表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/96

第72話

かがりさん、落ち着いた?」


しばらくして、ユフトさんが優しく声をかけてくる。


「はい。」


私はゆっくりと離れ、まっすぐにフユトさんを見つめる。


「フユトさん、かなり悩みましたがひとつお話しがあります。」


「うん。」


私は深呼吸する。


「私は……フランチェスカさんから取引を持ち掛けられています。」


「取引?」


「はい。」


私はあの時の経緯を説明する。


「……そんなことがあったのか。」


「はい。」


「話してくれてありがとう。」


「それと、これからフランチェスカさんの喫茶店に行きます。」


すると突然、出入り口のドアが開かれる。


あおいさんが無表情のまま入ってくる。


「どうしたの?」


「話してしまったのですね。」


「え?」


葵さんの様子がおかしい。


「あれほどフランチェスカさまから「彼氏には言ってはいけない」と口止めされていたのに。」


「あなた……フランチェスカさんの仲間!?」


まさか……。


「篝さん、下がって!」


フユトさんが私の前に立つ。


「遅いですよ。もう相坂さまは救われません。篝さまは相坂さまよりもそこにいる男を選んだのです。」


「違う。」


違う。私はそんなつもりじゃない。


「何が違うんですか?あなたは話してしまったんですよ?」


「篝さん!耳を貸しちゃだめだ!」


「あなたたちは本当に困った人たちですねぇ。」


「誰だ!?」


廊下から声がして、もう一人女生徒が入ってくる。


「ア……アイリさん。」


なぜか恐怖心が沸き起こる。前に何かされたという覚えはないけど、本能が恐怖を感じていた。


「まったく困りましたねぇ。おしゃべりな女の子は男の子からモテませんよぉ?」


「アイリさん!君は一体!?」


フユトさんは依然私の前に立ち、危害が加わらないように盾になっていた。


水無月みなづきを消すことができないなら、乗っ取ればいい。それが私たちの作戦です。」


「あらぁ?ダメよアオイ。そんなにあっさり敵に目的を教えたら今後やりにくくなっちゃうでしょぉ?」


「構わないわ。どうせここでこの二人は消えるんだから。」


夢でも見ているんじゃないかと思うくらい非日常な出来事に、頭がうまく回らない。


これって現実なの?


めぐり……。教えてよ。


「!」


アイリさんが突然私たちに向かって走ってくる。


「篝さん、下がって!!!」


私の事を後ろに押し付けて、フユトさんはアイリさんのほうへ向かっていく。


私は後ろに弾かれて床に転ぶ。


「フユトさん!!」


アイリさんと抱き合う形になったフユトさん。両者とも動かない。


「フユト……さん?」


私の視界をスローモーションのように横に倒れるユフトさん。


「フユトさん!!!」


私は急いで駆け寄る。


「!!」


フユトさんの制服は赤く染まっていた。


「嘘!?しっかりして!フユトさん!!」


「か、篝……さん、に、逃げて。」


「いやっ!」


「次は彼女の番だよぉ?覚悟はできたぁ?」


ドクン。


とても冷たく鋭い目で私を見る。


恐怖で体が動かない。


私……ここで終わるの?


廻。


私とフユトさんはここで終わっちゃうの?


これ、現実なの?



アイリさんが私に向かって走ってくる。


「!」


ドンッ。


体当たりされた激しい衝撃が体を襲う。でも、後ろには倒れない。アイリさんが倒れないように私を支えているからだ。


お腹が急に熱くなり、激しい耳鳴りと共に床に倒れる。


見えるのは天井と痛み。


「あはははは!」


笑い声がクラスルームに響き渡る。


痛い。


お腹が痛い。


すぐそばに倒れているフユトさんの側に、がんばって向かう。


どうにかフユトさんの手を握る。


反応がない。


心なしか少し手が冷たい。


「フ……ユト……さん?」


反応がない。


私の反対を向いたまま倒れているので顔が見えない。


「う……そ。」


私は涙が流れる。


それと同時に耳鳴りが落ち着き出し、急激な眠気が襲ってくる。


「め…ぐ……り。」


助けて廻。


もう目は見えない。暗闇が私の視界を覆う。



そんな中、廻の懐かしい気配だけを感じる。


「篝ちゃん。」


え?廻?


「篝ちゃん。」


私、どうなったの?


え?


目は見えないけど、右手に何かが乗せられる感触がする。


「願って篝ちゃん。」


何を?


「願うのよ篝ちゃん。あなたが、取り戻したい瞬間を。」


取り戻したい、瞬間?


「あなたが望む時間を、祈るのよ。時間が無い。」


廻、一体何を?


「信じてる。」


それから何も聞こえなくなった。


寒い。


寒さと眠気。


右手の感覚も消えかける。


願うとはなんだろう?



望む時間?



私は、入学式の代表挨拶で登壇している時間を思い出す。


あの時は、こんな事態になるなんて予想すらしてなかったな。


この学園に入って、クラス委員長になったり、フユトさんと出会って。


恋をして。


廻を失って。


こんな非現実な出来事に巻き込まれて。


まだ一カ月目なのに、すごい経験をしたな私。


ああ。


入学式の日が懐かしく感じる。


代表挨拶、すごく緊張したな。


懐かしい。


そんなことを思い出しながら、これは走馬灯なのかなと自虐しながら意識は完全に途切れた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ