強化合宿と小さな闇【6】
「ひとまず、個々人で練習していて。悪そうな点があれば私たちが指摘していくから」
そう言われて、別々に別れて練習をし始める参加者達。基本的に全員が魔術師なので、もう既に魔法を使って魔物の討伐をしていたりするらしい。中でもニューエラという名の参加者の魔法は素人の僕から見ても凄いものだった。そしてそれは指導者の3人の目にも「素晴らしいもの」だと写っらしい。
合宿場の一角を爆発で包んだ。熱気がこちらにも伝わってくる。周りの参加者が目を丸くしている中で、魔法を使った本人は満足していない様子だった。
今回の合宿では、実力がある冒険者だけれども格上の指導者からアドバイスを貰えるということで参加している人も少なくないという。
「これは驚いた。これほどまでの力を持った参加者がいるとはな。ここは系統が似ている私が受け持とう」
ニューエラさんはギーオルドさんに気に入られたらしく、付きっきりで教えるようだ。ここでは危ないからという理由でこの場から離れていった。
参加者から学べることもあると思っていたので、見れなくなるのは少々もったいない気持ちになる。そんな気になっているのは自分だけらしく、他の参加者はみんなもう自分の練習をし始めている。
周りに氷魔法を使っている人はおらず、別の魔法を見て参考にする程度だった。
1人だけ違う魔法を使うというのが少し恥ずかしかったので、《魔力精製》だけ行って、多くの魔力精製をしても倒れないような体を作ろうとした。
背負っていたカバンを広場の端に置いて、ランニングを始める。1人だけ違う魔法を使うのは恥ずかしかったが、参加者全員が魔法を使っている中でランニングをするのも恥ずかしいものだった。
広場と建物の周りを大きく20周してからランニングを終え、汗を拭う。それからカバンの中から本を探す。
「あ、置いてきたかな……?よかった。あった、あった」
母から貰った魔法の本を一冊、読破していく。もはやルーティーンなので、何を言われようとこれは辞めないようにしたい。内容は覚えているので、目を通す程度だが20〜30分ほどで読み終える。
いよいよ魔法の練習。まだ病み上がりなので、魔法詠唱を忘れない。右腕を前に突き出して、
《魔力精…
「ちょっといいかな?」
誰かに急に話しかけられて、集中が途切れてしまった。こんなことで魔法を中断してしまうとは……本番だったら殺されていたな。まだまだ練習が足りない。
深く息を吐いて右腕を前に突き出す。
「指導者を無視するとは、いい度胸だね!そんな子にはこちょこちょの刑だ!」
僕のがら空きだった右の脇をくすぐってくる。気にしたらだめ。ゆっくりとじっくりと、魔力を貯めていく。もっと早く貯めることができるようになればいいんだけどな。
氷槍を撃てる程度の魔力を精製したら、魔力精製を止めて魔法を使わずに魔力を散らす。ひとまずこれを30回したらちょうど昼食の時間だろう。いつも通り無詠唱でできるまで、とはいかないかもしれないが、それに近い位の速さで魔法陣を展開できるようにしたい。アドバイスを貰うのはそれからだ。
そんなことより……
「くすぐったいです。魔法の練習中なので、申し訳ないのですが悪戯はやめて頂きたいのですが……」
右脇にある手を左手で掴んで相手の手を話す。丁寧に断りを入れようと顔を見た時に目を見開いた。
「フラフスさん……?!」
「そうだぞ!君が無視をした指導者のフラフスさんだ!ちょっと話がある。ここでは話せないから建物の中の部屋にに移動するぞ。拒否権はないからな!」
叱られるのか。冒険者でもないくせに、魔法を使えないから怒っているのか……それにランニングしたりとか本を読んだりとかしていた……関係ないことをしていたと思われたか……
「ルーティーンというものがありまして……あ、あと!まだ力がしっかり発揮できていないだけというか、病み上がりだからゆっくりと調子を戻していきたいというか……」
叱られて、合宿をやめろなんて言われたら、どんな顔をしてシアさんたちの元に帰ればいいのか……頑張って否定してみたが……
「ダメなものはダメだ。ついてこい!」
どうやら何を言ってもお話があるようだな……
広場の端に置いていたカバンを持ってきて、フラフスさんの後ろについて行った。




