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第77話

翌日、クラスルーム。


めぐり、どうやってモトキさんとお話ししよう?」


「私が一人でうまく声かけてこようか?かがりちゃんが行くと目立つわ。」


「分かった。お願いね。」


「任せてよ。」


廻がモトキさんの机に向かった。


廻の耳が少し赤いことを私は見逃していない。


あの二人は両想いなんだもんね。


今度こそ幸せになってほしいな。


しばらく成り行きを見守る。何か、話しに花が咲きました的な感じで二人はにこやかに会話を弾ませていた。


「……。」


水無月みなづきさん。」


「……。」


「あの、水無月さん。」


「え?」


二人を妬ましく見ていると、声をかけてきたクラスメイトの女の子。


「すいません。私、友枝ともえだと言います。いつも水無月グループにはお世話になっていますのでご挨拶をと思いまして。」


「……そうですか。ありがとうございます。」


つまらない。こういう話が一番つまらない。


溜息をつきそうになるのを堪える。


「……。」


私の冷めた反応に困惑したのか、友枝さんも声をかけづらいようだ。


「ほかに用事がなければ外していただけませんか?従事を監視している最中ですので。」


「は、はい!失礼しました!」


焦った感じで逃げるように去る友枝さん。


二人はまだ楽しそうに話していた。


むむむむむ。


いつまで話してるのよ。


……。


廻が戻って来たのはそれから10分も後の事だった。


「篝ちゃん、昼休みに図書室に行くわよ。」


「……。」


「篝ちゃん?」


「お嬢様って呼びなさいよ。」


「ご、ごめん。」


「お譲様、お昼の予定はこれでよろしいですか?」


「……そうね。いいわね。」



「なんか機嫌悪くない?」


「別に。」


「ほら。なに拗ねてるのよ?」


「拗ねていません。」


「拗ねてるって。」


「拗ねてないってば!!」


私は机を思いきり叩きながら立ち上がる。


「!!!」


周囲が困惑した目で私を見る。


「お譲様、申し訳ありません。みなさまにも、ご迷惑をおかけしました。どうかご容赦ください。」


静まり返ったクラスルームで廻がすかさずフォローをいれる。


廻のいつもの機転でクラスはいつもの空気を取り戻し、各々が会話に戻る。


「廻のバカ。」


「ど、どうしちゃったのよ。もう。」


さすがに廻も困惑していた。


別に嫉妬なんかしてないもん。


私だって、フユトさんが居ればあんな風に楽しく会話してたもん。


……。


「あの水無月さん。」


再び別の男子生徒が私の前に控えめに現れる。


私は廻にアイコンタクトを送る。


きっとつまらない話だろう。


すかさず廻が私の前に立つ。


「お嬢様に何か御用でしょうか?」


「え?いや、あの、自己紹介をしておこうと思って。」


「ではどうぞ。」


廻は私の前からどかない。


「いや、その、水無月さんにしたいんだけど。」


「ですから、聞こえるようにどうぞ。」


この人、どこかで見たことがある気がした。


どこで見たんだっけ?


思い出せない。


男子生徒は私に向かって手を差し出す。


「あの、よろしくの握手。」


「お譲様に触らないでください。」


廻がその手を払いのける。


「べ、別にいいじゃないか握手くらい!」


「許可できかねます。」


「お前従事のくせに生意気だな!俺は水無月さんに用事があるって言ってるだろ!ひっこめ!」


「……。」


廻はひるまない。まっすぐに男子生徒を睨み付ける。


「私の従事を見下すのですか?」


そろそろ私も不快になってきたので廻への助け舟を出す。


「いや、そんなつもりじゃないよ水無月さん!」


焦り始める男子生徒。


「ひとつだけ警告いたします。私の従事への暴言は私への暴言と同等の意味を持ちます。覚えておいてください。」


「ご、ごめんなさい!」


焦る男子生徒の視線の先を追う。


廻の太もも。


この人、さっきから不意に視線を下に向けるのは気まずくて目を逸らしているだけかと思ったけど、これで確信が持てた。


それに、今思い出したけどこの人って私の太ももが好きだって言ってきた人だ。


学園生活でこんなに早く知り合うとなると、完全に時間が戻って同じように進んでいるわけじゃないってこと?


ふと思考から離れ、男子生徒のほうを見ると既に居なくなっていた。


「大丈夫?廻。」


「はい。ありがとうございます。」


私はそっと廻の手を握る。


「お嬢様?」


「怖かったね。廻。ありがとう。」


そう、廻の手がわずかに震えていた。本当は怖かったんだ。


「ご配慮に感謝します。」


私は廻の太ももを軽くタッチする。


「!?」


「ずっと見てたわよ?さっきの人。」


「……はい。気付いておりました。」


あの人はきっと私の今後に何も影響は及ぼさないと思うけど、念のため警戒すべき人として見てみよう。


それから予鈴が鳴り、ホームルームを経て午前の授業が始まった。




■■■■■■




昼休み。


「お譲様、図書室へ向かいましょう?」


「ええ。」


モトキさんのほうを見ると私と目が合う。私は軽く一礼して先にクラスルームを出る。


「廻。」


「はい。」


廊下を歩きながら、ひとつの注意事項を思い出す。


「図書室に行くまでにひとつ注意してほしいことがあるわ。」


「なんでしょうか?」


「アイリという生徒に会わないように気を付けて。接触は許さないわ。」


「かしこまりました。」


ここでアイリさんと出会うとすべてが振りだしに戻ってしまうような予感がしていた。


周りを警戒しつつ図書室へ向かう。


結局、アイリさんには遭遇せずにたどり着くことができた。


図書室は誰もいない。


私たちは「個別精査室A」という個室に移動する。


ここは個人や団体で書物を参照し合いながら打合せをするような会議室のような個室になっている。


AからDまで4つ同じ部屋がある。


「へぇ。ここ、いいわね。」


私は天井を見上げる。


天井が夜空になっている。


「天体観測みたいなイメージね。」


廻も一緒に天井を見上げていた。


コンコン。


しばらくしてノックの音。


廻が覗き穴から外の来訪者を見る。


相馬そうま君よ。」


「モトキ君でしょ?」


「う、うるさいわよ!」


焦った感じの廻。可愛い。


「し、失礼します。」


ちょっと緊張した面持ちで入って来たモトキさん。


「はじめまして。水無月篝みなづきかがりと申します。」


「従事の相坂廻あいさかめぐりです。」


「あ、相馬元基そうまもときです。」


「私の事は篝とお呼びください。」


「え?う、うん、それじゃ篝ちゃんって呼ぶね。」


「それで、聞きたいことって?」


「とりあえず、座りませんか?」


私は下座に座る。


「か、篝ちゃん!そこは俺が座るよ!」


焦った感じで席移動を促すモトキさん。


「いいえ。今回は私がお呼び出しした側。下座が常識です。お気にせずお座りください。」


「……ご、ごめんよ。」


恐縮しながら上座に座るモトキさん。


「時間もあまりありませんので単刀直入にお聞きします。」


「うん。」


「モトキさんは早坂冬登はやさかふゆとさんをご存じですか?」


「え?フユト?」


「はい。」


「知ってるもなにも、幼馴染みだ。」


この世界にフユトさんが存在している!?


「今、どこにいらっしゃいますか!?」


「……あいつは、中学に入ってすぐ事故にあって、それから意識不明のまま病院で眠ってる。」


「!!!」


どういう事?


「事故?」


「うん。詳しくは言えないけど、いつ目が覚めるのか分からないらしい。」


「よろしければ、その病院を教えていただけませんか?」


フユトさんに会えるかもしれない。


私は急ぐ気持ちを抑える。


早く、会いたい。


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