後編
最終話。
そこから、私はちぎっては投げ、ちぎっては投げ、という勢いで人を倒していった。
だいたい次のような手順を実行した。
1.教室に突撃。
2.マシンガンを乱射
3.マシンガンで倒しきれなかった分をアサルトライフルなどを使い、倒す。
4.撤退。
ええ、本当にあっけなかったですよ。けれど、皆んな校内に分布しているものですから、時間もかかりました。(紫藤舞花談)
お巫山戯は置いておいて、これが最後の教室だ。
ここと生徒会室以外に生徒がいないのは舞央に確認済みだ。
いちいち撃つのも面倒になってきたし、ここは先程、弾丸を補給するついでに取って来た、新兵器を使用してみようじゃないか。
私は教室の扉を開けて、それのピンを口で引き抜く。そして、扉を開けるのと同時にそれを教室内に投げ、扉を閉める。
ドオォン
破裂音がして、部屋がピンク色塗れになった。そう、私が先程使ったのは、手榴弾的なモノなのだ。
一応、ちゃんと使えることも分かったし、カチコミに行きますか。
***
特に何の罠もなく、安全な道中を行き、私は生徒会室の扉の前にきた。
「たーのもーーー」
私は気の抜けた声と一緒に生徒会室の扉を足で開ける。私が現れると、全員こちらを振り向き、戦闘態勢に入る。
全員、ヒロインを真ん中にし、姫を守る騎士のように立つ。
だが、そんな事も御構い無しに、私はヒロインに向かってペイント弾を放つ。
パン
乾いた音がして、ペイント弾がヒロインに命中する。
はい、失格。体育館へお行き。
他の5人は呆気にとられたが、瞬時に持ち直し、私を憎しみがこもった視線で見つめた。
別に、ヒロインちゃんを狙い撃つのはなんら、難しいことでもなかった。だって、全員がヒロインを囲うように立つ前に私は撃ったんだもの。
誰かが、ヒロインちゃんを庇って撃たれるかと思ったけど、私の方が早かったみたいだね。
「な、何で!こんなイベント、ゲームには無かったわよ!誰よ、あんた!」
ヒロインが私に向かっていう。やっぱり、転生者だよね。この人。
私は、誰か。ご希望にお答えして、見せて差し上げましょう。
私は目深に被っていたフードをとり、カツラもとる。そして、最後に牛乳瓶の底のような分厚い眼鏡を取った。
「紫藤、舞花……」
誰がそういったのか、分からないが、この場にいる全員は私が紫藤舞花だと、分かっただろう。
「ご名答。」
私はそういって、口に弧を描く。誰も何も言わず、しばらくの間、静寂が訪れた。
その静寂を破ったのは、もちろん、ヒロインちゃんである。
「な、何で、あんたがここに居るのよ!」
「何でって、私がサバゲーで生き残って、貴方達ーー生徒会メンバーを倒しに来ただけだけど?」
私が返答しても、ヒロインはギャーギャー喚くのをやめない。鬱陶しい。
失格になったんだし、和葉か、舞央に回収を頼もう。
「あ、もしもし?和葉?」
私が通話を繋いだのは和葉だ。舞央はヒロインちゃんを嫌悪、嫌悪以上の悪感情を抱いているので、2人っきりにしておいたら、ヒロインちゃんの身の安全は保証できない。
なので、舞央と比べて、比較的穏健で、ヒロインちゃんを捕獲できる和葉に頼むことにした。
『舞花様?』
和葉が返事をした。
「あーうん。ヒロインちゃんを失格にしたから、回収に来てくれない?」
『何で、私が……確かに舞央に頼むとその子がこの世にいられるか怪しいものね。じゃあ、向かうね。』
そこで、通話が切れた。
少しすると、ノック音が聞こえた。和葉が来たようだ。
「あ、和葉。」
私がそういうと、和葉は微笑む。
「アレを回収すればいいんですよね?」
和葉はそう言いながら、ヒロインちゃんを指差す。
「うん、ソレ。」
「ちなみに、どの程度まで許されますか?」
この場合の許される、とはどのくらいまで制裁を加えていいかということだろう。
さっき、私は『舞央と比べて、比較的穏健』ってだけで、普通の人と比べたら十分に過激の部類に入るだろう。それは、私が関わる時だけだけど。
「そうね。身体的な傷はアウト。少しの心的外傷や精神的外傷ぐらいならいいと思う。」
それぐらいがいいだろう。この場合の『少し』も普通の人に取っては少しではないかもしれないが、そこは些細なことである。
「了解です。舞花様。」
和葉はヒロインちゃんの襟首を掴み、連行していった。
まあ、これで邪魔者はいなくなった。
「改めまして、御機嫌よう。生徒会の皆様。紫藤舞花ですわ。」
私はスカートの裾を掴み、腰を少し落として、お辞儀をする。
「この行事を開催したのはお前か。」
低く、怒りの籠った声で私の婚約者様がいった。
「ええ。けれど、ちゃんと会長の許可も頂きました。この通り。」
私は会長がサインした紙の複製を渡す。彼はその紙を読むと、表情が険しくなり、紙に皺ができた。
大丈夫、大丈夫。それ、複製だし。
それに、データのコピーは私の世界最強といっても過言ではないプログラムが管理している。多分、国家のセキュリティより厳重だと思う。
「御理解いただけたでしょうか?」
私が問いかけると、苦渋の表情の婚約者様が
「ああ、分かった。」
と言った。心当たりがあったのかもしれないね。
すると、
ダアァン
という一発の銃声が響いた。
私はそれを避けたので、私の後ろの壁には緑色のペイントがついている。
プチ
私の中で、何かが切れた気がした。
「………油断させて、倒そうとは、いい度胸だな。」
自分で聞いて、驚くほど低い声が出た。それに、御嬢様言葉が取れている。素が出ているが、もういい。
生徒会の面々は銃を構えて、戦闘態勢になっている。
「『WAR✕WAR』世界ランキング2位のBLOODMOON、3位のDAIKI10、AURUM−LEONIS、TURQUOISE0517、#MALLOWS。」
私は全員の『WAR✕WAR』でのプレーヤー名を上げた。
不思議なことに『WAR✕WAR』の世界ランキング上位はこの学園の、それも乙女ゲームの攻略対象ばかりだったのだ。
全員、知られているとは思わなかったようで、驚愕している。
「世界ランキング2位以下のあんたらが、1位の、FUJI、私に勝てると思ってんの?」
私はそう言いながら、彼らを嘲笑う。
ジャキ
銃を構える音が室内に響く。
パンパンパンパンパン
私は5発、サブマシンガンで撃ち、その全てが命中した。
「はい、お終い。」
私はそう言いながら、銃を腰のあたりにかける。
本当に、呆気なかった。これは、彼らが弱いのではない。私が強すぎるのだ。
『WAR✕WAR』だったら、ある程度は調節されるが、現実ではそうもいかない。
「まず、全員正座して。」
私がそういうと、生徒会メンバーは無言で正座する。今更、喚いても何もないのだ。もう私が、サバイバルゲームの勝者であることは明白だし。
さてと、己の罪を悔い改めて貰おう。
どちらかといえば、私は罪人は殺して、終わり、ではなく、心を入れ替えて、今後の人生を生きてもらいたいのだ。
「まず、全員とも。私用に使った、生徒会の予算はいくらか分かる?」
全員、首を傾げている。やっぱり、金銭感覚がずれているのだろう。
「それは、後で伝えるとして、貴方達がやったことは横領と同じ。本来なら、充分罪に問われるもの。けれど、私は黙っておいてあげましょう。」
私がそういうと、罪、と言われて表情が重くなっていたメンバーは少しだけ希望を感じたかのように顔を明るくした。
「だけど、交換条件があります。」
何の見返りもなく、私がそんなことするわけ無かろう。
その見返りは、生徒会メンバーの御奉仕?いらない、そんなもの。
貢ぐこと?他人が稼いだお金をポンポン使うような真似はできない。働くのが、どれだけ大変か。それは前世でバイトをしていた時に学んだ。
こいつらは、それを知らない。
「自分の稼いだお金で、使い込んだ分の予算を補填しなさい。」
だから、これが、条件だ。
「親の稼いだお金は駄目。貯金から取ってくるのも駄目。今から、自分の使った分のお金を稼いで、予算にあてなさい。バイトでも何でもいいし、株とかもいいかもしれない。けれど、その資金も自分のお金から出しなさい。」
私はこいつらにお金を稼ぐ苦労を知ってほしいのだ。そうすれば、自分の生活を見直すようになるはずだし、親の苦労も分かる。
こいつらは甘やかされて育ち、世の中の全てを知らない。
だから、その一端でも知れば、きっと変わっていくと思う。
「そして、このお金は今年度が終わるまでに稼いでおきなさい。そうすれば、まだ、ごまかしはきく。自分で今日から稼ぐ、今年度の終わりまで。この2つのことを破れば、即座に事実を公表します。学校にも、貴方達の親にも。」
私は2本の指を突き出し、Vサインを作る。
これでも、かなり私は優しいと思う。まだ、黙っておいてあげるのだから。
「ちなみに、貴方達が実際に稼いだお金かどうかは直ぐに分かるわ。色々なツテがあるものでね。」
私は言いたいことだけを行って、生徒会室を後にし、体育館に向かう。
***
「舞央、和葉!」
私は2人の姿を見かけたので、手を振る。だけど、その隣にあの人がいた。
御察しの通り、ヒロインちゃんです。
うげ。
私は直ぐにその場を去ろうとするが、ヒロインちゃんに手を掴まれた。
「あの、私、藍塚さん達から舞花様の話を聞いて、心を入れ替えることにしました!」
はい?
突然、そう言われて、私の頭はパニック状態である。
何があった、私のいない間に。舞央と和葉は一体何をふきこんだんだ。
「それで、生徒会の方々への罰も聞きました。だから、私もお金を稼いで、生徒会に返します!」
ええ?ヒロインちゃんが心を入れ替えてくれたのは大変嬉しいのだが、2人がヒロインちゃんにどんな事をしたのかが気になる。
「舞花様、舞花お姉様と呼ばせていただいても宜しいでしょうか?」
「はい……」
私は言われるがままに返事をする。
「では、私、バイトにいってきます!舞花お姉様、また明日お会いしましょう!」
そういって、彼女は台風のように去っていった。
私は2人に訊く。
「どんな事を吹き込んだの?」
「「御嬢様の武勇伝を伝えただけでございます。」」
舞央と和葉はそういった。この2人が『舞花様』ではなく、『御嬢様』と呼ぶ時は、必ず、何かがある。
???
私は自分の武勇伝とは何かと、寝るまでずっと思案していた。
ーーーヒロイン、百合ルート突入。
そんな声が、瞼を閉じる直前に聞こえた気がした。
如何でしょうか?
このあと、後日談を投稿する予定です。




