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第64話

あれから一週間が経った。


僕とモトキは普段の学園生活に戻っていた。


一週間、かがりさんは休んでいた。そしてモトキもあまり元気がない。


「来週から篝ちゃん、登校するって?」


「そうみたい。」


今は昼休み。いつものように屋上でモトキと昼食を食べていた。


「元気になってるといいな。」


「そうだね。」


モトキは恋人を亡くし、僕に気を使っているのが分かる。


「モトキ。」


「なんだ?」


「相坂さんに、会いに行かないの?」


もちろん、お線香をあげに行くという意味だ。


「……悪い。まだ気持ちの整理がつかなくて。」


「そうか。」


「気持ちの整理ができたら、フユトも一緒に来てくれないか?」


「もちろん。」


「サンキュ。」


僕たちの間を爽やかな風が通り過ぎる。


桜はそろそろ散りそうだ。


「あれ?モトキ、そのスマホ。」


「ん?あ、これか?相坂のだ。実は生前に貰ったんだよ。カードだけ俺のやつと入れ替えて使ってる。」


「どうりで女の子っぽいデザインなんだな。」


「ああ。相坂って気が強かったけど、こういうのは女子力を全面に出してんのな。」


僕たちは笑いあう。


「篝ちゃんのスマホはどんなのか見たことあるか?」


「そういえば無いかも。」


「お前らしいな。」


今度見せてもらおう。


「スマホのデータって相坂さんの使っていたままなの?」


「データ?」


「うん。写真とかアプリとか。」


「わりぃ。俺、結構細かいものには疎いんだよ。」


「ほら、ここをタップするんだよ。」


モトキに説明しながらアルバムという写真の保存アプリを開く。


もしかしたら、このスマホを委ねたということは何か残っている可能性が高い。


「あ……。」


スマホから撮影され保存されたデータがたくさんあった。


「モトキ、これ、動画だ。」


「ほんとだ。」


さっそく再生してみる。


そこには、相坂さんと篝さんのやり取りが録画されていた。


『篝ちゃん、こっち向いて!』


『相坂ちゃん、勝手に撮らないでよ!』


『いいじゃないのよ!篝ちゃんは可愛いんだから』


そして、相坂さん視点のまま笑顔の篝さんに抱き付きながら笑いあうシーンが保存されていた。


時間にして30秒。


「……めぐり。」


モトキがつらそうな顔をして動画を何度も再生していた。


「モトキ。」


「わりぃ。もう泣かないって決めたのにな。」


「泣いてもいいと思う。僕はちょっと外すから、いろいろデータ、見て見なよ。」


「サンキュ。あとでお前にも見せるよ。」


「ああ。」


僕は邪魔しないように屋上を後にした。



■■■■■■



ここ一カ月くらいでものすごい非現実な日々を過ごしたせいか、僕はクラスルームに戻りあたりを見回す。


みんないつものように、いつもの友達と会話を弾ませている。


篝さんの机は誰もいない。


相坂さんが亡くなったことは学園での全体集会で伝えられた。


「ふう。」


溜息をつく。


相坂さん、「溜息はやめなさい」ってまた叱ってくれよ。


そんなことを思いながら僕はスマホを開く。


そういえば。


僕も動画を撮った。


僕は病室で撮った篝さんの動画を再生する。


僕と同じ布団で気持ちよさそうに眠る篝さん。ちょっと寝息も聞こえる。


それ以前に僕の心臓の音らしきものと呼吸が乱れている音もする。


……。


これ、見つかったらやばそうだな。


ん?


動画をよく見ると、篝さんの唇が微かに動いている。


何か言っている。


寝言?


僕は何度もそのシーンを再生して口の動きを読む。


「あ。」


「お。」


「い?」


あおい?


口を読むと、確かに「あおい」と言っている。あの時、声はでなかったから僕は気付かなかったんだ。


この寝言に。


「あおいってなんだ?」


うーん。分からない。


「誰かの名前?」


誰にでもなく声に出す。


それにしても可愛い。


今だからこそ実感するけど、こんな可愛い女の子が僕の彼女なんて幸せすぎじゃないか?



『篝ちゃんのこと、頼んだわよ。』



ふと相坂さんの一言を思い出す。


安心してよ相坂さん。僕は篝さんのそばに居る。何があっても。


しばらく考え事をしていると、予鈴が鳴りモトキもクラスルームへと戻って来た。


「堪能したか?」


僕はちょっとからかい気味に声をかける。


「ま、まぁな。」


顔の少し赤いモトキ。珍しい。


「結構動画とか写真がいっぱいあって、やばかった。」


「やばかったって?」



「か、可愛すぎて、やばかった。」


モトキはそれだけ言うと自分の席に戻った。



照れてやがる。


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