があり、眠れていないのが見て取れる。指先がわずかに震えていて、差し出された茶杯もかちゃかちゃと音を立てた。


「クラウディアお嬢様は、最近外出が増えておられました。以前はそんなことなかったのですが……」

「外出先はどちらですか」

「それが……おっしゃらなかったのです。夕方に出かけて、夜遅くにお戻りになることが三回ほど。その日は決まってよそ行きのお召し物で……」

「よそ行き。つまり、普段は着ないような服で?」

「はい。お嬢様とわからないように、と……」


 女中の目が潤んだ。主人を失った悲しみが、声に滴となって滴っている。


「お嬢様は……優しいお方でした。必ず、見つけてくださいませ」


 アルたんが静かに「必ず」と答えた。勇者としての覚悟が、その短い一言に篭められていた。


 クラウディア嬢が最後に目撃されたのは、町の南東に位置する繁華街だった。変装していたことを考えると、何か人に知られたくない理由があったのだろう。──脅されていたのか、それとも、自らの意思で足を運んでいたのか。


 次に、俺とクルトで繁華街の聞き込みに回った。クルトは裏社会の情報に明るい。路地裏の安宿や飲み屋を回り、顔見知りらしい連中に声をかけていく。普段の無口なクルトとは別人のようだった。必要な時に必要な言葉を使い分ける──シーフとしての処世術なのだろう。


「クルトって、こういう場所に詳しいんだね」

「……シーフだからな。情報は命だ」


 それだけ言って、次の店に入っていく。その背中を見ていたら、また少しだけ──クルトのことが気になる自分がいた。路地で助けてくれた時から、クルトに対する意識が変わっている。エミールの歩き方を覚えていた──それが、俺の胸を締めつける。


 三軒目の酒場で、有力な情報が得られた。


「お嬢さん種の行方不明かい。実はな、その嬢ちゃんだけじゃないぜ。ここひと月で、女が四人消えてる」


 カウンターを拭きながら、酒場の親父が声を潜めた。がっしりした体格の初老の男で、傷だらけの腕は元冒険者を思わせる。俺の隣に座ったクルトが、瞳だけで「続けろ」と促す。


「四人?」

「ああ。最初は二週間前だ。冒険者仲間の女魔術師が、夜に繁華街で飲んだ帰りに消えた。次に、商家の若女将。それからギルドの受付嬢が一人。そしてその貴族のお嬢さんだ」

「共通点は?」

「全員、美人だったってことだな。それと、夜の繁華街で最後に目撃されてること。衛兵は一応調べたらしいが、手がかりなし。人攫いか、って噂は流れてるがね」

「もう一つ聞きたい。消えた女たち、消える前に誰かと一緒にいるのを見られてないか」


 クルトが静かに問うた。親父が眉に皺を寄せる。


「そういえば、受付嬢の子が消えた夜──身なりのいい男と歩いていたって話を聞いたな。中年くらいの、物腰の柔らかい紳士だったとか」


 クルトと目が合った。同じことを考えている。紳士の顔付きで美女に接近し、信用させてから攫う──手口の丁寧な組織的犯行だ。


 全員、美人。全員、夜の繁華街。

 パーティーに情報を持ち帰って共有すると、全員の顔が険しくなった。


「連続失踪事件ってわけね。しかも美人ばかり」


 リーゼが腕を組んで考え込む。翡翠の瞳に映る感情は、怒りだ。同じ女として──攫われた者たちへの義憤が、小さな体から溢れている。


「人身売買の線が濃いな。美女を攫って、闇市場に流す──この大陸ではよくある手口だ」


 クルトが暗い声で言った。


「だとしたら、犯人を見つけるには──」


 アルたんが全員を見回して、言った。


「囮を出すしかないな」


 沈黙が落ちた。

 全員の視線が、じわりと一箇所に集まる。


「…………」


 集まった先は──俺だった。


「ちょっと待って」

「消去法だろ。囮に使えるのは、犯人が食いつくほどの美女でなければならない」


 アルたんが真面目な顔で言う。


「リーゼは──」

「言い方に気をつけなさいよ」


 リーゼが先手を打って釘を刺した。杖の先端がぱちりと火花を散らした。


「リーゼは見た目が若すぎるし、大人の色気が足りない。繁華街の夜に自然に溶け込めるのは、エミだ」

「自然に溶け込めるって、わたしはもともとそういう場所の人間じゃないんだけど!?」

「だからこそ訓練する。フィーネに相談して、それらしい格好と振る舞いを教わろう」


 アルたんの計画は明確だった。エミが囮となって夜の繁華街を一人歩きし、犯人グループを誘い出す。アルたんとクルトが影から尾行して、犯人が接触してきた時点で挟み撃ちにする。


「拙僧も影からの護衛を──」

「お前は待機だ。聖職者の格好では繁華街で目立ちすぎる」


 ゲオルクが残念そうな顔をした。十中八九、「エミの煽情的な格好を間近で見たかった」という理由だろう。却下で正解だ。


「ははっ、俺も待機だろ? ははっ」

「カールはあの体格で繁華街をうろつくと二秒でバレる」

「ははっ、だよな。ははっ」


 悲しいほどの意思疎通の速さだった。


「あたしはどうするの」


 リーゼが聞いた。


「リーゼにはギルドとの連絡役と、万が一の時の救援部隊を頼みたい。ゲオルクとカールと合わせて、三人で即応体制を組んでくれ」

「……わかった」


 リーゼは一瞬だけ俺を見た。心配の色が宿った翡翠の目と、短く交わした視線の中に、「気をつけて」という言葉が読み取れた。朝の約束──小指を絡めた約束が、その瞳の奥でちらりと揺れた。


「じゃあ──まず、衣装だな」


 アルたんが言うと、フィーネが厨房からすっと出てきた。カウンターに寄りかかり、腕を組んで不敵に微笑んでいる。


「聞こえてたわ。任せなさい。あの子を繁華街の花にしてあげる」


 ──恐ろしく不穏な宣言だった。

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