表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/96

第73話

かがりちゃん!篝ちゃん!」


めぐりの声がする。私の体を軽く揺すっている。


ゆっくりと目を開けると、そこは自分の部屋だった。


「廻?」


「何か久しぶりに廻って呼ばれたわね。まだ寝ぼけてるわね?」


「廻!!!」


私は嬉しくて廻に思いきり抱き付く。


廻だ。生きてる。またこうして話をしている。これは夢?それとも私、死んだの?


「ちょっと!何寝ぼけてるのよ!遅刻しちゃうわよ!」


「廻、ずっと私と一緒に居て。お願い。」


「何泣いてるのよ?怖い夢でも見た?ほら、入学式に間に合わなくなるわよ!」


「入学式?」


「そうよ!代表挨拶もするんでしょう?早く行ってリハーサルしないと!」


「……?」


時間が戻ってる?


私はカレンダーを見る。


確かに今日は入学式の日だった。


「篝ちゃん?」


「ううん。何でもない。」


時間が戻っている。どういうことだろう?


私は上着をめくり、自分のお腹を見る。


傷跡は無い。


やさしくお腹をさする。痛みもない。


「篝ちゃん?生理?」


「な、何でもない。大丈夫。着替えるから。」


「それじゃ、ダイニングで。」


「うん。」


廻が部屋を出て行く。


真新しい制服がハンガーにかけられている。


「フユトさんはどうなったの?」


私はスマートフォンを取り出し、アドレス帳を開く。


「あれ?」


フユトさんの名前が無い。


メッセージアプリの履歴も探すけど、フユトさんとのやり取りのデータが無い。


廻から来た未来メッセージは残っているか確認する。


「……ある。」


未来メッセージは存在していた。そしてアプリも残っている。


なぜフユトさんのデータが一切無いのか?


時間が戻ったのは事実。でも、すべてが戻ったわけではない?


私はいろいろと考えながら制服に着替え、部屋を出る。



「おはようございます。」


「おはよう篝。よく眠れた?」


「はい。お母様。」


朝食の場。お父様は居ない。すでに外出している時間だ。


「今日は代表挨拶、がんばりなさいね。」


「はい。」


時間が戻っていても、以前とやり取りは違う。


まったく同じ時間を進んでいるわけではないらしい。


「篝?」


「いえ、すみません。考え事をしていました。」


「そう。急がないと時間がないわよ?」


「はい。」


それから送迎の車で学園へと向かう。



■■■■■■



「水無月さま、こちらです。」


学園の理事長さんが出迎えてくれた。


「本日の代表挨拶、楽しみにしております。」


「あまり期待されてしまいますと、緊張して失敗してしまいそうです。」


社交辞令のような会話を続ける。


正直これが苦痛で仕方ない。


「またまたご謙遜を。」


お互い軽く笑いあう。廻は一歩後ろのほうで私とのやり取りに感情をあらわにはしない。


私はふと思いついたことがあったので理事長さんに質問してみる。


「あの、この学園の新入生に早坂冬登はやさかふゆとさんっていらっしゃいますよね?」


「早坂……冬登?今調べてみます。」


理事長は電子タブレットを取り出し、データ参照を始める。


「いえ。そのような生徒はおりませんが?」


「え!?」


「そんなはずはありません!居るはずです!」


「ですが、データが出てきません。」


「……どういうことなの?」


「お譲さま?いかがいたしましたか?」


廻が見かねて声をかける。


「おかしいのです。確かに、早坂冬登さんという新入生がいるはずなんです。」


「仮にいるとして、その生徒がどうかしたのですか?」


廻が心配そうに私を見る。


「……いえ。なんでもありません。」


あまり深く話すといけない気がして、私はここで会話を切る。


「変な質問、お許しください。」


「いえ、滅相も無い!何かあればいつでもお問い合わせください!」


私は一礼して新入生控室Aへ移動する。


「篝ちゃん?どうしちゃったのよ?」


廻が小声で私に声をかける。


「なんでもない。ちょっと気になったから。」


「それより廻、お願いがあるの。」


「どうしたの?」


「手を……繋いでいいかな?」


「え?」


驚いたまま固まる廻。


「変……かな?」


「篝ちゃん、本当に大丈夫?どうしたの?変な夢でも見た?」


「いや、そんなわけじゃないんだけど、廻が居なくならないか不安で。」


「……仕方ないわね。」


そっと手を繋いでくる廻。


「ありがとう。」


「本当に少しだけよ?みんなに見られるとあなたの威厳に関わるんだから。外では水無月としてしっかりしなきゃ。」


「うん。」


やっぱり廻は私の従事として、いや、それ以上に理解してくれている存在だから、すごく心地がいい。


あおいさんなんて、全然ダメ。



ズキッ。



「葵さん」という想像をした瞬間、激しい頭痛。


「痛っ。」


私は思わず頭を押さえてしまう。


「どうしたの?」


「ちょっと頭痛が。」


「大丈夫?お薬あるわよ?」


「平気。様子を見るわ。」


「今日の篝ちゃんは本当におかしいわよ?体調とか悪くない?」


「うん。大丈夫。ありがとう。」


控室の前に着く。


新入生控室はAとBがある。


Aは女子。Bは男子という区分け。


「廻、控室Bを覗いてもいいかな?」


「ダメに決まってるでしょ。この学園は入学式が終わるまでは男女は交流しちゃだめなしきたりなのよ?」


「……そっか。」


フユトさんは居るだろうか?


時間が戻ったのだから、また今日の入学式後に出会うはず。


私はそんな期待をしながら控室へ入った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ