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第57話

ふと目を覚ます。


部屋は間接照明だけになっていて暗い。


時計を見ると深夜2時過ぎ。


酸素マスクはされていない。右手は握られたまま、かがりさんは車いすに座ったままベッドにうつぶせになるように眠っていた。


「篝さん。」


軽くゆする。このまま寝ていては風邪を引くかもしれないし体にも良くない。


「……ん。」


結構な時間眠っていたのか、ちょっと寝ぼけた顔をして目をこする篝さん。


「ここで寝ると風邪引くよ?」


「……はい。」


そういうと篝さんはそのまま僕のベッドにもぐりこんでくる。


「え!?」


僕の時間が止まる。


え?


ええええ!!!?


もぞもぞと完全にベッドに入り込んだ。


顔が……。



顔が目の前です。



鼓動がものすごく高まる。


篝さんは抱き枕のように僕をぎゅっと抱きしめる。


「うおっ!?」


動揺とともに腹部に軽い痛みが走る。


怪我の腹部がジンジンと痛む。


でも、なんか嬉しい痛みでもある。


「か、かかかか。」


篝さんと呼ぶことができないくらい動揺していた。


目は完全に覚めてしまったので、ずっと篝さんの寝顔を見つめる。


吐息がかかりそうでかからない絶妙な距離。


この状態を記録したい……。


僕は自分のスマホを探す。


「どこだ?」


テーブルの上に置いてある。通知ランプがゆっくりと点滅している。


ゆっくりと手を伸ばしてスマホのスリープを解除する。


モトキからメッセージが来ている。


『今日見舞いに来たけど、寝てたみたいだから明日また来る。無理するなよ。』


わざわざ来てもらったのに悪いな。


そして、さらに心臓がバクバクと大きく鼓動を打ち始める。


そう。


動画撮影ボタン……。


でも、これって盗撮か?でも、相手は自分の彼女だぞ……。


これは思い出の記録なのだ……。


ゆっくりと動画撮影ボタンを押す。


ピコっと電子音が鳴り録画開始の表示が出る。


か、篝さんの記録を……。



……。



可愛い。


僕は篝さんの寝顔を記録し始める。


可愛い。それしか出てこない。


1分くらい撮影して停止ボタンを押す。


「くひひひ。」


そんな笑いが出る。変態か僕は。


そっと頭を撫でてみる。


ふわっといい香りがする。


あれ?いつの間にお風呂に入ったんだろう?


「……ん。」


うわ!


胸元が少し開かれる。僕の視線の先にふたつの谷があらわになる。


いかんいかん。


そういうのはダメって前に言われたよな。紳士になれ僕。


そっと目を閉じる。


篝さんの体温を感じる。


好きな人の温もり。すごく尊い。


水無月みなづきという大きな壁を、僕は絶対乗り越えてずっと一緒にいたい。


そんな事を考えると次第に眠気がまたやってくる。


ドン。


「痛った!!!」


腹部に篝さんの腕が当たり激痛が走る。


「えっ!?」


大きな声を出したせいで、篝さんが急激な覚醒を見せる。


僕の顔を見て大きく目を見開いている。


「え?え?」


状況が理解できていない篝さんは、どんどん覚醒してきたのか顔がものすごく赤くなっていく。


「え?フ、フユト……さん!?」


「お、おはよう。」


「っ!」


篝さんもまだ体が痛いのか思うように体が動かないようで苦痛な表情を浮かべる。


「ま、待って篝さん!無理しないでそのままでいて!なにもしないから!」


「な、なぜこのような……状況に?」


「篝さんが寝ぼけて僕の布団に入って来たんだよ。大丈夫、何もしないから。このままで居て。」


「で、ですが!は、恥ずかしい…です。」


布団で顔を半分くらい隠す。


ものすごく可愛い。


「ご、ごめんなさい。」


「いや、べ、別に平気。」


よく分からない返事をしてしまう。


それにしてもお腹が痛い。


「もしかして、お腹、叩いてしまいましたか?」


「う、うん。でも大丈夫。」


「ごめんなさい。」


顔が赤いままの篝さん。


「寒くない?」


僕は話題を変える為にやさしく声をかける。


「……は、はい。温かいです。」



しばしの無言。


鼓動の音が聞こえる。


この音は僕なのか篝さんなのかは分からない。


僕たちはこのまま話をするわけでもなく、お互いの体温を感じていたのだった。

©2017,2018,2019 すたじお・こりす

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