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第70話

【視点変更:水無月篝みなづきかがり


「分かった。またクラスルームで。」


フユトさんが屋上を出て行く。


私は再びベンチに腰かけて空を見上げる。


めぐり……会いたいよ。」


フユトさんと居ると幸せな気持ちになれる。でも、完全には満たされない。


この気持ちは、きっと廻がそばに居てくれたら解決すると確信していた。


私は時計を見る。


そろそろ葵さんが呼びに来そうな時間だ。


そう思っていると屋上の扉が開かれる。


「篝さま、そろそろお時間です。」


「分かってるわ。」


「さっきの方とはどういう内容だったのですか?」


「何よ?あなたに関係あるの?」


「……従事ですから、内容を把握して必要なら対処も検討しようかと思いまして。」


「堅苦しいわね、あなた。」


私はどうしても葵さんが好きになれない。


むしろ、私はどんどん彼女の事が嫌いになってきていた。


私が一番嫌いな「事務的」な接し方だからだ。


「申し訳ありません。」


感情が一切読めない、機械のような返答をする。


「ですが篝さま。」


「何?」


「一般の男性に好意を向けるのはおやめになったほうがいいのではないですか?品格を問われかねません。」


「品格?」


「はい。」


「例えば、あの方の事が好きという感情。」


「……。」


冷静になれ、冷静になれ私と自分に言いつける。


「まさか、さっきの方に恋心を抱いていませんよね?」


「抱いていたらどうだっていうのよ?」


「止めるように言いつけられています。」


「え?誰に?」


秋伸あきのぶさまです。」


「嘘!お父様がそんなことを言うわけがないわ!」


「私は言いつけに従う。それまでです。それ以上の理由はありません。」


お父様が私の知らないところでそんな指示を?


そんなわけない。お父様は、私たちの関係に反対はしていなかったはずだ。


「篝さま?」


何かを読み取ろうとする瞳。それを見ていると不快感が増してくる。


「何よ?」


「お時間が迫っています。」


「……分かったわ。」


私は葵さんを横切り屋上を出る。


そして出入り口で止まり、葵さんに背を向けたままつぶやく。


「廻のほうがやっぱりいいわ。」


後ろからは何も声が無い。でも、確かに後ろにはいる。


そのまま歩き出し、階段を降りる時にようやく葵さんが声を発する。


「私は相坂あいさかさまのように器用ではありませんので。」



私、嫌な子。



■■■■■




さっぱり頭に内容が残らないまま放課後を迎えた。


「篝さま、この後はどうなさいますか?」


葵さんが真っ先にやってくる。


こうなるとフユトさんと上手く会話できない。


「篝さん、また明日。」


フユトさんが去り際に葵さんに見つからないように軽く背中をポンポンと叩いてくれた。


「篝ちゃん、また明日ね!」


モトキさんもフユトさんの横を並んでいた。


「はい、また明日。」


私は一礼して居なくなるのを待つ。


「葵さん。」


「なんでしょうか?」


「喫茶店に行くわ。」


「お車を手配します。」


「歩くわ。」


「だめです。」


「……。」


本当に堅苦しい人だ。溜息が出そうになる。


「好きにしなさい。」


ここで言いあっても気分を害するだけなので素直に葵さんのやりたいようにやらせる。


私はフランチェスカさんの取引に応じて廻を取り戻したいと強く思うようになっていた。


やはり葵さんではだめだ。


相性が悪いというか、やっぱり常にそばに居る人はこんな昨日今日知り合ったような人ではいけない。


そう思う私はわがままだろうか?


いや、私の中で廻以外有り得ない。


「篝さま、あと20分程度でお迎えが来ます。それまではここに居ましょう。」


「分かったわ。」


自分の席に腰かける。


フユトさん。私はやっぱり廻を救いたいです。


自分自身の自由を失っても、どうしても側に居てほしい人なんです。


確信はありませんが、そのあとのことはフユトさんや廻がどうにかしてくれるんじゃないかって勝手に思っているんです。


そう思うことは私のわがままなのでしょうか?


そんなことを心の中で問いかける。


「葵さん、悪いけどお迎えが来るまで教室の外で待っていてくれないかしら?私、今は一人になりたいの。クラスルームの中に居るだけならいいでしょ?」


「分かりました。何かあればお呼びください。」


葵さんは素直に廊下に出て行った。


放課後で生徒の数も減ってきたのでそこまで警戒する必要はないと判断したのだろうか?


私はスマートフォンを取り出し、ボイスレコーダーのアプリを起動する。


30分後に自動的に録音が開始される予約をする。


フランチェスカさんとの会話を記録する為だ。


もし、私に何かあればきっとこの録音はフユトさんに渡ると信じて。


あと何か準備しておくことはないか頭を巡らせる。


フランチェスカさんとの取引。廻の事もあって、とても危険な接触であることは間違いない。


私の自由を手に入れて何をするのかも分からない。


権力?


そんな二文字が頭をよぎる。


私はもう一度あの時間をやり直したい。


廻を救いたい。


ブーブー。


「?」


スマートフォンにメッセージが入る。


「廻!?」


メールには「相坂廻あいさかめぐりさんから未来メッセージが届いています。今すぐアプリをインストールして開封しよう!」とあった。


未来メッセージ?


少し聞いたことがある。


このメッセージは時間指定ができる。普通はメッセージを送信すると瞬時に相手に届くけど、その時間を好きな未来の時間に設定できるというものだ。


私はアプリをインストールしてメッセージを開封する。


「秘密のパスワードを入力してください」と表示される。


「パスワード?」


なんだろう?パスワードは知らない。


すると、「パスワードが分からない場合はこちら」というアイコンがあったのでタップする。


「秘密のパスワードのヒント」という質問が表示される。



【あなたの名前は?】



試しに水無月篝と入力してみる。



【パスワードが認証されました】という表示と共に「篝ちゃんへ」というリンクが開く。



一体何が綴られているのだろう?それにいつの間にこんなメッセージを残したのだろう?


私は軽く深呼吸する。


廻の残したメッセージ。


それだけで涙が出そうになる。


私はゆっくりとリンクをタップした。



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