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勇者パーティーから追放されたけど金髪巨乳にTSしたのでざまあしてやります  作者: かわうそ


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17.悪くない一日を終える俺

 ギルドに戻って依頼の完了報告をすると、受付嬢は信じられないという顔でキメラの素材を検分した。


「これは……変異キメラの魔石核? B級依頼でこれが出たんですか?」

「報告が必要だと思って。遺跡の深部に棲息していた。最奥部は危険度の見直しが要る」


 アルたんが冷静に説明する。受付嬢は何度も頷きながらメモを取り、報酬に加えてキメラ素材の買い取り額を提示した。金貨三十枚の報酬に加え、素材の売却で金貨五十枚。合計八十枚だ。六人で割っても一人あたり金貨十三枚と端数──冒険者として、十分すぎる稼ぎだろう。

 いや待て。俺にも分配してくれるのか? 正式にパーティーに入ったとはいえ、今日が初日なのに?


「当然だろ。お前がいなかったら全滅してたんだから」


 アルたんが当たり前のように言った。

 ……ほんと、こういう時のアルたんは好感度が高いんだよな。追放した時の言い草を思い出さなければ。


「拙僧の取り分は、エミ殿への治癒費として上乗せを──」

「それ成り立たないでしょ。あんたが治癒したのは義務でやったことじゃん」


 リーゼがゲオルクの小遣い稼ぎを即座に潰した。有能。


 宿に戻ると、もう日はとっぷりと暮れていた。全員がそれぞれの部屋に引き上げていく中、廊下でリーゼとすれ違った。


「あ、リーゼ」

「なに」


 リーゼは自分の部屋の扉に手をかけたまま、肩越しに振り返った。藍色のローブに汚れと焦げ跡がついていて、それが今日一日の戦いの痕跡を物語っている。


「明日からの魔術訓練のことなんだけど、何時から──」

「そうね、今日の疲れもあるでしょうから明日は午後からでいいわ。13時に東門の外に広場があるから、そこに来なさい。遅刻したら置いていくから」


 こちらが言い終える前に答えた。もう決めていたのだ。


「えっ、もう場所まで決めてたの?」

「当然でしょ。教えるって言ったんだから、本気なの。あんたみたいに制御もできない大魔力持ちを放っておいたら、街ひとつ吹き飛ばしかねないじゃない」


 街ひとつはさすがに大袈裟だと思うけど、たぶん否定はできない。


「動きやすい格好で来なさい。あと、水筒と着替え。汗かくから」

「着替え……?」

「魔術の基礎訓練はね、想像以上に体力を使うの。学院の一年生はみんな初日に泡を吹いたわ」


 リーゼが不敵に笑った。それは少し前までのライバル心とは少し違う、師匠然とした余裕の笑みだった。こいつ、教える側に回ると水を得た魚のようになるタイプかもしれない。


「……がんばります」

「よろしい」


 リーゼはふんと鼻を鳴らして、部屋に入っていった。扉が閉まる直前、小さく聞こえた。


「……おやすみ」


 ほとんど息みたいに小さな声だった。聞き間違いじゃなければ。


「おやすみ、リーゼ」


 返事をした時にはもう扉は閉まっていたけれど、俺の声は届いただろうか。

 ──届いてたらいいな、と思った。


 そのあと、アルたんが食堂で俺を呼び止めた。


「飯、一緒に食わないか。昼、食いっぱぐれただろ」


 確かに。遺跡の中でまともな食事をしていない。空腹で倒れなかったのは魔力消耗で感覚が麻痺していたからだ。腹が鳴った。盛大に。


「……食べます」


 食堂のテーブルで向かい合って、パンとシチューを食べた。疲れた体に温かい食べ物が沁みる。スプーンを口に運ぶたびに、全身に力が戻っていくようだった。

 アルたんは黙々と食べている。会話はあまりなかったけれど、不思議と居心地が良かった。昔、村にいた頃に二人で川辺で弁当を食べたことを思い出す。あの時のアルたんは、まだ「エミっち」と言ってくれていて、世界は単純で温かかった。


「なあ、エミ」

「うん?」

「きみは……その力を、いつ頃から持っていたんだ?」


 核心に近い質問だった。慎重に答える。


「最近だよ。本当に、ついこの間まで、なんの力もなかった」

「そうか」


 アルたんはそれ以上聞かなかった。詮索しない。それがこいつの良いところだ。


「……なんの力もないまま、必死で生きてきた人のことを、俺は知ってる」


 アルたんが、シチューの皿を見つめながら、誰に言うでもなく呟いた。


「そいつは、レベルが上がっても村人のままでスキルもなくて、それでも毎日笑って、仲間のために飯を作って、誰にも文句を言わなかった。俺は──そいつを追い出した」


 心臓が、跳ねた。


「どうして……急にそんな話を?」

「わからない。きみを見てたら、なんとなく思い出した。……なんでだろうな、性別も何もかも違うのに」


 アルたんの目が俺を見た。読むことのできない、複雑な感情が揺れている。

 その目から逃げるように、俺はシチューを掻き込んだ。


「ご、ごちそうさま。おやすみ、アルフレッドさん」

「あぁ。おやすみ」


 逃げるように部屋に戻って、ベッドに倒れ込んだ。

 心臓がまだ煩い。アルたんの言葉が頭の中でぐるぐる回っている。

 似てると言われた。それは──気付きかけているということなのか。いや、さすがにこの姿と元の俺を結びつけるのは無理だろう。冴えない無能な男と、とんでもない魔力を持った金髪の巨乳美女とじゃな。ただ──アルたんは、あの幼なじみのことを思い出している。追い払った、無力な村人のことを。

 後悔、してるのかな。

 いや、そんなことはないか。


 ……考えるのはやめよう。今日は色々ありすぎた。

 目を閉じて、体中の疲労に身を委ねる。寝返りを打つと、この体の長い金髪が枕に広がった。まだ馴れない。たぶん一生馴れない。

 けれど、今日だけは。


 悪くない一日だったと、素直に思えた。

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