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第91話

窮地だからこそ思い付いたことがあった。


普段持ち歩いている緊急コールが頭をよぎる。


これしかない。


私は浜口さんに気付かれないように非常用緊急コールボタンを押す。


このボタンは位置情報も送信される仕組みになっているので居場所もすぐに護衛に伝わる。


「早く返事をしろよ。」


「……例え無理矢理私を手に入れたところで、決してあなたに心までは渡しません。」


「それが答えか?」


「はい。」


「それは残念だよ。」



ドンドン。



ドアが叩かれる音がする。


「何だ!?どうしてここがわかった!?」


「開けなさい!!居るのは分かっているのよ!」


めぐり!!」


「くそ!なんでだ!何をした!!」


「……水無月みなづきを舐めないでもらいたいですね。」


「どういう……ことなんだ?」


護衛の人によって強制的にドアが開けられる。


かがりちゃん!!」


廻がすぐに私に駆け寄り浜口さんからかばうように前に立つ。


「動くな!」


護衛も二人ほどかけつけ、浜口さんを囲む。


「……くそっ。」


何も抵抗はしない。


「お譲様、こちらへ。」


護衛に守られながら廻と一緒に部屋を出る。


すぐに院長先生も駆け寄る。


「水無月お嬢様!大変なご無礼をお許しください!!」


「……この件はただでは終わらせません。覚えていてください。」


「大変申し訳ありません!どうか!どうかお許しを!」


土下座する院長。


「篝ちゃん、早くここを出ましょう!?」


珍しく取り乱している廻に手を引かれ、護衛の人と共に車へと向かう。


「あの、フユトさんが!」


「今は自分自身の身を案じてください!」


護衛も強引に私を引く。


「あなたは早坂の病室の前で見張りをしてちょうだい。ここは私とこの人で十分よ。指示があるまで病室前で待機しなさい。」


廻が一人の護衛に指示を出す。


私の従事は護衛の人よりも身分が高い。なので、従事の命令は絶対というルールがある。


「分かりました。」


一人が離脱してフユトさんの病室のほうへ向かう。


「ありがとう廻!」


「これでいいでしょう?早く避難するわよ。」


移動中、廻は電話を取り出し非常事態をお屋敷に報告していた。




■■■■■■■




車に到着すると、ドアはロックされ車の外で護衛の人が待機する。


しばらくして、もう一台の護衛車がお屋敷から駆けつけ、一緒に護衛しながら待機する。


大事おおごとになっちゃったわね。篝ちゃん、大丈夫?」


「うん。」


「何があったの?」


私はあの個室でのやり取りを説明した。


「……最低な野郎ね。」


「でも、このままだとフユトさんが心配で。」


「今後病室に護衛をつけてもらえば心配ないと思うけど?」


「……うん。」


遠くから聞こえるパトカーのサイレンの音。


それが次第に大きくなり、車の前に停車する。


廻がウィンドウを開け、警察官と話しをしている。



突然、スマートフォンに着信が入る。


お母様からだ。


「もしもし。」


「篝?大丈夫?報告は廻ちゃんからもらったわ。」


「はい。平気です。ご迷惑をおかけしました。」


「何もされてない?体は平気?」


「はい。平気です。」


「そう。それならよかったわ。今日はとりあえずもう帰って来なさい。」


「分かりました。」


「それじゃ、お屋敷で。」


「はい。」


通話終了をタップする。


廻も警察官とちょうど会話が終わったようだ。


「出してちょうだい。」


運転手に指示を出す廻。


「篝ちゃん、制服が乱れてるわ。」


さっき胸ぐらを掴まれたせいだろう。廻が丁寧に整える。


「何もされなかった?」


「うん。平気。」


「怖かったね。よく頑張ったわね、篝ちゃん。」


その一言で私の中の緊張の糸がふとほどける。


涙で廻がよく見えなくなる。


「おいで、ほら。」


廻が私を胸元に抱きしめ、やさしく頭を撫でる。


「もう大丈夫よ。」


「篝ちゃん、お屋敷に着くまでの間、泣いてもいいのよ?報告はしないから。」


「め……ぐり。」


「ん?」


「怖かった。怖かったよ。」


「うん。よく対処できたわね。もう大丈夫だから。」



その一言で私は我慢できず子供のように泣いた。



その間、ずっと廻は私の頭を撫でていてくれた。


廻の香りが、もう事態は収束したという安心感をくれる。



「ごめん……ごめんね廻。」


廻は何も言わない。


運転手が配慮してくれたのか、車内の窓がカーテンで塞がれる。


そして私は、今日だけで大勢の人に迷惑をかけてしまったと実感する。


「廻、また怒られちゃうね。」


「いいのよ。何も心配しないで。」


「でも。」


「私がちゃんと説明するから。何も心配いらないわ。」


「ありがとう廻。」


私はふと見てしまった。


廻の拳が強く握られていることを。


それを意味する理由は分からなかった。

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