強化合宿と小さな闇【7】
フラフスさんに呼ばれて、部屋に押し込まれた。
「ゆっくりしておくと良い。お茶でも持ってくるからこの部屋から出るなよ?」
結構はっちゃけているように見えて、クリナさんと同じ感じかと思いきや、扉の閉め方はバタン!とはいかず、ゆっくり音が出ないように閉めていた。意外と繊細な方なのかもしれない。
「しかし、ここはなんだか落ち着かないですね……」
部屋の壁に色々な魔法陣が刻み込まれていた。
「3面の壁と天井、あと……」
高級そうな絨毯をめくるともうひとつの魔法陣があった。
「合計で5個の魔法陣か。ちょっとだけ調べてみてもいいですよね……?」
ソファにカバンを置いて、入口から見て左手の壁に刻まれているものの解読を始める。なぜこれからかと言うと、これとあと天井の魔法陣はなんとなくだが今すぐにでも読めそうな気がした。
「基礎が氷槍に似ている。ということは攻撃技であるということが分かるな……ひとまず書き写すか」
メモ用に持ってきた紙とペンでスラスラと書き写す。「あそこがこうで、あそこがああで……」最後にその魔法陣の隣に氷槍の魔法陣を書いて見比べる。長考していたら、後ろから声が聞こえた。
「ゆっくりしておくと良いとは言ったけど、まさか床に座り込んで休んでいるとは思わなかったよ。まあ、別に気にしてないからいいんだけどね!」
フラフスさんが急に覗き込んでいた。反射で謝ったが、「いいんだよ。魔術師って言うのは1に研究2に研究3、4も研究、ずっと研究って言うしね」と言っていた。少なくとも自分は聞いたことがない。
「ひとまず、ソファに座りなよ。そんな硬いところに座っておいたら尻が痛くなるじゃないか。あと、勉強するのはいい事だが、寝っ転がって勉強するのもよろしくないと思うぞ!」
ひと通り突っ込まれてソファに座る。家でなにか気になったことがあればその場で本を開いている癖があったせいで、床でそのままメモとにらめっこしていた。ソファに腰をかけたら、対面にフラフスさんが腰をかける。そうすると、紅茶とお菓子を出してくれた。全て手作りらしい。手をつけようかつけまいかと悩んでいたが、「食いたければ食えばいいのだよ。君は遠慮が過ぎているんだ。もっと堂々としたまえ!」と言われた。結局今はお菓子に手をつけることが出来なかったのだが……
メモとにらめっこしていても何も始まらないということがわかったので、もっと時間がある時に調べてみることにした。
「大丈夫なのか?時間はまだまだあるぞ?」
「はい。フラフスさんを待たせるのはよろしくないと思うので。あれは後からでも調べれますしね」
「そうか。それならこちらも早く話が始められてとてもありがたい!それではズバリ言うぞ」
そういえば、ここに連れてこられた理由を聞いていなかった。魔術師にそぐわないことをしていたから合宿を辞めさせられるというのが予想の第一候補。他はあまり考えられない。フラフスさんが変に間を使ってくるものだから、やけに緊張する。そして、いきなりその時がきた。
「ズバリ!あなたがあの堅物ガールドに一目置かれた存在なのか?!」
「え?」
予想と違うズバリ!に疑問が浮かび、気力のない言葉がこぼれ落ちてしまう。だけれどもフラフスさんはやっと言えたというような表情であり、回答を待っているようで、目を見開いている。
「違いますよ。確かにコメルの店でこの合宿に誘われましたけども、そんな一目置かれただなんてそんなわけないじゃないですか。ニューエラさんとか、そういう人が一目置かれているんじゃないんですか?」
「いや、絶対にない。それだけはない。あの堅物は完成している、もしくはされかけている人物を嫌うのだ。可能性がないってな。魔術師でランニングや読書と堅物が好きそうな人材だな」
「そ、そうですか……」
ひとまず、合宿を辞めさせられるということは無さそうだ。
「質問いいですか?」
「おお!なんだ?なんでも言ってみよ!」
「僕に魔法の素質ってあるのでしょうか?」
フラフスさんが頭に?マークを浮かべた。
「元々体が弱かったですし、魔法の習得にも時間がかかっていました。もっと言うと、走る方が楽な気もしています」
「その、魔法とやらがまず分からん。古代の魔法使いが使っていた術であるということだけは確かだがな。今やそんなもの、無いに等しいからな。まあ、素質があるかどうかの疑問については、今から私が君の魔術師の素質を測ってやろうではないか!おおっと、名前を聞いてなかったな」
「セネ=デルフィです。よろしくお願いします」
「その礼儀の良さ、勉強熱心なところ、あと少しばかりおかしな言動をするところ。気に入ったぞ!では、外に移動しようか。いきなり連れてきて悪かったな」
フラフスさんの話の中でわかったギルド長ガールドさんが一目置く存在が、いるということが分かった。
そして、近い未来にその存在が力を見せるとか、見せないとか……




